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スマホ版ガイアプロジェクトの紹介


この記事はボードゲームに関わるエトセトラAdvent Calendar 2022年12月22日の記事です。
前日の記事は義佐和@ギサワログ&サンデーボードゲーマーさんのボードゲームで棚を育てる話です。


最初に

2022年12月時点で暫定世界最高(スルージエイジズと並んで同率一位)のデジタルボードゲーム、スマホ版ガイアプロジェクトのご紹介です。
デジタルボードゲームと言っても私がメインで遊んでるスマートフォンでのボードゲームアプリ以外にもSteamや、恐らくボードゲーマーには最も知られたデジタルボードゲームを遊ぶ媒体であるボードゲームアリーナ(BGA)やTabletopSimulator(TTS)など、デジタル環境でボードゲームを遊ぶ環境は複数あります。その中で何故スマホ版のガイアプロジェクトが世界最高なのか、と言うお話です。

デジタルボードゲームの良さとは何か

先ず、私がデジタルボードゲームに何を求めているか&デジタルボードゲームの評価点がどこにあるか、から始めます。ここがブツのボードゲームのみをやられてる方には全く存在しない視点の話になります。
私はデジタルボードゲームを「ボードゲームとしての評価」+「アプリ(デジタル)としての評価」の総合点で判断しています。多少の傾斜はありますが、ボードゲームとして如何に面白いゲームでも、アプリのクオリティが低かった場合はかなり厳しい評価になります。後述しますがBGAの評価が低いのはこれが原因。
ボードゲームとしての評価は(私の趣味嗜好は入りますが)普通の評価ですが、問題はアプリ(デジタル)としての評価の部分。
私の場合はアプリの評価を没入度の高さを最も重要な基準として判断しています。「ボードゲームでありながら、デジタルゲームの様な「ゾーン」に嵌まれる」作品を最も高く評価しています。
この為には自分の思考時間以外のデッドタイムを極限まで無くす事が大事だ、と私は考えています。他人の思考時間やアニメーション、CPUの待ち時間などがそのデッドタイムに当たります。よって、最も理想的なデジタルボードゲームは「ソロか超高速な思考時間のCPUとの対戦で、アニメーションその他の待ち時間が皆無」なゲームになります。この視点のみで言うと、現在最も理想的なデジタルボードゲーム(の一つ)はスマホ版のRace for the Galaxy

アプリ版Race for the Galaxy。

になります。1プレイ2分かからない時間でプレイでき、CPUの思考時間は一瞬(同時に考えだしてプレイヤーより早い)、ゲームシステム上プレイヤーとCPUが同時にアクションを選択、実行するのでアニメーションを筆頭にターン進行などの細かい待ち時間もほぼ存在しません。無論これは私の視点で見た場合の評価点であり、例えば「世界中の人と好きな時にどこでも対戦が出来る事」に価値を置くのであれば、BGAは非常に有力な候補になります。ただ、私の評価基準で言うと、BGAはアニメーションは極端に遅くて全てのゲームはCPU戦は不可で多くのゲームはソロプレイも不可、また、細かい待ち時間が無数に存在する、デッドタイムの塊の様な存在です。とは言えBGAでしか遊べないゲームもあるので私の評価基準で見てもBGAに全く価値がない、と言う訳ではありません。

ガイアプロジェクトってどんなゲーム?

さて、デジタル版のガイアプロジェクトの話に戻しますが、上記の理由によりSteam版とスマホ版の比較を中心とした話になります。
先ず最初に「ガイアプロジェクトってどんなゲーム?」と言うお話から。
ガイアプロジェクトは2012年に出たテラミスティカの宇宙版で、2017年にFeuerland Spieleから発売されたゲーム。デザイナーはJens DrögemüllerとHelge Ostertag。
プレイヤーは14ある星間種族から1つを選びます。その種族が住める様に惑星をテラフォーミングし入植、自らの勢力を伸ばしていきます。

イタル人を選択。白い惑星が母星で、他の色の惑星はテラフォーミングする事で入植が可能になる

このゲームはテラミスティカと同じく得点の仕方が多岐にわたり、大きな得点源だけでも6種類あります(ラウンドブースター、ターン目標(ラウンドスコア)、研究、同盟、(基本/上級)技術タイル、(QIC、)終了時目標)。当然選択可能なアクションも多いので慣れるまでは大変ですが、慣れてしまえばアクションは大別して3種類(陣取り、研究、パワー)しか無く、煩雑さは思った以上にありません。

アクションは
・鉱山の建設
・ガイア計画の開始
・建造物の改良
・同盟
・研究
・パワー/QICアクション
・スペシャルアクション
・パス
・フリーアクション

と見ただけで頭痛がしそうな程多いですが、
鉱山の建設、ガイア計画の開始、建造物の改良、同盟は陣取りに纏められ、研究、パワー(QICアクションは複数効果がある)の3つの要素を覚えてしまえば、スタンダードな種族であればほぼ問題無く遊ぶ事が出来ます。
テラミスティカは陣取り部分がかなりタイトで、かつガイアプロジェクトの研究にあたる宗教トラックがほぼ得点源の意味しか無いので陣取り要素からの収入のみに依存している関係上陣取りの重要性が極めて高く、陣取りで失敗or厳しい状況になるとほぼ逆転は不可能なのですが、ガイアプロジェクトはその辺りがかなり緩くなっています。研究でも素材が得られる事で(陣取り=建築物からの収入が主ではありますが)収入面での自由度も高く、また、陣取り部分もテラミスティカから自由度が大幅に上昇。所謂「詰み」の状況にはそうそうならない様になりました。
この辺りは好みの問題もあるので一概にテラミスティカよりガイアプロジェクトの方が良いとは言えませんが、より自由度の高いゲームを遊びたければガイアプロジェクト、よりタイトなゲームを遊びたければテラミスティカ、と好みやその時の気分で好きな方を選べます。私個人の好みとしてはガイアプロジェクトの方が好きですが、テラミスティカも楽しめてます。システムはほぼ同じ(8割くらいのルールは同じ)なんですが、プレイ感はかなり違います。
デジタル版の開発はDIGIDICED。テラミスティカやガイアプロジェクト以外にもブルゴーニュの城やワイナリーの四季、パッチワークやフタリコラなど多数のゲームのデジタル版の開発をしています。元々アプリのクオリティは(処女作のテラミスティカの時点で)極めて高かったですが、Menu2.0と言われる改修後はCPUの速度が爆発的に早くなり待ち時間が一瞬に。未だガイアプロジェクトとワイナリーの四季、パッチワークしか改修されてませんが、最新のアップデートであるパッチワークだと、理論上人間側が一瞬で動ければ1プレイ10秒ほど(実際は人間側の動きの都合上2~3分かかる)でゲームが終わるほど爆速になりました。ガイアプロジェクトも待ち時間は極めて短く、スマホ版だと1プレイ12~15分、Steam版でも20~25分程度で遊ぶ事が出来ます。Steam版は2021年の5月に、スマホ版は2021年の11月に配信されました。

スマホ版ガイアがSteam版より優れている理由


実際の画面を見てみましょう。
Steam版はこちらで

Steam版

スマホ版はこちら

スマホ版

基本的な機能はどちらも同じで、メインの画面ではゲームボードと勢力の収入、アクション選択を表示。Steam版では終了時目標やターン目標が表示されています(右上)が、スマホ版ではこれらは別画面になっています。研究や同盟は別画面。メイン画面でアクションを選択、適宜サブ画面に切り替えて状況をチェックしつつ戦略を練る、と言うのはSteam/スマホ版のどちらも変わりませんし、単純に表示情報はSteam版の方が多いのでスマホ版よりも優位なのでは、と言う様にも見えます。ただ、それらを加味しても私の評価点である没入度の点からするとスマホ版の方がSteam版よりも数段上である、と私は考えています。その理由としては、

1:マウスか指か


入力デバイスの問題です。Steamはマウスで、スマホは指で操作します。これは基本的に全てのデジタルボードゲームで大体共通ですが、この時点で既に差があります。マウスは指と比べ常に1クッション置く関係上、どうしても時間がかかります。精緻な操作が要求されるゲームの場合はマウスの方が良い場合もありますが、デジタルボードゲームの場合は基本的にはアクション選択や建物を置く土地(惑星)の指定程度なので、指のタイムラグの無さの方が優先されます。

2:移動範囲


これはPC画面の大きさも絡む話ではありますが、マウスや指の移動範囲で言うと、スマホの方が小さいです。Steam版ガイアプロジェクトはその辺かなり練り込んであるのでスルージエイジズほど顕著ではありませんが、スマホ版の場合の移動範囲は画像で言うと右側のこの一列。

アクション選択のみの場合、右側一列しか触らない


Steam版の場合は下側の一列なので、

Steam版は下の中央部分。決定が右下の→なので、地味ながらちょっとした移動を常に挟む事になる。

やはり若干の差があります。上記のマウスー指の差と合わせると、細かい差でありますがそれが毎アクション積み重なっていくので、トータルだと相当な差になります。上記のプレイ時間の差はほぼこの2つに起因します。

3:視点の移動


これも細かい差ではありますが、常に気になる部分です。恐らくこれは意図した物では無い(たまたま)と思いますが、結果的には極めて有効に機能しています。Steam版の場合盤面とアクションを見比べる際、上下に視点を移動します。

Steam版だとアクション↓盤面↑アクション↓と言う視点移動になる

これは大半のデジタルボードゲームでも大体同じ形。「下にアクション、上にボード」だと見栄えが良いのもあります。ただ、スマホ版の場合はこれが左右になっています。

スマホ版の場合アクション→盤面←アクション→、と言う視点移動になる。自キャラ情報のチェックも含めると→←←→→

これはボドゲアプリでは皆無とは言いませんが、かなり珍しい形。やってみて改めて気付きましたが、視点は左右移動の方が上下移動より圧倒的に楽です。しかも、スマホ版の場合は自キャラの収入表示も同じ軸の左側にあるので、基本情報、盤面のチェックとアクション選択が全て同じ縦軸の視点の横滑りで出来ます。ラウンド情報や研究、同盟のチェックなんかは下側にあるので完全に同じ軸の横移動と言う訳にはいきませんが、非常にストレスの少ない視点移動になっています。

4:1画面モード


これはおまけと言うか上記3つとは違い、「1画面モードでゲームをする時」限定の話ですが、Steam版の1画面モードは文字通り1画面に全てのゲーム情報が入っているのですが、その分視認性は大幅に低下。

Steam版の1画面モード。盤面表示がかなり小さい。

真ん中にそんなにしょっちゅうチェックする訳では無い研究が来ていて、重要な情報であるマップ(盤面)情報は右上隅の1/6にしかありません。かなり小さい&画面中央では無いので、最も見る頻度の多いマップ情報を見る為に常に右上に視点を固定していないといけません。そこが中心になるので、左隅の自キャラの勢力情報のチェックまでは端→端の視点移動になりますし、ターン/最終目標は真ん中の研究スペースを下にスライドしないと見れない関係上、1画面モードではあるけど視点移動は大きいし画面のスライドも挟み、その上でマップ情報が見難い、とかなり微妙なモードになっています。Steam版の1画面モードだと通常モードの方が便利なくらいです。
一方スマホ版は、1画面である事を捨てた代わりに利便性が爆発的に上昇しました。

スマホ版の1画面モード。盤面の大きさは一目瞭然。研究、自勢力の建物との切り替えは帯状に表示されている部分のどこをタップしても切り替え可能


具体的にはマップ情報が1画面ほぼ丸々表示になったので視認性が爆上がり。通常モードだと研究などの表示は小さいボタンのタップなのでやや手間でしたが、タップの反応する領域が数十倍に増大。気軽な操作で認識する様になりました。また、通常モードだとスマホ版ではメイン画面で表示されなかったターン/最終目標も一目で分かる様に。視認性と言う意味ではSteam/スマホの全モードを通じて最高の視認性を誇ります。ほぼ必要な情報はこの1画面で表示され、研究や自キャラの建築物などの細かいチェックが必要な情報は適宜タップして表示させる、と言う形で、完全な1画面ではありませんが、ほぼ理想的な棲み分けを実現しています。

惜しむらくは
・アクション選択が下側に移動してしまった
これによって視点の移動が左右から上下に。他の一般的なボードゲームと同じではありますが、通常モードからはちょっと疲れる形になりました。これがあるので現状私は通常モードで遊んでいます。

・3分割の真ん中が研究
ただ、これは良し悪しあって、画面の中央よりやや右側にマップが表示される様にはなってますが、研究/自勢力の建物表示を左手一本で出来る、と言うメリットでもあります。画面の真ん中をマップにすると研究ー建物を見るのに左右に目線を振らないといけないのでそれはそれで不便、と言うのもあります。これに関してはどっちが正解かは何とも言えない感じ。
これらによって、スマホ版の1画面モードがパーフェクトで全てこれで良い、と言う訳ではありませんが、通常モードと自分のやり方、感覚で使い分けが出来る(サクサク感、没入度重視なら通常モード、視認性重視なら1画面モード)様になりました。
1~3によってSteamよりスマホの方がよりサクサク動かせて、なおかつ視線の動きもよりストレスが少なく、4によってSteamでは不遇だった1画面モードも使い分けが出来るほど便利になり、スマホ版は文字通りガイアプロジェクトの完成形と言える状態になりました。1画面モードでアクション選択を通常モードと同じ右側に並べて欲しかった、ゲーム起動に若干時間がかかる、と言った様な細かい不満点が無い訳では無いですが、現状全てのデジタルボードゲームの中で、私の評価する没入度と言う点において、スマホ版ガイアプロジェクトが最も高いレベルにあると思います。デジタルボードゲームとしての評価で言うとスルージエイジズと同率1位としていますが、スルージエイジズの場合は視点などのケアがなされている訳ではありません

スルージエイジズの画面。盤面は中央、場のカードは上、手札は下なので視線は当然上下移動になる


(取るカードは上の列、自分の手札は下側なので、視点移動は上下が続く)。スルージエイジズの場合は動きがスムーズかつ爆速のアニメーションで多少の欠点、難点を力技で覆い隠しているので、(偶然も多分に含んでいるとは言え)視点までケアされた快適なゲームプレイ、と言う意味ではガイアプロジェクトが現時点では最も完成されたデジタルボードゲームである、と言えると思います。

最後に

スマホ版ガイアプロジェクトの紹介でした。今回はゲーム内容と言うか細かいアクションの説明とか建物やパワー、QICの説明とかまでやりだすと文章量が爆発的に増える(概算で5倍以上になる)のでその辺は最低限に。あくまでも「なんでスマホ版ガイアが至高なのか」を、特に(同じ開発でそれなりの完成度ではある)Steam版との比較に絞った紹介にしました。大半の(私的な)評価の高いボドゲアプリってのはアニメーションが高速辺りが精々で、ゲーム内情報へのアクセスのしやすさまでいくとかなり少なく、視点や目線まで行くとほぼ皆無と言って良いレベルです。恐らく今後もそこまでケアしたボドゲアプリが出る事は先ず有り得ないとは思いますが、出来ればスマホ版ガイアを範としたボドゲアプリが今後もっと増えてくれる事を願います。

今年のボドゲアプリはエバーデールやマグレヴメトロ、レッツプレイ!オインクゲームズにロールプレイヤーにチャイにLAMAにClever 4Everにテラフォのヘラス&エリシウムと、名作、良作は多いですが2021年と比べるとやや小粒な印象が多い一年でした。私自身はプレイ回数的にはアプリ版ドミニオンを2500回ちょいが一番多いゲームでしたが、重ゲーだと今年一番プレイしたのはスマホ版ガイア(100回程度)で、現時点で思い入れの最も強いのもスマホ版ガイア。と言う訳で今回はスマホ版ガイアの紹介を書かせて頂きました。種族評価やプレイガイド的なものは先達の素晴らしい文章が沢山ありますが、そちらや詳しいレビューなんかもいずれ書きたいな、と思う位には好きなゲームです。アプリのクオリティの高さと相俟って、気持ち良い時間がゲーム中ずっと続くゲームですが、この気持ち良さは文章での表現が難しい(やってみないと分からない)部分でもあります。是非機会があれば一度スマホ版ガイアをプレイしてみて下さい。飛ぶぞ。

明日はびーている / btailさんの再考・ラブコメ会 ─ラブコメもののボードゲームのメカニクスについて─の予定です。


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