森友学園問題と維新④異例だらけの小学校設置認可申請
このシリーズも第4回目となった。またも期間が開いたことをお詫びします。今回は本筋と言える森友学園小学校設置認可における大阪府・近畿財務局・維新を始めとした政治家の関わりについて書くことにする。(肩書は当時のもの)
籠池氏の執念
2014年森友学園は小学校設置認可の申請書を大阪府に提出した。教育界の常識では申請書を受け付けられた時点で、認可はセットだという。籠池氏によると申請書類の書き方など大阪府私学大学課(以下私学課とする)が丁寧に教えてくれたらしい。
しかし、森友学園は全てが常識外であった。申請基準の改変、国有地購入ではなく定期借地件による小学校建設等、行政の枠を超えた異例の認可申請、土地取引が行われたのである。
ここに財務省開示資料を記する。森友学園と財務省(主に近畿財務局対応)との交渉記録である。申請前の記録である。平成25年(2013年)10月30日の私学課とのやり取りが記されている。
私学課が森友学園側から小学校建設予定地の国有地を借地として借り受けるとした森友学園側の主張を疑問視する連絡である。
この時点では、大阪府も近畿財務局もこの森友学園、籠池氏のことを失礼ながら胡散臭いと思っていたのでは無いだろうか。赤線が引かれている所に注目していただきたい。近畿財務局、大阪府双方が森友学園との対応に苦慮していたことが窺える。
森友学園側も大阪府、近畿財務局の冷淡な対応に様々な政治家に陳情しつつ認可に向けて動き続けた。
特に象徴的なのは鴻池元建設大臣である。鴻池氏は事件発覚後、会見を籠池氏から財務省への取次を頼まれたと明かし、財務省の資料から複数回事務所経由で問い合わせられた事が明らかになる。コンニャク会見と言われたのは記憶に新しいだろう。ここから徐々に近畿財務局の対応が変わってくるのである。
ここで読者の方はたかが問い合わせただけ?と思う方がいると思う。想像していただこう。自分が係長・課長だとして、部長、局長を超えた現役政治家に問合せをされて、普通に対応できるだろうか?少なくとも、問い合わせをさせた籠池氏という人物を要警戒するのでは無いだろうか?
小学校設置認可と維新
ここで、小学校設置認可に関わった維新関係者をまとめておく。
①東とおる大阪府議会議員(維新)
小学校設置認可基準改正に関する陳情に関わった。
②平沼赳夫衆議院議員(維新)
2013年予算委員会で塚本幼稚園に言及。教育勅語や論語を素読させる教育内容を絶賛。
③畠成章大阪府議会議員(自民)2014年に死去
森友学園理事。小学校設置認可申請後、なかなか進まない府の動きに籠池氏が畠氏に陳情。松井良夫元大阪府議会議員(松井知事の父)と親しい付き合いがあった事から、松井知事に話を進めるよう進言した。(本人は否定)
④橋下徹大阪府知事(維新)
籠池氏が小学校設置認可申請基準改正を陳情した時の知事
⑤松井一郎大阪府知事(維新)
小学校設置認可申請基準改正時(2012年4月)の知事。2015年1月の私学審議会で認可相当の決定。
ここで注目したいのは松井知事の動きである。
「2013年から2015年までは私学課との打ち合わせは多くても月3回程度だったのに、14年10月だけは、なぜか7回も行われていることが明らかになっています。そして、瑞穂の國記念小学院の設置認可についての審査は2014年12月18日の私学審議会に諮られることになりましたが、その2日前には2時間にわたって協議があったそうです。」(籠池泰典・赤澤竜也共著 国策不捜査 文藝春秋社より引用)
画像は松井知事2014年10月の日程である。10月20日は1日に2回も打ち合わせを行っている。何をそんなに打ち合わせをすることがあったのだろうか?
消された資料
事件発覚後、この打ち合わせの資料を情報公開請求した方がいたが、いずれも破棄されたため不存在の回答だったという。しかし、近畿財務局の資料の中で大阪府私学課とのやり取りは公文書として残っている。一方は公文書が残され一方が破棄される。実に不可解である。
私も大阪府に開示請求で資料公開を求めたが、廃棄したとの一点張りで不存在通知を出すだけだ。大阪府が「事件発覚後」に発表した資料は当時の関係者に聞き取りしたことをごく簡単にまとめた資料のみ。
先に示した資料にあった2013年10月30日の記録があるが、簡単な記述のみ。そして、2015年11月19日から2016年2月9日の間、「この間相互の状況について情報交換日数回数は記録なし」となる。小学校設置認可に向けた一番重要な期間の記録が都合よく無いとは…意図的に廃棄したと思わざるを得ない。
因みにこの間の大阪府と近畿財務局のやり取りは対面電話合わせて13回。財務省の地方機関と大阪府の課がこれだけ頻繁にやり取りすることを見てもいかに特殊な案件だったのか。
2回の私学審議会
ではこの間に何があったのか。小学校認可を審査する私学審議会である。瑞穂の國記念小学院の認可申請を審査する審議会は2014年12月18日に行われた。この時の結果は「保留」
申請を受理されれば事実上認可されるというこれまでの常識からすると、驚くべき結果であった。審議会後も近畿財務局と私学課の間でやり取りしていたことが資料からもわかる。
12月18日の審議会で認可保留となったのは、森友学園、近畿財務局、大阪府の三者とっては意外な結果となった。それだけ森友学園の設置計画が危うい物だった証左といえるだろう。逆に言えば危うい計画でも認可に持っていきたかった近畿財務局と大阪府の強い意志が窺える。
誰の思惑だったのか。そして、極めて異例の臨時審議会が2015年1月に行なわれることになる。異例だらけの小学校認可。次回は小学校認可に至る異例の経緯と土地取引に関して書きたいと思う。