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2019年映画ベスト10

2019年に劇場で観たものの中から、日本映画、外国映画、それぞれのベスト10を発表します。
ストーリーは基本的に割愛します。
*一部結末に触れる箇所あり

日本映画

岬の兄妹
映画館で観たときの衝撃が一番大きかった。
生きるということは、かくも困難で泥臭くどうしようもないことなのだろうか。
特殊な境遇を描いているように見えて、生きることの普遍性を捉えた傑作。

殺さない彼と死なない彼女
この作品とこの後にも触れる『ホットギミック ガールミーツボーイ』によって、日本の青春映画は確実に新しい地平を切り拓いたと言える。
全ての感情と言葉は、愛に包含されるのである。

NO SMOKING
はっぴいえんど、YMOなどで活躍したミュージシャン、細野晴臣のドキュメンタリー映画。
ドキュメンタリーながら映画としての演出、構成が素晴らしく、細野晴臣の成長譚として楽しめる。
「最近になって歌うのが好きになってきた」というセリフが沁みる。

ガールズ&パンツァー 最終章 第2話
後半の知波単学園戦はシリーズ中出色のできばえ。
突撃するしか能がなく、同時にそれでは勝てないことを理解しつつも、突撃し続けるチーム。
そこに変化をもたらすのは新しい血たる下級生。
これまでのDNAを否定することなく勝利に向かうその様が、とてつもなく感動する。

愛がなんだ
めちゃくちゃ好きなのに、その人とは一緒になれないとき、あなたはどうしますか?
この映画の主人公の選択は決して一般的ではないだろう。
それでも、同じような経験をした人には理解できる部分が必ずあるはず。

ホットギミック ガールミーツボーイ
予告にだまされてはいけない。
これは決してキラキラ映画と言われる類いの映画ではない。
かなり極端な会話のテンポと登場人物の思想を剥き出しにしたその内容が、苦悩の末に少女が結論を下すまでを独特に作り上げる。

WE ARE LITTLE ZOMBIES
広告代理店勤務の監督ということもあって、映像の繋ぎ方やビジュアルがキャッチーである。
劇中のPVだけでも何度も観たくなる。
8月31日に、学校へ行きたくない児童・生徒に向けて、無料公開したというイベント性もよかった。

アルキメデスの大戦
宮崎駿の『風立ちぬ』がはまらなかった人には、この映画とは相性が良いのではないだろうか。
芸術を追及する者であっても、戦争責任は意識の下にあるべきと私は思う。

メランコリック
銭湯という舞台装置を上手く活かしている点、それだけでも好きになってしまう。
アクションへのこだわりも垣間見ることができる。
インディーズ然とした作りから、自分たちで考えた企画を形にする気概も感じられる作品。

アンダー・ユア・ベッド
何もかもがとにかく痛い。
お前はそれでいいのかと何度も言いたくなる。
健全ではない関係が続いた先の最後の最後、それぞれが思うところはどこに向かったのか。
考えが及ばなかった。

海外映画

ゴールデン・リバー
1970年代のアメリカン・ニューシネマが行き着くことのできなかった結末に私たちを連れていってくれた、傑作。
それをぬるいと取る者もいるかもしれない。
それでも同じような時代性をもつ今現在に、この結末を見せてくれたことに、拍手を禁じえない。
そもそも、ジョン・C・ライリー、ホアキン・フェニックス、ジェイク・ギレンホール、リズ・アーメッドの4人が主役の時点で、面白くならない訳がないのである。
劇伴の主張が強いながらも、映画にマッチしているところもよい。

女王陛下のお気に入り
3人の主演女性陣が素晴らしい、イギリス版の大奥。
私は何と言ってもエマ・ストーン演じるアビゲイルが好きだ。
登り詰めた感のあるラストだが、女王が可愛がるうさぎをオーバーラップすることで支配される側であることを強烈に印象付ける。
過去の彼女の生き方からは抜け出せていないという皮肉たっぷりな演出。
ヨルゴス・ランティモスを追いかけることを決定付けた作品。

スパイダーマン:スパイダーバース
ヒーローとしての役割を背負わされる感じに説得力があるのが好き。
色彩、平行世界のスパイダーマンそれぞれにタッチが違うなど、アニメーションって楽しい!と思わせてくれる。

台北暮色
何が起こる訳でもない、ただ淡々と進んでいく物語。
台北の様々な風景とそこに住む孤独な若者たちに向ける視線が優しく心地よい。
パンフレットでも対談しているように、三宅唱との親和性も高い。

バイス
ブッシュ政権の副大統領を主役にした、皮肉たっぷりのコメディ。
途中、そんな訳ねーだろ!とつっこみたくなるある仕掛けから、ノンストップで絶望へ。
この映画を偏っているとか、その割りに思想がないとか言うのは自由だが、世の中何も考えずに観られる映画だけなのも嫌でしょ?

暁に祈れ
一発も殴られてはダメだと分かっているラストシーンの緊張感がたまらない。
これこそ映画館で観るべき映画。
タイの刑務所のビジュアルも興味深い。

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
映画音楽や映画美術に目を向けたくなる映画。
マンソンガールズがそこまでやられなければいけないのか、というところはありつつも、ラストは大笑いしてしまった。

アス
我々は他者にどれだけ無感情でいられるのか。
隣人、そしてアメリカそのものだという「アス」を躊躇いなく殺していき、何人殺したかを競いあうような会話をする子どもたちに恐怖を覚える(まぁそうしないとこっちがやられるわけだけど)。
そしてこちらもうさぎが象徴的。

ジョーカー
40年ぶりの『タクシー・ドライバー』の復活をリアルタイムで観られただけで満足なわけです。

ある少年の告白
ルーカス・ヘッジズの現時点でのベストアクト。
彼を観るための映画。

おわりに

上記の他、Netflix配信の『アイリッシュマン』、『マリッジ・ストーリー』も大変面白い映画で、劇場で観ていたら間違いなくランクインしていました(それでも9位の『ジョーカー』と10位の『ある少年の告白』は外れてはいなかったと思う)。
来年もがんばって映画を観る。

次回はまた別のお話。

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