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Summer Planet No.1 / TWO-MIX


いい歳の中年になっても、男ってのは変なこだわりを持ちたがる。それが中学生の頃ともなれば、一番こじらせていた頃だ。この私も例外ではなく、それはもうこじらせていた。今で言う中二病ってやつだ。邪気眼的なのじゃなくて、本来的な意味で。

具体的に言うと、昔の音楽ばかりを聴いて今の音楽や流行を斜に構えて批判してた。やれ電子音は味気ないだの、ハードロックはうるせえだの。
そう言いながらも20年くらい経った今、ちゃんと当時のシーンを実感込みで思い出せるんだから、まんざらでもなかったんだろうなとは思うが、その話は別の機会に。

中1のときに「新機動戦記ガンダムW」が始まった。前年の「機動武闘伝Gガンダム」でそれはもう相当なショックを受け、もう今のガンダムはガンダムじゃない、あんなものを俺は認めないと塞ぎ込んだ翌年に出てきたこの作品はもれなく当時の私の逆鱗に触れた。
「なんだこれは。美少年ものならサムライトルーパーでやれ」
当時はそんなことを思っていたが、考えてみるとその枠は当時すでに「超者ライディーン」という作品が埋めていたし、私はそっちでもブチキレていた。本当に今思うとキレてばっかで忙しい中学生だった。

そんなガンダムWの曲を歌っていたのが「TWO-MIX」だ。

気に入らないと思うきっかけはもちろん、ガンダムWの曲を歌ってたからなんだろうが、それでは理屈が成り立たないので、ここで取ってつけたような音楽批評が入った。
『何だあの音は。音色を増やしてビビッドに鳴らせばいいってもんじゃないだろ。しかもどの曲を聴いても同じにしか聴こえない。こんなものが流行るのだから今の音楽シーンはもうダメだ』─────。田舎の中学生男子が「歌の大辞テン!」を見ながらそんなことを考えていた。
どうだい、こじらせてただろう。俺、書いてて自分でも嫌になってきたもん。

しかしながら、そんなヘイトはあるきっかけで一気に瓦解する。

事の起こりは中3の文化祭。
すでに中2の文化祭でTM Networkのコピーバンドを聴いて以来すっかり80年代びいきになり、音楽面での偏屈ぶりもさらに磨きが掛かっていたが、今年の文化祭でも何か変わるかもしれないと、そう思っていた。

そんな中、3人の同級生女子が体育館のステージで演ったのが、TWO-MIXの「Summer Planet No.1」だ。

それを聴いて間もなく私はレンタルビデオ店に駆け込み、このシングルを中古で手に入れて、家で何度も聴き返した。あれだけ毛嫌いしていたTWO-MIXの曲だ。いったい何があったのか─────もう大体察して頂いているかと思うが、演奏した女子の1人は、当時好きな女の子だったのだ。

地味だけどかわいい。わりとよく話す。親の実家が同じ地域。修学旅行でオタク連中と横浜のアニメイトに行ったら、あちらも別グループで来ていて偶然出くわした。
今にして思うと「それだけ?」だけど、学生時代の私は女性の免疫が一切なく、隣の席の女子が話しかけてきただけで「この子俺の事好きなんじゃね?」と勘違いするくらいには痛々しい感じだったのだ。

結局のところ、この後「俺もTWO-MIX聴いてるよ!」などと切り出す勇気もなく、間もなく卒業で離れ離れになったことでこの恋は終わり。
10年後、ひょんなことから全然別の知り合い経由で再開するんだけど、その時既に相手は結婚を間近にしていたし、何よりこちらを一切覚えていない状態だったのでした。

ちゃんちゃん。

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