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リバオケの何がそんなに好きなのか

2023年の冬に放送された連ドラ、
「リバーサルオーケストラ」。
もちろん圭さん演じる
朝陽が大好きなんだけど、
それ以外にもこのドラマには
好きな要素がたくさん詰まってまして。
とりあえず、
初回にして神回の1話目について、
書いてみようと思います。

神回って言ったけど、このドラマ、
全話が神回なんですよね。
おかけで、見返そうとすると
必然的に全話見返しになっちゃう。

毎話、高ーいハードルを軽々超えた先の、
最終回がまた、ものすごいカタルシスで。
さらに言えば最終回の最終シーンがまた…‼︎
と、案の定キリがなくなっちゃうので、
話を初回に戻します。

6000字超えの長大なものになってしまったので、せめて目次つけてみます。

ものすごく
「喉ごしがいい」ドラマ

公式本で、
脚本家の清水友佳子さんは
「書けなくて七転八倒することもなく、
ずっと楽しく書けた」
とおっしゃってて。
それ、見てる方も同じです。

連ドラって長いので、
「ストーリーが動き出すまで、
あともうちょっとガマン」
と思いながらじっと耐えて見ること
珍しくないけど、
リバオケはそれが皆無だった。

スルルルルーっと、最後まで見てしまう。
なんなら止められない。
とにかく、ものすごく”喉ごしが良い”。
そのくせ、ものすごく心を動かしてくる。

すべての登場人物の心理描写に無理がなく、
(本宮さんだけは劇画タッチで
二次元世界の住民だけど笑)
すべてのセリフにウソがない。
だから何にも疑わず、
安心してこの世界に身をゆだねてしまう。

とにかく高い完成度で
スルーっと気持ちよく見ちゃうので、
見終わった感想が

「朝陽さんカッコよ〜」

しか浮かばなかったりする笑。

けどそこをがんばって、
朝陽さんが持つ
”語彙力失わせマジック”に負けずに笑、
このドラマのすごさを掘り起こしたいと思う。
だって、
こんなに全話まるごと
無限おかわり状態になるドラマって、
他にないから!

尋常ならざるテンポで進む1話

※ここからは1話のネタバレを含みますので、
未見の方はご注意を。


今度こそ話を1話目に戻します。
1話目の尋常ならざるところは
テンポの良さ。

「えっ、
1話目でそんなとこまで
進んじゃっていいの?」

ってとこまで物語が展開していきます。
この出し惜しみのなさよ。

これがね、普通のドラマだったら、

1、ドイツで活躍する朝陽
2、パパからの連絡で帰国
3、騙し討ちがわかり朝陽激怒
4、ポンコツオケと渋々対面
5、ドイツに帰ると言って聞かない朝陽をパパ、ママ、小野田が総出で説得、
なんとか留まらせる。
6、救世主である初音と朝陽が出会う
             次回へつづく…!

くらいの進み具合だと思うんですよ。
んで、2回目は

7、朝陽が初音の説得開始
8、初音のトラウマ解説
9、初音、オケ練習に参加
10、家族との対話で本心に向き合う
11、初音、オケへの参加を決める

というところまで進んでまた次回…ってな感じかと。

けどね、このドラマ、
4、5をすっ飛ばして、
なんと初回で11までやっちゃうんですよね。
す、すごい。

けどもっともっとすごいのは、
こんなに高速回転なのに、
見てる方はそれに気づかない、ということ。
要するに詰め込み過ぎの感がまったくない。

「わー、きゃー、たーのし〜」

っておもってるだけ笑

いろいろすっ飛ばしてるのに、
ストーリーラインや
人物の心理を追うのに必死にならずとも、
スッと、
物語が気持ちに入ってくる。
なんでや?? 

それはたぶん、
核となる登場人物が心を動かすシーンには、
たっぷり時間を割いているから。

その際たるものが、演奏シーン。
ほぼ毎話、
新たな曲の演奏シーンがあるのがこのドラマの画期的、かつ、
演者や制作陣にとっては
無謀なところらしいのですが。

1話目では、
コンマスを断り続ける初音を、
朝陽が市長であるパパの権力行使という
卑怯な手をつかって笑、
練習場へ連れてくる…というところから、
クライマックスの演奏シーンが始まります。

(ここで余談だけれども、
市長室で初音を待ち受ける朝陽の、
クッソしらじらしい顔、
絶品ですよね。
あと、初音がまんまと
広報担当を引き受けたあとの、
うれしさを噛み殺しながらの
「しめしめ…」顔も!
小さく表情筋を動かすだけで心情を表す、
圭さんの特殊技能を堪能できるのが
朝陽という役なのですよね。
つくづく最高です)


曲は、「ファランドール」。
音はズレズレ、お話しにならない演奏で、
初音はくるりと背を向けて
練習場を後にしようとする。
そこへ聴こえてくるのが、フルートのソロ。

転がるような、透明感のある音色。
思わず脚を止めて、オケに向き直る初音。
じっとフルートの演奏者を見つめる……

ここ、何度見ても胸が熱くなって、
涙が出てくる。
なぜだろう。
きっと、見てるこちら側も、
初音と一体化してるから。

朝陽は確信してたんだろう。
初音は音楽の楽しさに逆らえない。
現場に連れて来さえすれば、
再び音楽に向き合うだろう、と。

朝陽は初音に言う。
「フレーズはバラバラ
音もズレてる」


ここで2人がハモる。
「でも」

「音は悪くない」

はじめて、2人が心を通わせるシーン。
音楽は理屈じゃない。
言葉より雄弁。
そのことを一瞬で、
視聴者にも理屈でなく伝えてしまう、
ほんとにほんとに秀逸なシーンだと思う。

「今度は入ってくださいね」と朝陽が振り始めたのは「ウィリアム・テル序曲」。
トランペットのファンファーレのあと、
朝陽が初音に合図を出す。
とっさに、ソロを弾き始める初音。

ここ、ほんとーにすごいのが、
初音がほんとに
ヴァイオリンを弾いてるようにしか見えない、ということ!

(語彙力ゼロ)

もちろんプロの演奏家の人の音源に
合わせて演奏しているのだろうけど、
まったくそうは見えないんですよ。

初音の演奏をはじめて
耳にするオケのメンバーが
「おおお〜」ってなるんだけど、
テレビのこっち側の私も
まったく同じ心境になって
「おおお〜」って言える。
これがどんだけ幸せなことか、わかりますか!(誰に言ってんだ)

初音としての初っ端の演奏で、
みんなの前に立ち、
弓や指の動きがすべてまる見え、
ごまかしようのない状態で演奏するって。
かつ、
ほんとに弾いてるようにしか見えないって。
いやどんだけ。

ただただ音楽の素晴らしさを伝えるために、
演奏シーンをフルで使うという
前代未聞のチャレンジをしてくださった制作陣に、心からの感謝を申し上げます。

あ、ここまで書いて気づいたけど、
1話目に重要な演奏シーンを入れ、
かつそのシーンに
しっかり時間を割くための
いろいろすっ飛ばし、
だったのか(もっと早くきづけよ)。

初音ちゃんに引っ張られて、
みんなの演奏が
ぐいぐい一つにまとまっていく様子を、
朝陽さんは指揮の手を止めて、
うれしそうにながめていて。

朝陽さんがここまで初音に執着した理由は
5話でわかるんだけども、
それを知ってからあらためて
このシーンを見ると、
朝陽さん、
ほんとにうれしかっただろうなあ、って。
他にもそういうシーンがいくつもあるから、
おかわり、やめられないんですよね。

本音をぶつけ合う
姉妹のシーンもヤバかった

神がかり演奏シーンが終わって、
もう初回はこれで充分、お開き…
ってなるじゃないですか。
けど、驚くべきことに、
さらにこのあと、神シーンが続くんですよ。
それが、初音と、
妹の奏奈ちゃんの対話の場面。
息をもつかせぬ本音の応酬の口火を切るのは、奏奈ちゃんの方で。
これがすごく意外だった。

失礼ながら、ですが、
奏奈ちゃんが初めて登場したときは、

「よくある主人公の話聞き役ポジションだな」

って思ったんです。
よくドラマに出てくるじゃないですか。
飲み屋とかで主人公が
グチとかを話すときだけに登場する、
女ともだち。
物語を回すパーツとして
便利なんだろうけど、
こういう役回りの人が出てくるたび、
「主人公の話を受け止めるだけのこの人にも、いろんな悩みとか、
人生があるはずなのに」って、
いつも少しだけモヤモヤしてしまう。

かわいらしいルックスやキャラもあいまって、奏奈ちゃんもそういうポジかなと思っていたのが、このシーンで早々に裏切られた。

「お姉ちゃんが悲劇のヒロインやってる限り、こっちもずーっとキツイんだわ!」

「なんでだれも気にしてないのに、1人で引きずってんの⁈」

えっ、
めちゃくちゃ言うじゃん笑。
全然聞き役ポジションじゃなかった、
誤解してごめんよ。

それにしても、
主人公が長年抱えるトラウマに対して
1話目でここまで本音出し合っちゃうの??

はじめてみたとき、それにすごく驚いた。
けど、ふしぎと時期尚早感はなかった。
この姉妹のヒリヒリするやり取りから、
自然と、
ここに至るまでに積み重ねてきた時間を
感じとることができたんだよね。
いや〜、初回にしてこのテンションのシーン、しみじみすごいよ。

次々裏切られる、キャラのイメージ

奏奈ちゃんに始まる、

「どうせこういうポジでしょとタカをくくってたら、気持ちよーく裏切られる」

というこの現象。
このあとも、最終回に至るまで、
脇を固める皆々さまの多くに起こり続ける。

※ここから、1話目を語る流れから大きく逸れていろいろネタバレしてますので、
1話目以降を未見の方はご注意を。


恋の鞘あてポジかと思ったかおりさんは、
ただ一途に音楽が大好きな人で、
朝陽の素晴らしいサポーターかつ理解者。

初音に試練を与えるライバルであり、
やはり恋の鞘あて要員?と思われた
三島彰一郎は、
誰よりも自分に厳しい、
孤独な演奏家でしかなく。

見事にチャイコンを弾ききった初音に、
目を潤ませながら拍手をおくり、
初音が音楽の世界に戻ってきたことを
心から喜ぶ。
挙句、初音に
「ともだちになってくれない?」
とか言うんだからね。
こんなに純粋な関係ある??
泣けてくるよ。

恋愛至上主義の
陽キャ担当かと思われた玲緒さんも、
「主役になれない凡人の自分」という、
全人類共感度マックスの
普遍的な葛藤を抱えていることが
6話で描かれる。

「いや、よりにもよって天才が主役のドラマで、そんな解決不可能な話持ち出す??」

と思った矢先。
玲緒さんの話を聞いていた
藤谷さんが言うわけですよ。

「才能ならあるんじゃね?
あんたにも俺にも。
努力する才能が」

その返しがあったかー…!!
200点満点すぎるでしょ!
そりゃスピード婚もするわ!

わたしこの言葉、ずっと忘れないと思う。
この前のシーンの、
やはり藤谷さんの名言、
「苦しいけど楽しい。やっかいだよな」
って言葉と一緒に。

それ以外にも、
息子に無関心で焦燥感ばかりを掻き立てる
人物に見えた彰一郎パパ、光太郎が、
ただの口ベタ?笑 さんであることが、
最終回の終盤で親子の対話によってわかる展開も、めちゃくちゃしびれた。

他者の評価ばかり気にしていた彰一郎の
「まずは自分で自分を褒めようと思う」
という確かな変化を受けて、
光太郎は「それだ」と返す。

「大事なのは、おまえさんが、自分自身の音に納得しているかどうかだ」

「おまえさんを求めてくれる人たちがいる。
おまえさんに拍手を送ってくれるオーディエンスがいる。それがすべてだ」



しびれる〜〜‼︎
めっちゃいいパパやん泣
もっと早く言ってあげたらよかったのに〜!
けど光太郎の中でも
言語化できていなかったことで、
彰一郎の一言で気づけたのかもしれない。

敵役だった高階会長もそう。
最後の最後で戦いをフェアに戻して、
朝陽の高階フィル行きを白紙に戻してくれる。
いつも表情や声のトーンがほとんど変わらない難しい役だったと思うけど、
姑息な本宮議員の横で笑、
いつでも高階フィルのためを考えていて、
会長の器だったなあ。


脚本の清水さんは
「嫌な人が出てこなくてもドラマを作っていけるというのをやりたかった」
と語っておられますが、
それに加えて私が勝手に感じた
メッセージは、

「この世界に、脇役なんていない」

ということでした。

ああそういう役回りね、
物語を回すパーツでしょ、
と感じていた人たちが、
次々にそのイメージをひるがえし、
愛さずにはいられない人間味を表していく。
あ、そっか。
そういう意味でも
リバーサル(反転、逆転)なんだ。

ポンコツオケの一発逆転、
という大きなストーリーラインの
爽快感は言わずもがなだけれど、
1人1人のキャラクターのイメージが
いい意味で覆されるたびに、
ほんとにほんとに爽快だった。

清水さん、
ドラマの世界に
静かな革命を起こしてくれてありがとう。

天才でなくても、スターでなくても、
1人1人の人生に
意味があるって感じさせてくれて、
本当にありがとうございます。

朝陽について書き散らかします!

さて、
大好物である朝陽さんについて、バカ丸出しで書いていきます。

まず、
朝陽さんにタートルネックを
着せるという英断を下した方に、
感謝状を差し上げたい。

特に白タートルですよ。
レフ板効果エグいんですよ。
これもう発明の域でしょう。
いっつもタートル着てるおかげで、
たまに首が出る服着てるだけで

「うっわ、エッロ。
あざす!!」


ってなるのお得すぎるでしょ。
とにかくありがとう!!

(公式本で、玲緒役の瀧内さんが
「タートルネックが似合ってて眼福でした」と言ってるの、仲間…!ってなりました)

あとね、指揮者ってあの台に乗るでしょ。
そしてオケ全体を写そうとすると、
必然的に指揮者はバックショットになるわけで、当然、こうなります。

「脚、なっがっっ」

こんなに圭さんの全身をとくと眺められるドラマがかつてあっただろうか。
(見られてないの、鬼ほどありますが)

またスーツのチョイスが絶妙なんだよね。
クラシックすぎず、
今っぽいシルエットで、
細身のパンツにゴツめの革靴合わせてんのがまたおしゃれで、
このデカめの靴との比例で
脚の細長さが際立つんですわ。
わかってらっしゃる!!ありがとう!!

あと激しい指揮で乱れるの前提の、
ちょい長めの前髪も最高です。

朝陽さん、全方位にぬかりなし!!


はい、つい見た目のことが先行しましたけども、
このドラマを見て
一番最初に衝撃だったのが、
圭さん演じる朝陽が、

「本当に現実に存在している
指揮者にしか見えない」


ということでした。
素人目ではありますが、
朝陽の振るタクトがきちんと意思を持って、
「常葉朝陽の音楽」を
形づくっているように見えたんです。
その説得力たるや。

円盤特典のメイキングを見ると、
クラシックのどの曲も同じに聴こえるような状態から練習をスタートして。
右手と左手が違う役割をする、
という指揮者独特の手の動きに苦戦して。

どんな役でもリアリティを持たせちゃうで
おなじみの圭さんだけど、
朝陽さんの難易度、そして完成度、
異次元ですよね。

あと、忘れちゃいけないのが声色です。
ふだんのどっちかっていうと高い声を封印して、厚みのある低音のイケボにしてるのがまた、たまらんです。
圭さん、おそらく音域が広いんでしょうね。
だからこそできるワザ。
この声で繰り出すダメ出し、
数々の名作がありますが、
私史上伝説なのが
2話で蒼くんに出したこれです。

「タータラタータラター🎵
16分音符 正確に。
流さないで、しっかり刻んで」

この
タータラタータラター🎵
の部分! 
お声が良すぎるにも程があるから!!
また声量があるから、響く響く。

こういうちょっとしたダメ出し一つにしても、
ものすごく
「指揮者ってこういうこと言いそう」感があって、説得力につながってたなあ。

ついに、
クラシックそのものに興味を持つ

公式本にはオーケストラ監督を務めた
神奈フィルの榊原徹さんの
インタビューもあって。

「10話の全部にオーケストラが出演するドラマと聞いて、絶対ムリだと思った。
そんな話は聞いたことがない」

と語っておられて、そっか、
そんなにすごいことやってたんだ、って
ハッとしました。

公式本、最初は演者の方とか清水さんのインタビューだけ読んでたんだけど、
リバオケを何度もおかわりするうちに、
クラシックそのものに興味が湧いてきて、
各回の曲紹介や、
音楽監督の方のインタビューも
めちゃくちゃ面白く読みました。

結果、私こんどオーケストラの
コンサートいってきます!!
すごいねリバオケ、
人の人生変えちゃってる。

円盤に付いてた演奏シーンのメイキングも
めちゃくちゃ面白かったけど、
演奏をフルで使うとはどういうことなのか、
どういう困難があるのか、
そもそもどう撮影してるのかとか、
もっと技術的なところに突っ込んだメイキングも見たかったなあ。

前代未聞のことをやっているってことが大きなウリだと思うので、
続編の際は、このへんをぜひ、
よりアピールしていただけたら、
さらにファンの裾野が広がるのではと。

当然、続編ありますよね。
それまでおかわりして、待ってますんで!!

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