2023/10/20 市長の話、誰かが開くために活動を綴じること

12:30 北本着

今日は13:30から役所で北本市長と面会の予定がある。先月まちびらきプロジェクトの成果発表会で「北本ビタミン」の関係資料や映画のパンフなどを展示していたのだが、それをみた市長が興味を持ってくれたらしく(その後「北本ビタミン B」もみてくれたらしい)、お話の機会をもらった。
少し早めに着いたので喫茶ケルンでお昼をたべつつ、論文を進める。ケルンのオーナーに「今日は何するの?」と聞かれたので「市長と会います」と答える。「緊張してる?」と聞かれる。
緊張しているのか微妙なところだが、市長が「北本ビタミン B」をどう受け取ったのかはとても興味がある。雑談をしつつ論文を進める。

13:20 市役所へ

荷物を持って市長の応接室へ。同席してくださるDさん、市長公室の方々が待ってくれていた。とても心強い。
市長に挨拶をして席に着く。市長と顔を合わせるのは今回が初めて。思ったより細身のおじさんだった。「今日はわざわざありがとう」と話す市長の口元、左奥歯に銀歯が三本並んでいる。
「当時から北本ビタミンは知ってらっしゃったんですよね」と市長公室の方が投げかけると「石津さんのね、当時は政治的にあれだったからね~」と口ごもっていた。政治的立場があって、「北本ビタミン」や「顔プロジェクト」の内容にまで関心が向いていなかったのだろう。往々にしてあることだ。
「会場がこちらの判断で変更になってしまったみたいだね。私の耳まで届いていたら即OKにするんだけど」と市長が話す。やはり市長に届く前に判断が下されていたようだ。これも往々にしてあること。
会場変更の件があって以降、市役所の方々の話を聞く機会が増え、個人でなく組織としての体裁、個人の身をまもるための判断など、役所で働くことについて少し理解できるようになった。そのためか、会場変更の件も今は腹が立たない。
先月の『現代思想』の対談で、社会学分野の分野でエスノグラフィーを執筆する3人の学者が、知れば知るほど良い悪いと言い切ることが難しくなって結果的に保守的に見えてるような態度になってしまうという悩みが書かれていたが、まさにそういう感じだ(石岡丈昇、岸政彦、打越正行「距離・時間・ディテール 生活史/エスノグラフィーを書き、読む」『現代思想』9月号、青土社、2023年9月1日)。知れば知るほど白黒はっきりつかない、グレーのグラデーションが細かくなっていく。

「映画にもあったけど10年早かったというかね、今の成熟した北本ならできることがあるかも」と市長が語る。市長は最近八戸の文化施設「はっち」を訪問したことや、平田オリザ『下り坂をそろそろと下る』に影響を受け、すでにあるものをいつくしむ豊岡のようなまちづくりを目指いしているそうだ。昨日は北本にアトリエをおく現代アートチーム目のアテンドで、彼らがディレクターを務めるさいたま国際芸術祭を訪問したと言う。
そして最近は、市内にある使われなくなった公共施設を取り壊すのではなく、現代アートチーム目をはじめとしたアートの視点から活用方法を見いだせないか、そうした枠組みを作れないか模索中だという。コンセプトが2010年の「北本ビタミン」で発表された「おもしろ不動産」のそれじゃん、と思う。10年前、北本市内の空き家や空き地を物件と捉え、おもしろいことを育てるためのおもしろ不動産だと銘打ったwah、荒神さん、キタミン・ラボ舎のメンバーに、今やっと理解されつつあるよ!と伝えたい。

今後目の方々とも何かできたらいいんだけど、と言った話を聞いていると、Dさんが「アーティストと市長の間にたって、お互いの言葉や考えを翻訳する人が必要ですよ」と提案。「北本ビタミン」の時はそこが上手く機能していなかったのだと、だから次があるならそこをきちんと立てた方がよいという話だった。
北本は小さい市なので、アーツカウンシルみたいな組織が必要なのか、アートマネージャー個人でよいのかわからないが、アートと社会のあいだに立つ人がいれば、文化を取り巻く状況は変わってくるだろうな。
市長は「ビタミンは大事だから」と繰り返していたのが印象的だった。

執筆中の修論についても聞かれ、現段階の構成と結論について簡単に話す。映像制作を通してみえた「北本ビタミン」とは何だったのか、そして「北本ビタミン B」がどういう変化を私と北本にもたらしたのかを考察すること、そして「北本ビタミン」の映画をつくることはその活動を閉じることではなく、活動を綴じることなのだ、次に誰かが開けるように、という結論にしようと考えている。
この「活動を閉じるのではなく綴じる、誰かが開くために」という言葉は阪神淡路大震災で被災した方々の手記を集めて出版している高森順子さんの言葉だ。素敵な言葉なので、おお、と小さな歓声がわく。

記念写真を撮って解散。市長は次の予定へ。同席してくださった方々にお礼をして、私も次の予定へ。

14:30 総務課

2010年ごろにキタミンラボ舎に対して提出された住民監査請求の記録をみるため、総務課を尋ねる。要件を伝えると担当の方が窓口に来てくださり、その場で資料を確認してくださる。「なんでまた…」と聞かれたので「北本ビタミン」について調査し論文を執筆していると伝える。過去の監査請求資料を探しに来る人はあまりいないようで、不慣れな感じだったが親切に対応してくださる。情報開示請求の申請書を記入し、提出した。審査が通れば来週にも資料の複写ができるそうだ。

15:30 中庭へ

歩いて団地へ向かう。ジャズ喫茶中庭が開いていたので入る。中ではマスコット人形を作る会が開かれていた。団地の近くに住むおばさまと、中庭のオーナーが小さな人形を作っていたので私も参加することに。腸柄のボタンがあったので、それをつかって「はらわたくん」をつくった。
週末に団地祭があるからと、祭りの屋台で使える100円引きチケットをもらう。

18:00 

post においてある「北本ビタミン」関係の資料を整理して帰る。

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