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産後三ヵ月とシッターさんと

チャンスの女神には前髪しかない、といいます。

一瞬の好機が見えたらすぐにつかまなければ手遅れになるぞ、といういましめですが、そもそも前髪をつかむとか失礼すぎません?いくら女神でも気ぃ悪くするって。

そしてそんなチャンスの女神がいるならば、今の私はさしずめ逆チャンスとでもいいましょうか。


産後の抜け毛で順調にハゲてきました。前髪。



うわさに聞くほど抜け毛ないな。良かった〜、なんて思ってましたが3ヵ月頃からちゃんと抜け落ちてまいりました。特に前髪。
追い打ちのように赤子が引き抜いてくるのでフロント周りが不毛地帯。

それでも「やれやれシアーバングが流行中でよかったよねほんと」などと、思っていたほど悩まない自分がいるのにもびっくりで。

妊娠中は産後はすぐに筋トレして体型をもどすぞ、とか
忙しくても白髪はちゃんと染めるぞ、とか
夫に授乳の姿は見せないぞ、とか
それはそれは鼻息荒く思ってたものですが

全部どーーーーーーでもよくなりました。



自分のことは二の次三の次。
ボッサボサで授乳しながら夫に「ちょっとswitch取ってー」とか言ってる。
とにかく赤子優先の立派なおっかぁマインド育ってる。たしかに、ここに。

そうさいつだって息子ファースト
いろんな野菜で試したくなる

赤ちゃんの方もありがたいことに何事もなく3か月を迎えました。
ただ
「生まれ落ちたので、生きている」 
といった佇まいだった新生児時代とはうって変わり
目があえば笑い、ものを見失っては ”きょろきょろ” するなど、動きの端々にじわじわ人間らしさが出てきました。
好きなものは絵本「にこにこ」、クシャクシャすると音が出るおもちゃ。くまちゃん飛行機。




感情も豊かになり、笑顔に声がついてくるようになったのが本当に愛らしい。
うはっうははと歯のないお口で笑う無邪気な顔を見ると、想いがこみ上げてきます。
もっともっと笑ってほしい、この子がずっと笑顔でありますように……

っていうかウケたい。

ドッカンドッカンわが子にウケたい。


想いというより欲に近い。
食欲でも出世欲でもなく「子にめっちゃウケたい」という新ジャンルの欲望がわいてきました。


今日も産後の身体に鞭打って、子の上で腕立て何十回もしました。
顔をちかづけると爆笑してくれるから。
本当、子育てって体力勝負ですね。


さらに体力だけでなく知力も削られるのは計算外でした。

マミーブレインという言葉をご存じでしょうか。
産後の母親は脳が4~8%委縮し、判断力や記憶力が大幅に落ちるのです。

早い話がすごいアホになります。
自分でもびっくりするほど。
同じ話を何回も訊くし、すぐ忘れる。
やたらと忘れるので、やること全部を付箋に書いてそこら中に貼ってたら、生活圏が付箋だらけになりました。

メメントっていう映画がありまして。10分以上記憶を維持できなくなった男が覚えたことを失わぬよう身体に入れ墨を掘っていくお話なんですがね、そろそろあの域。

全身付箋まみれのその姿は高僧との熾烈な戦いの末、大量のお札で封印された化け物のようであったそうな…あるいはひっこみのつかなくなったラブライバーのようでもあったそうな…


いやはや。もろもろ甘く見ておりました。
産後スピード復帰する芸能人とかを見て「産んだ後ってすぐ元気になれるんだー」なんて勘違いしてしまいましたが、あれもうやめたほうがいい。
産後は6年くらい休んだほうがいい。


そんなわけで、心身に疲れがドッと出てきたのが3ヶ月目。
意を決してシッターさんをお願いすることにしてみました。

ベビーシッターなんてお金持ちのつかうものでしょ!?と思っておりましたが、産前産後の利用については自治体からけっこうな助成金がでるのです。


コロナ禍で需要が増えた分、良くないうわさも聞くベビーシッター業界…
初めてで不安もあったのですが、ラッキーなことにしょっぱなから良い方に巡り合えました。

息子のお世話はもちろんのこと情報もたくさん。

子供との遊び方、背中スイッチ対策、保活のすすめかた、小児科の情報…

まさに知の宝庫。
育児初見プレイの私に序盤のチュートリアル案内役のように何から何まで指南くれました。

特に保育園。恐ろしいですね。
年明けたら保育園に電話かけてみればいっか~などと考えていた自分の愚かさを思い知らされました。
申し込みは秋から始まるので、見学は夏からスタート。もうとっくに戦は始まっていたのです。
また保育園に入るのにも「自分こんなに大変なんです!」をアピールするランクとか点数とかがあって、保育園に入れるか入れないかはそれ次第なんだって!知らねぇ!

丸腰で激戦区に飛び込もうとしていた自分に震え上がりましたよね。

おっかぁじゃない自分に立ち戻れる時間、大切


また、それとなく産後の体も心配してくれて
「寝られてますか?疲れてないですか?」
などといたわってくれる中の一言。

「急に悲しくなることはないですか?」



役所や病院で何度となく聞かれては
いつも「産後うつっすかwないでーす」と即答していたはずの質問ですが、その時はなんでか

ふと、たまに悲しくなることがある自分も…いなくも…ないな。

と思いました。


疲れてるけどみんなそうだし、家事は夫がしてくれてる自分は恵まれてるし、知らない街でくらすのは心細いけど…日本だし。

人と比べちゃイージーモードだからと言い聞かせていたけれど、心身のキャパはひとそれぞれ。私も自分なりに気を張って生きていたようで。
そんな中、シッターさんのくれた時間はやさしくて、爆速で流れゆく日々のなかにぽっかりと空いたゆっくりなひと時になりました。
緊張しきってた身がふわりと楽になったのを感じたのです。
甘えたかったんやなぁ。

ありがとうシッターさん。
ありがとう助成金。
これからも頑張って納税するからよ。

と、まあそんなこんなでちょっと気負いすぎてた自分を反省し、もう腕立てなどはやらずに、ほどほどに生きていこうと思った次第です。



お盆に帰省。いままで快適だった新幹線の旅がとたんハードモードに。


進化の止まらないぱるたん

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