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洋上風力発電が熱い?風力発電市場ってどうなってるの?

欧州を中心に風力発電の話題に注目が集まっています。風力発電市場について調べてみました。

なお、本ノートでは風力発電のシステムを製造・販売している会社を対象とし、風力発電機を発電手法の一つとして使って電力を販売する、Utility会社は見ていません。

風力発電市場概要

■市場

Grand View Research社によれば、風力発電市場は2019年に2020-2027年でCAGR 5.2%で伸びるとされています。Valuates社によれば、2020年現在の市場規模は$6948Mで2021-2026年でCAGR 4.7%で成長するとされています。

市場レポートにより、どこまでを調査の範囲に含めるかの定義が異なるだろうし、無料のイントロ情報だけでは、数値も一部しか提供されていないので、ざっくり大体年率5%くらいで成長する市場なのか、という感触だけを理解します。正直言って、それほど高い成長率ではない気もしますが、それでもソーラーパネルよりは高いように読めますが。

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On ShoreとOff Shoreという二つのカテゴリがあります。On Shoreは地上に設置するタイプ、Off Shoreは洋上に設置するタイプですね。飛行機に乗っていると海岸線から少し離れたところに突如風力発電機の群が現れることがあります。自分がよく記憶しているのは、イギリスからフランス間の、ドーバー海峡を渡るときや、デンマークのコペンハーゲン飛行場近辺で、巨大な風車の数々を見ることができるので、飛行機で海岸線を飛ぶときには忘れずに要チェックです!

このうちOff Shoreの方が市場規模は小さいですが、まだ手が付けられていない市場ということで今後の伸びが高いと予測されています。以下の調査によれば、Off Shoreは2018-2025年でCAGR 12.97%伸びると想定されています。

■地域別
地域的に見ると、約31%と中国が世界で最大のインストールベースを占めています。次に大きいのはアメリカとのこと。欧州が規模が大きいのかと思っていましたが、意外でした。

ただ欧州は、2020年11月に新型コロナ復興基金で、2050年までにOff Shoreの風力発電を25倍にするとコメントしており、こちらも注目を集めるきっかけとなっています。約11.3%のCAGRです。

また、インドも現在世界4位で、今後も風力発電への投資に積極的とされており、こちらも注目の市場かもしれません。

■プレイヤー
最終製品を作っているメーカー(OEM)と部品を作っているメーカーがあります。最終製品を作っているOEMは以下の会社のようです。

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これらの会社が主に、電力会社にシステムを納めるという事業形態になっています。システムの金額に加えて、保守サービス事業も収益源の一つになっています。

風力発電機は以下のコンポーネントで構成されています。この中で一番コストが比重が大きいのは、ブレードとされています。ブレードは専業メーカーがいます。

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個別企業紹介

■OEM
// Vestas (VWDRY/OTC) //

デンマークの風力発電システム専業メーカーVestas社がシェア18%で世界No.1です。売上は2019年$13.6B、純利益$788Mの規模。 Vestas社は、三菱重工と出資比率50%/50%でMHI Vestasという企業を保有しており、本体がOn Shore, MHI VestasがOff shore事業を手掛けています。

On Shore, Off Shoreとも市場で好ポジションにおり、欧州復興基金の補助金を受けやすい地の利もあると想定されますが、Siemens Gamesa Renewable EnergyやGEの猛追を受けておりシェアを低下させている状況です。

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// Siemens Gamesa Renewable Energy (GCTAY / OTC) //

Off Shoreに強みを持つようです。既存のOff Shoreインストレーション市場の70%はSGREによるインストレーションとのことで、圧倒的な強みを保有しています。

// GE //

言わずと知れた、総合重電メーカー、100%子会社のGE Wind Energyで風力発電事業を展開しています。中国を除いた国別市場で最大市場のアメリカでの事業に大きな強みを持ち、2019年のアメリカでのシェアは約50%に上るそうです。ただ、投資という側面では、風力発電単体での事業を行っている株式を購入できる会社はないので、風力発電というテーマでは購入の選択肢にはならなそうです。

// Nordex (NRDXF / OTC) //

ドイツでシェア一位のドイツ企業。競争を生き残るため、On Shoreのニッチ市場にフォーカス。事業の半分を占める欧州に加え、アメリカ、南米で事業を展開しています。ドイツ国内で新規に風力発電機を設置する土地不足が言われており、海外市場の開拓が課題のようです。

// Goldwind (2208/HKEX) //

中国の最大手メーカー。最大市場の中国で販売数量を稼いでいます。APAC地域で売上の100%を占め、欧米には進出していません。

■コンポーネント
TPI Composite(TPIC)社は、ブレードの専業メーカーで、OEMにブレードを供給しています。シェアは約18%とブレードでは最大手の1社になります。

契約としては、長期契約を顧客と結んでおり、2024年までに納める$5.4Bのブレードは受注済みです。これにより安定した経営が見込める状況です。

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Source : https://taiyoko-ch.com/knowledge/wind-power-generation.html

こうした背景をもとに今年の株価は好調です。

なお、これらの風力発電関連企業にまとめてETFで投資をする場合、First Trust Global Wind Energy ETF( FAN)というETFもあるようです。

雑感

風力発電の話題がちらほら出ていたので、どんな市場なのか概略をつかむために、確認してみました。市場はシェア1位のVestasをSiemens, GEが追いかける展開で動いており、徐々に大手のシェアが高まっているように見えます。ビジネスモデルはどこも大体同じで、システムの販売とサービス事業の二つが収益の柱です。

補助金の国策が風力発電の普及の大きなドライバーになるため、地域ごとの販売戦略が非常に重要になりそうです。会社によって、総合的にやる体力がないメーカーは、地域や、領域を特化して戦わざるを得ないような状況になっているようです。

また製品的にはOff Shoreの市場が今後伸びると想定されているので、SiemensなどOff Shoreに強い会社により多くのチャンスがあるようです。また顧客にとっては多額の投資になるため、ファイナンスの提案も欠かせないのでしょう。勝手な想像ですが、そういった部分は大手の方がノウハウが溜まっており、提案力があるのかもしれませんね。

個別企業の販売戦略を追いきれない場合は、コンポーネント企業への投資もありかもしれません。TPI Componentはそういった意味では、面白いかもしれません。

個別企業の財務状況を見ると、実は大手でも数百億円単位の赤字の企業もあり、この業界はそれほど儲かっているわけではないように見えます。また受注残など細かく見ないと、企業の価値は判断できないため、当期決算だけで短期では考えてはいけないビジネスです。個別企業の業績を見るのは、かなり大変そうです。

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