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逢いたい / 音速ライン

就職前にしていたアルバイト先に、好きになった女の子がいた。

1歳差とはいえ、後にも先にも、年上を好きになったのはその1回限りだったように思う。独特の落ち着きと少女のような可憐さを併せ持った人だった。
いや今は妻(予定)が一番かわいいよ。当時の話をしてんのよ。

私は3年制の専門学校生、彼女は4年制の大学生だったから、卒業は同年。私が就職に伴ってバイトをやめる一方で、彼女はたしか1年くらい留まった後で、別の店でバイトを始めた。
私は彼女の顔が見たくて、仕事終わりに店に顔を出したりしていた。

2006年くらいだったかな。
私は仕事で大きなプロジェクトがひと段落して、ちょうど連休を取りやすいタイミングだったので、有休を消化してひとりで旅行に出かけた。
茨城・栃木・群馬と走り、ロマンチック街道を抜けて再び群馬から栃木・日光を目指していた時、不意にカーステレオから流れたのがこの曲だった。

逢いたいよ ほんとに できればなんだけど
曖昧にしてたそんな僕の気持ちが 答えをひどく鈍らせてるんだ

このサビの一節を聴いた時の衝撃といったらなかった。

歌詞に共感するなんてことは滅多にない人生の中で、これほどまでにエモさで頭を殴られたような経験はなかった。いやあるのかもしれないけど、ぱっと出てこない。じゃあない事にしとけよ。うんごめん。

逢いたいなぁ やっぱり 自分にウソはつけないから
明日には君に逢いに行くからね

この曲を聴いたのはそれが初めてではない。前からいい曲だとは思ってたんだけど、このときロマンチック街道から見えた春を迎えたばかりの風景を、あの人と見たいと思った。
会って想いを伝えなければならないと思った。

君はどんなふうに 僕を見てくれるのかな

それは私も気になった。

さっそくお土産を買い、後日、お土産を渡すという口実で近所に呼び出した。彼女が乗ってきたゴツいクロカンに初見で面くらいながらも、お土産を渡し、少しだけ話して、帰してしまった。結局告白はできなかった。

ので、間もなくメールで告白したのだが、あっさり振られてしまった。
そりゃあそうだと今は思う。

歌には人を動かす力があるなんて、よく言うけれど。
あながち本当にあるんだなっていう、若い頃の思い出です。

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