生成AIの活用と言語の違いについて

現代のビジネスにおいて、生成AIはもはや欠かせない存在です。特に、グローバルな市場での競争力を維持し、さらに向上させるためには、AIの導入とその効果的な活用が必要不可欠です。しかし、ここで一つ、大きな課題に直面します。それは「言語の違い」です。今回は、生成AIの成長における言語の役割と、企業が直面する潜在的なリスクについてお話しします。

生成AIの活用でよかった経験

私が所属するグローバル戦略部門では、海外との会議が多く、生成AIの活用に非常に満足しています。特に、Copilotの機能は素晴らしく、英語ネイティブの同僚も大絶賛しています。なぜなら、グローバルのダイレクタークラスであっても、会議の中で整理された話をするわけではなく、時々何を言っているのか分からなくなるからです。

例えば、ある重要な会議で、話の内容が複雑で理解が追いつかない場面がありました。Copilotがその場で論点を整理し、次に何を質問すべきかを教えてくれたおかげで、会議の進行がスムーズになり、重要なポイントを見逃すことなく議論を深めることができました。オンラインミーティングでは、分からないときにすぐに質問するのが難しい場合も多いです。そんな時にCopilotが役立ちます。Copilotは会議の論点を整理し、何を質問・確認すべきかについてアドバイスをしてくれるため、会議の質が飛躍的に向上します。

さらに、会議の後に生成される要約やアクションアイテムのリストも非常に有用です。例えば、長時間にわたる会議の内容を後から確認する際に、重要なポイントが簡潔にまとめられているため、復習が容易になりました。これにより、会議後のフォローアップ作業が効率的になり、全体の生産性が向上しました。

もう一つの事例として、私たちは出席できなかった会議について、録画とトランスクリプトの保存を行い、後でCopilotに要約させることをしています。これにより、どういう議論の結果、何が決まったのかを容易に引き出すことができました。例えば、あるプロジェクトの進捗会議に参加できなかったメンバーが後で要約を確認することで、迅速に重要な決定事項や次のステップを把握でき、プロジェクトの進行をスムーズに保つことができました。

ここで、人間が作成した議事録との比較を考えてみましょう。人間が作成した議事録は、決定事項をフォローするのがやっとで、議事録を書くスキルを育成するのにも時間が掛かります。もちろん、Copilotが書いた議事録も人間同様に完璧ではありません。しかし、会議に参加した人間や会議の動画をサラッと見た人間がCopilotの書く議事録やCopilotとコミュニケーションしながら議事録を書くと格段に品質が高まります。

従来の会議では、なぜその決定がなされたのか?〇〇な点は議論されなかったのか?といった様々な疑問がわき、CEOが決定した事項についても手戻りが発生していました。CEOが決定して進めることになったことも、その背景や理屈、魂が伝わっていないがために現場からの反発があり、結局1年くらい進まないことは多々ありました。

しかし、議論の背景をCopilotにより抽出できるようになると違います。現場の人が感じている違和感についても議論されていることが明確になり、現場の人が感じているリスクも踏まえて方向づけ、意思決定がなされたことがわかれば、その点については論点になりません。後での手戻りが発生しにくくなります。デメリットはわかっていても、この方向で進めたいとかんがえた、なぜなら〇〇だからだ。という形になると納得感がより深まります。

これらは議事録の当たり前なのかもしれませんが、それは全くできていませんでした。それは議事録を書くコストが高かったためです。質の高い議事録を書くには質の高い議事録のライターを育てて会議に参加させる必要があります。質の高い議事録のライターを育成するには時間もかかるし、育成スキルをそもそも役員自身が持っていません。そうしたスキルは組織のいろいろなところに偏在、あるいはほとんど存在していません。

しかし、Copilotは違います。育成の時間はほぼ不要です。活用のためのコツを習得する時間は必要ですが、それでもスキル習得のための時間と比べると圧倒的に短く済みます。

生成AIに対する周囲の評判

一方で、他部門や他社の友人からは、生成AIに対する評価があまり芳しくありません。弊社のIT部門は、今年トライアルとしてCopilotを導入していましたが、そのIT担当者自身のCopilotに対する評価が低く、私たちが非常に満足しているとの主張をしたものの、その声は聞いてもらえず、トライアルを一旦終了することとなりました。

例えば、日本国内の会議でCopilotを活用した際、結果は散々なものでした。話し方の癖や日本語というローカル言語の特性、上意下達の文化など、多くのハードルがありました。具体的には、あるプロジェクト会議で、参加者が専門用語や業界特有の言葉を多用したため、AIが正確に内容を把握できず、要約も不完全なものでした。さらに、日本語のイントネーションや文法の複雑さが原因で、AIが発言内容を正確に理解するのが難しい場面もありました。

また、他社の友人からも同様のフィードバックがありました。彼らの企業でも生成AIを試験的に導入しましたが、日本語の会議では効果が発揮されず、結局使用を見送ることになったそうです。このような状況は、言語や文化の違いが生成AIのパフォーマンスに大きく影響することを示しています。

日本企業のAI活用に必要な視点

これまでの経験とフィードバックを踏まえると、日本国内だけでビジネスを展開する企業であっても、生成AIを最大限に活用するためには、以下の視点が必要です。

  1. オープンでフラットなコミュニケーションの推進: 上意下達の文化を見直し、意見交換が活発に行われる環境を整えること。私たちの部門では、全員が自由に意見を出し合える環境を作ることで、Copilotが生成する要約やアクションアイテムがより的確で有用なものとなっています。

  2. グローバル言語の導入: ビジネス上の言語を英語などのグローバル言語にシフトし、AIが学習しやすい環境を作ること。例えば、グローバル戦略部門では英語を主なコミュニケーション言語として使用することで、生成AIの性能を最大限に引き出すことができました。

  3. ボイストレーニングによる滑舌の改善の提案: 効果的なコミュニケーションを促進するために、滑舌を改善するためのボイストレーニングの導入を検討すること。例えば、Copilotが日本語を正確に理解できなかった経験を踏まえ、話し方の改善に取り組むことで、AIが発言をより正確に認識しやすくなるでしょう。

ローカルの立ち遅れと生成AIの活用の関係

私が以前、東南アジアの発展途上国に住んでいた時のことです。その地域では、時間を守るという概念が非常に希薄でした。何か仕事やお願い事をしても、その期待した納期までに解決されることはほとんどありませんでした。約束の時間に遅れてくるのは当たり前で、納期が過ぎても進展がない場合、指摘しても「何がおかしいの?私は言われたことをやりましたよ」と返される始末でした。このような経験を通じて、グローバルスタンダードとローカルな習慣の間には大きなギャップがあることを痛感しました。

この状況は、日本企業が生成AIを活用する際の課題と非常に似ています。日本語というローカルな言語を使用しているため、生成AIの恩恵を十分に受けられず、その結果、日本の製品やサービスの品質が低下するリスクがあります。グローバル企業が英語を公用語として活用し、生成AIをフルに活用しているのと比較すると、その差は歴然です。

例えば、海外のグローバル企業では、英語を公用語とし、生成AIをフル活用しているところが多くあります。その結果、彼らは効率的かつ高品質なサービスを提供しています。一方、日本の企業が同じようなアプローチを取らない場合、競争力で大きく遅れを取る可能性があります。

まとめ

生成AIの活用において、言語の違いは大きな影響を及ぼします。特に、グローバル言語である英語の導入は、AIの性能を引き出すために重要な要素です。また、滑舌を改善するためのボイストレーニングは、AIが話者の発言を正確に認識しやすくするための重要な手段として提案されています。日本の企業が生成AIを効果的に活用し、競争力を維持するためには、言語やコミュニケーションの在り方を見直し、よりグローバルな視点を持つことが求められます。AIの進化に合わせて、私たち自身も変化することが重要です。

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