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東京大学レアアース泥開発推進コンソーシアム 第6年度活動報告会 (2020年12月9日)まとめ私家版 その4

1 開会あいさつ 全体報告 加藤泰浩東京大学工学系研究科教授 その1
2 全体報告その2
3 全体報告その3
4 部会1 調査モニタリング環境 部会2 採泥/揚泥 活動報告(本ページ)
5 招待講演 新藤義孝衆議院議員(元総務大臣・自民党政務調査会会長代理)
6 部会3 選鉱・精錬 部会4 残泥処理 部会5 新素材 活動報告
7 今後の進め方  加藤泰浩教授

全体報告 加藤泰浩東京大学工学系研究科教授 その3より続く

部会1 探査・モニタリング・環境 東京大学大学院工学系研究科 中村謙太郎准教授

今加藤先生のお話しにありましたように、2011年にレアアーズ泥が発見され、さらに2013年にわが国のEEZである南鳥島で超高濃度のレアアース泥が発見されました。これにより国産のレアアース資源を開発できるという機運が高まりました。私たち部会1ではこれを環境という観点から支えていくということをミッションとしています。
(図表略)世界に目を転じますと、今現在海底鉱物資源の開発の実現が近づいてきたことによって、環境影響に対する関心が高まっています。環境保護団体の関心が高いというのはもちろんなんですけど、科学会においてもここ数年活発な議論が行われていて、例えばネイチャーやサイエンス、あるいはPNASといった影響力のある科学論文誌において大きく取り上げられる状況があります。

環境1

また、国際政治的な面に関しましても、1992年の生物多様性条約に引き続きまして、国家管轄権外区域における海洋生物の多様性(BBNJ)に関する条約化が2015年にスタートしておりまして、2018年からは政府間会議が継続的に行われています。今年はコロナの影響で延期されましたが、公海域における海洋生物の多様性を担保することの条約化は進展してきています。

環境2

海底鉱物資源の開発に関しては国連組織の国際海底機構(ISA)が1994年に設立されておりまして、ここで海底鉱物資源に関する規則の制定のみならず環境影響に関する規則の制定も継続的に進められてきている状況にあります。
直近のISAのストラテジックディレクションズにおいても、SDGsへの貢献であるとか、あるいはBBNJとの連携というのがいの一番にあげられておりまして、ISAが海底鉱物資源の開発のみならず、それにともなう海洋環境の保全というものを重視していることがよくわかります。

リンク:国際海底機構 International Seabed Authority

リンク:外務省 国際海底機構

具体的なISAのガイドラインは、まず「海底鉱物資源の探査に関する環境影響評価ガイドライン」が2013年に制定されておりまして、その後も継続的に改訂が行われていて、今年の3月に最新の改訂版が公開されています。
また、商業開発の段階においてどういう規則を課すかに関して「海底鉱物資源の開発に関する鉱業規則」というのが現在最終ドラフト状態にあり、ここに環境規制が盛り込まれることになっています。

このような情勢の中で部会1の環境ミッションとしては、技術開発と環境対策を一体に考えるということを目標に活動しております。いわゆる技術開発と環境対策の双方向のフィードバックです。対立ではなく連携・協調です。その意味でもコンソーシアムの枠組みは重要です。
今年度の部会1の具体的な取り組みに関しては、環境対策の検討と、開発システムへのフィードバックです(中略)

1環境対策の検討

1.1マンガンノジュールの取り組みを参照する

環境3

先行しているマンガンノジュールの取り組みを適用可能かどうかを検討しています。ISAの鉱業規則にはまだレアアース泥というのは載っていないんですが、実はレアアース泥というのは存在する水深とか遠洋域という条件、表層の堆積物を採取するという採掘の条件がマンガンノジュールとほぼ一致している。こういったことからマンガンノジュールでの対策がそのままレアアース泥にも適用可能であろうと考えています。実際マンガンノジュールとレアアース泥は分布するエリアが重複するということも私たちの研究で示されています。

環境4

環境5

このマンガンノジュールの開発における環境保護の戦略というのは、他の鉱物資源よりも一歩進んでおりまして、それはハワイ沖のクラリオンクリッパー島ゾーンと呼ばれるエリア(通称CCZ)で、1970年代からマンガンノジュール開発に向けた調査とか技術開発が行われていて、現在ではISAの国際鉱区が日本を含めて数多く設定されている場でもあることから、開発に非常に近い資源であるということで、ISAにおいても他の鉱物資源に先駆けて開発に向けた環境保護戦略というのを具体的に検討しております。こうした環境保護戦略に関する文書も一足先に公表されています。

この環境保護戦略の核となるものがAreas of Particular Enviromental Interest(APEI)と呼ばれるもので、保護区を設定するという戦略です。これは海底の資源開発を行う場所の周囲あるいは中に開発の影響が及ばない保護区を残すことで、完全に開発によって根こそぎ生態系がダメージを受けてしまうということを防いで、開発が終わった後に原状回復していくという目を残すという戦略です。

1.2レアアース泥への適用可能性

(図表略)こういった戦略を南鳥島のEEZにも適用していくわけなんですが、まず中止のコア領域というのが200km×200km、その外側に幅100kmの緩衝帯というのを設定することを考えます。で、このコア領域というのは生物の移動範囲あるいは生物分布の不均質性などをもとに決められていて、一方で緩衝帯の広さというのは開発の影響が及ぶ範囲、これはマンガンノジュールの場合でいいますと、海底で巻き上げられた泥のプルームが移動する距離が100km以下であるということから設定されています。

1.3南鳥島レアアース泥開発の実情に合わせた環境対策の策定

環境6

これを南鳥島のEEZにそのまま適用するわけではないんですけど、この戦略を適用するのに重要となる項目について検討を進めているところです。具体的には最適なAPIのサイズ、またそれを南鳥島のどこに設定すべきなのか、あるいはそのためのデータをどこからどのように取ったらいいか、またEEZ外との関係をどうするか、といった項目について現在部会の中で検討中です。
これらの検討によりレアアース泥の実開発に適用可能でなおかつISAの国際的な合意とも適合するような環境保護戦略というのを策定できると、資源の開発に大きく前進することになっていきます。

2開発システムへのフィードバック

2.1環境視点からの開発システムの最適化

いま海底資源開発における環境影響で大きく注目されているのがプルームというものです。これは汲み上げた泥水を海に捨てることによって生じる泥の部分と、採掘時に湧き上がる泥によって生じるプルームというものがあります。これが生物に影響を与えるということで、これをどうマネージメントするかということは、現在ISAで制定されている開発鉱業規則に明記されています。

(図表略)プルームの影響をいかに抑えるかということを検討する上で大事になるのが、プルームとはそもそも何で、それが影響を及ぼす範囲は何によって決まるかということなんですが、プルームとは土粒子が巻き上げられて、その中の粒子が時間をかけてすべて沈降しきるまでのあいだに、海流によってどれぐらい移動するのかというのが、プルームの影響範囲を決めると考えることができます。
これを検討するために必要な情報は多くあるわけなんですけれど、特に重要なのは土粒子がどれぐらいの大きさをしているか。これによりどれぐらいの時間で沈降するかが決まるのでそのサイズに関する情報。それと流れていく海流の速度の情報が非常に重要になってきます。
これらに関し南鳥島周辺の情報で十分なデータが蓄積されているとは言えないんですけれど、JOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)が2016年に公表している情報を元に計算をしてみると、プルームの巻き上げる影響というのは、だいたい100km先まで及ぶということが概算でわかります。有望なこのエリアで開発した時に影響があるのはこの範囲ということがわかります。この巻き上げられるのが10mというのはマンガンノジュールの機械によるものです。

2.2開発システムに即した環境対策の立案

環境7

一方でこの巻き上げの高さを3mに抑えると、到達距離は30km程度に減らすことができます。開発影響は劇的に小さくなることがわかります。レアアース泥の開発においては私たちが独自に作ったシステムで、巻き上げの高さを抑えるシステム開発ができると影響範囲を小さくすることができるということです。これによりAPIの設定も最適化できると考えています。このような肝になるところを開発システムに組み込むことでより低不可な開発ができると考えて、私たちは引き続き検討を行っていきたいと考えています。

部会2 採泥・揚泥 東京大学大学院工学系研究科 高木周教授

(引用者注:この部会の報告で引用者に正確に理解できていない部分があります。略の多い、必ずしも正確ではない要約になります申し訳ありません)

ご報告します。多くの企業の方に参加していただいていますが、これまでのところ主にエアリフトポンプの揚泥技術の開発をやってまいりました。この現状報告をいたします。

エアリフト1

産総研に昔マンガン団塊のプロジェクトで使った200mの縦型水槽があります。これを使って実験を行ってきました。(産総研エアリフトポンプ実験、中略)
ただしコロナの影響で今年度の実験は後に遅れ、本日は昨年度のデータによりまして現在実験中のものを紹介します。

エアリフト2

パイプを垂直に200mおろして実験できます。圧縮空気を送り込んで揚水揚泥の実験を行ってきました。南鳥島海域のものと同等の特性を持つレアアースの模擬泥水を使っています。(動画、略)たいへん順調に揚泥できています。

エアリフト3

エアリフトポンプを使って問題となっているのは、海底の深いところ。5000~6000mからあげていくと、気泡がはいっていると、大気圧下にあげていくと体積が大きくなる。小さな気泡も上にあげていくと大きなガスになり、管の中がここに示します環状流という状態になりますとエアリフトとしての性能を失いガスだけが抜けて揚泥できなくなります。この環状流の問題も含めていままでデータをとってきて、ここで触れておきたいのは(中略、気液二相流の流動様式)
鉛直上昇気液二相流の流動様式というのは、特に原子力の熱交換器を中心によく調べられてきました。(中略、気液二相流の相転移、ガスが増えると環状流に)

エアリフト4

原子力業界で調べられているのは、短い管の長さですが、私たちのエアリフトでの数千メートルの長さでは、この環状流は安定的ではなく、液相が液膜状に張り付いた状態になるのは安定的でなく、ガスだけが抜けいていくということにはなりません。液膜は内側に入り込んで、気液混合状になります。これは都合の良い話で、気液混合状態がロバストになるということです。液相が持ち上がってくる状態が広い条件下で可能ということが分かってきました。(中略、ガスの圧力、圧縮ガスの注入条件、ガス抜き)
で、どの問題も解決できる可能性が出てきました。

エアリフト5

(中略、大水深化の課題、コンピューターシミュレーションの導入)
いまデータを再現できるような数値計算モデルも構築しています。(ドリフトフラックスモデル、中略)

現在実施中のこと

エアリフト5

レアアース泥とマンガンノジュールに共通したエアリフトシステムの可能性として、固気液三相流の実験も行う予定(後略)

2021/01追加情報

リンク:読売新聞記事2021/01/18 【独自】南鳥島EEZでのレアメタル採掘、商業化へ…28年末までに技術確立

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中国を凌ぐ日本の高濃度レアアース。世界を変えるその凄さについてまとめてみた。【南鳥島】

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【南鳥島レアアースの凄さ】
【南鳥島レアアースの凄さ②】

東京大学レアアース泥開発推進コンソーシアム 第6年度活動報告会 (2020年12月9日)まとめ私家版 その5 に続く

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