#316 1週間経っても忘れられないこと

一瞬の出来事だった。

一週間経った今でも忘れることができない。

きっとこれからも一生忘れることはない、と思う。

私は高校3年生。夏休み中だが、家では勉強に集中できないため、毎日学校に来て勉強をしている。受験生の私の束の間の楽しみが友達と話すことだ。

友達と言っても学年は一つ下で、去年まで同じ部活で活動していた。私が引退してからも（引退してからより一層？）仲良くしてくれている。

そんな彼女は私と違って、キラキラJKである。

毎日メイクをして、香水をつけてくる。男女関係なく友達が多く、いろんな人から人気だ。感情の起伏が激しくて、いつも笑ったり泣いたり、忙しい。でも、彼女なりにいろいろなことを考えていて、悩みも多い。かまってあげたくなるような、みんなの妹的存在。

午前中の勉強を終え、いつものように部活を覗きに行く。ちょうど、部活のみんなも昼休憩だ。大会を直前に控えたみんなも、休憩の時間にはわちゃわちゃしている。

彼女を見つけ、話しかける。

「おつかれー」

「おつかれさまでーす」

内容のない会話をしていると急に彼女が「先輩、好き！」と言ってきた。

そして、私の手を取り、

手の甲に、自分の唇をくっつけて、離した。

彼女は笑っている。周りにいた子も笑っている。

私は驚きを隠せない。

彼女は何事もなかったように会話を続けようとする。

私は混乱の中、なんとか会話に参加していた（はず）。

事の前後は忘れてしまったが、彼女が私の手の甲にキスをしたことは、今でも忘れられない。

彼女と別れた後も私は考えをめぐらす。
彼女は私の手の甲にキスをした。一瞬のこと過ぎて、上手く言葉に出来ないけれど、そのときの私の衝撃はきっと彼女は気づいていない。

これが私のファーストキス…？
（いや唇と唇じゃないんだから、ファーストキスではないでしょ、とその場にいた別の子から後日言われた）

びっくりだ。

まさかあんなことをされるなんて。彼女の行動だけでなく、周りにいた子がそれほど驚いていなかったことも驚きだ。

キラキラJKのあいさつはキスなのか？

いやいや、そんなはずはない。

彼女はいったい何を考えていたんだろう。彼女の恋愛対象が男性であることは前から知っているし、私のことも先輩以上友達未満くらいとしか思っていなさそうなのに…

分からない。キラキラJKの頭の中を覗いてみたいものだ。