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株価YTD 203%上昇!Collectors Universeってどんな会社?(最新決算情報)


今回の決算で、市場シェア75%, 前年比52%の売上成長を遂げるCollectors Universeという会社がある。規模が小さいので目立たないが、着実に売上・利益を伸ばしている優良な企業で株価はYTDで203%の上昇をしている。一体どのような会社なのか、決算情報から会社を読み解いてみよう。

年初来の株価はこちら
比較対象
 赤:QQQ
 紫:ARKK
 黄色:QCLN

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事業概要

・1986年よりコイン認証サービスを提供する歴史のある企業
・従業員 約450名
・売上 $75M (2019)
・本社 カリフォルニア州 Santa Ana
・主要なビジネスは二つ。1)トレーディングカード(60%)、2)コイン(38%)の鑑定・認証サービス

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・2019年まではコインビジネスが最大事業だったが、2020年のトレーディングカード事業の急成長により、最大事業は逆転

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・認証エキスパート 71名を雇用(平均在籍12年)
・コイン認証サービスのプロセス例(郵送のケース)
 1)所有者が郵送
 2)コイン情報を独自のデータベースに登録
 3)内容を最低二名のスペシャリストによって評価、必要に応じて3人目の評価
 4)シニアエキスパートによって確認
 5)最終認証
 6)適切なパッケージングと認証を付与して所有者に戻す
・顧客は1)コイン・トレーディングカードディーラー、2)消費者の二つのセグメント。Top 5顧客で11%の売上を占める
・サービス単価イメージは以下(2019年実績)

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・現在独立機関にて認証されているコインやトレーディングカードは10%以下。また著名人のサインの認証も10%以下
・これまでにCollectors Universeは、41M coins(1986年より), 35M trading cards(1991年より)の認証実績あり
・市場シェア :Coin 50%以上、トレーディングカード75%以上(US国内)
・地域別:USA売上90%以上。海外は仏、日、香港、中国で約10%。
・市場の活況は以下で決まると認識
 1)景気
 2)株式・債券市場のパフォーマンス、USドル、貴金属市場動向
 3)コインディーラーのマーケティング活動
 4)自社のサービス価格
 5)金価格動向

決算情報

売上 : $30.8M (vs PY $20,2M, 52%増) *史上最高売上
 Trading Cards / Autography (PSA+PSA/DNA)  :
  -$18.6M (60% of TTL business, vs PY 130%増)

  -1.25M vs 775K items(2020 Q2と比較して)の出荷
  -ASP 4%改善
  -引き続き同セグメントは高い需要
 Coin (PSGS) :
  -11.5M (38% of TTL business) 4%成長
 
 -展示会のキャンセルが売上減に影響したものの、個別の小規模集でリカバリー
  -中国コインビジネスが20%成長
営業利益 : $7.8M (vs PY $4.6M, 70%増) *営業利益率 25%
 今Quarterはリクルート費用による押上げで10%程度のExpense高
粗利率63% (vs PY 60%, 3%増)
  -ASP Increase PSA/DNA
SGA :4M増加もこのうち3.1Mは一時費用との説明(訴訟対策、リクルート費用等)。マーケティングExpenseはTrade Show取りやめにつき削減

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雑感

・市場はニッチだが、USコイン50%, トレーディングカード75%という圧倒的シェアを確立
・サービスの差異化の源泉は、ブランド。認証を裏付ける認証スペシャリスト、認証用データベース
・守りは鉄壁、非常に固い会社との印象
・各事業における今後の焦点は以下と見る。特に黄色が重要項目

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売上面
コインビジネスは、対面ビジネス色が強い事業。前Quarterではコロナの影響で前年割れしていたが、販売手法の改善により今QuarterはUSでも前年比プラス成長に改善。大きな成長は期待できないが(USは特に)、キャッシュカウ事業

・トレーディングカードビジネスは、コロナ特需でUSのカード認証需要が高まっているため、その追い風を受け成長

・今後の成長戦略は、既にUSではシェアが頭打ちなので、1)US国内市場規模が拡大する、2)他地域に売って出る、3)他の事業を育てる、必要がある

・1)US市場規模の拡大は、新規ユーザー・アイテムの市場への流入と既存ユーザーのアイテム認証率向上が必要。現在コレクターズアイテムの10%が認証を利用しているとのことだが、この認証率を上げる必要あり。市場の拡大の見通しについては、特にEarnings callで言及はなし。市場データも特になし。コロナ蔓延の継続、資産バブルの形成を考慮するならば新規ユーザーの市場への流入と取引の活発化は引き続き見込むことができるか。

・2)については、中国市場が最大の焦点。2019年度は中国市場売上10%減だったが、今Quarterは20% Growthを達成。2019年に販売チャネルとの独占契約を打ち切り、ビジネス再構築をしている最中独占契約前の状態まで売上は戻ってきており、On Trackか。(China Q1 : 20% growth 1.6M vs 1.3M)

・3)については、サブスクリプションサービスや、コイン取引のマーケットプレイス事業なども行っているが、それらの売上寄与は2%と現段階では無視できるレベル。かつそれほど大きな成長を期待している様子でもない。基本は希少資源の認証で行うビジネスなので、認証対象が継続的に急拡大するシナリオは見込みづらいのでは?圧倒的なシェアを確立しているので、売上・利益が改善している今のうちにサブスクリプションサービスモデルへの転換などをより積極的に取り組んでほしいところか。Adobeのように。戦略を描き、実行する人材が外部から必要か。

・次のQuarterはSeasonabilityで最も売り上げの低いQuarterだが、過去最高の受注残でVisibilityはよい

利益面
・コインビジネスはFace to faceのトレードショーに依存している割合が多く、現地で単価の高い認証サービスを提供しているため、利益への貢献が大きい。安定的な売上をキープできるオペレーションを提供できるかがポイントだが、こちらはインプリされたとの理解なので安定的に利益貢献できそう

・成長事業だが低マージンのトレーディングカード事業の利益構造改善が大きなポイント

・今回の決算で、トレーディング事業の大幅伸長にもかかわらず、GP率の改善がみられている。トレーディングカードビジネスでの利益率の大幅改善が想定される。Fast Turn Aroundの高単価サービス比率が拡大したとのことで、これはとても良い兆候

・今QuarterでSGA比率も低減しており、Operation Efficiencyは高まっていると読むこともできるが、人が足りなくて、受注残を積み上げているため、現在採用強化中なので、SGA比率低減はある意味当然といえば当然。人の採用が終わった次のQuarterでどのくらいになるのか注目。

まとめ
成長事業であるUS Trading Cards/Autography事業の市場規模拡大がどのくらいになるのかが重要。会社からの見通しはないが、Covidが長引く+資産バブル的な展開が続くと市場の成長が引き続き続くのではないかと想定できる。どのくらいの成長率が予想されるかはデータが無く残念ながらわからない。

中国に関しては、2019年度は10%減という状況だったが、それまでExclusive契約をしていたBank channelとの契約を打ち切った一時的な影響のよう。今Quarterの中国事業はTravel restrictionで鑑定士を送り込めない中、前年比20%増ということで、以前のレベルから10%程度売り上げを伸ばしている状況。現地化を進めており、これがうまくいけば新たな成長ドライバーとして化ける可能性は十分と見る。

また利益率改善については、会社説明にある、人員投入による単価の高いFast turn aroundサービスの拡充、Robotics / AIの導入でスループット改善(と会社は言っているものの具体的には何かはよくわからない)という状況を考えると、必要な手立ては打たれているとの印象。

総じて、全体的には非常に手堅くビジネスを行っている印象で、好印象。だが既に高いマーケットシェアで希少資源を対象とする以上、資産バブルがはじけたら一気にビジネス縮小することが予見される。よって、短期的には目先のUS Trading Card事業と中国事業の成長に邁進している間に、サブスクリプションサービスへの転換など事業構造の転換を成し遂げる必要がありそう。そうすることができたら、長期的な投資も可能か。

参考情報
https://www.gurufocus.com/news/1029744/collectors-universe-an-easytounderstand-intangible-assets-business

https://investors.collectors.com/static-files/8f59a4a9-cbc5-4eb2-b683-d5b68479e306


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