前途多難という話

だれにも伝わらないようなツイートをしてしまう。たとえば。

これはMETEORというラッパーの曲「4800日後」から採ったものだ。採った、と言ってもサビに特徴的な語尾を抜き出しただけで。

周りが変化したらそれに合わせ変化してく
俺は変じゃないよね
だってさぁ やっぱさぁ
うまくやりてぇじゃんかさぁ
METEOR『DIAMOND』(2007)

このパッセージは反復され、二度目は二行目が「君も変じゃないしね」に変わる。なんだか環境に流される自分たちを簡単に擁護しているようだ。

しかし、それまでの歌詞はもっと熱いものだ。「俺とお前」は夢を追いかけていて、互いをリスペクトしている。「ばあさん」が「数珠」を握るように、自分は「マイク」を握って舞台に立つ。ユーモアのある比喩を交えながらも、歌詞の基調は分かりやすく、力強い。

いや、ぜんぶ分かりやすいのだ。サビの直前、歌詞は「ガキできてもアーティストでいたいけど/先のことはわからないです」とにわかに夢を否定するように語って、先のサビへと繋がっていく。

僕は曲調を表現する言葉を知らないが、随分と大人しいものだ。歌詞を先導するものではなく、バックグラウンドに終始してやわらかなリズムが繰り返されているだけのように思える。

「俺」はつねに不安定だ。「マイク」で生計を立ててはいるが、それはいつでも破綻しかねない綱渡りで、だからこそ「先のことはわからないです」と呟かざるをえない。夢を追う自分と「うまくやりてぇ」自分。このアンビバレンスな感情は弱さだろうが、それは聞き手に強い共感を呼び起こす。

なにもかも蹴っ飛ばして夢を語る歌がある。享楽にどっぷり浸る歌がある。この歌はどちらにも傾かない。一人の生活者として、読者のとなりで夢を語っているのだ。いつか辞めちゃうかもしれないな、なんてはにかみながら、「俺」は目の前で歌っている。僕はそれが好きだ。


曲の話はこの辺りにして、僕のことを考えたい。僕はいわゆる実学からかけ離れた場所にいる。あえて言えば、この勉強が一銭にもならない可能性がある。それに、僕はまだ自分の言葉を(とても小さな世界にしか)届けられていない。

世界がどうなるかもわからない。AIとか、戦争とか、何か大きなものが影を広げている。彼らの足は見えないけれど、足音は聞こえてきて。僕は、僕らはどうなるんだろうか。少なくとも、僕はこちら側にいて、全くわからない。

それでも僕は、まだ数年間、好きなことばかり学んでいられる。それは何にもならないかもしれない。でも、そうなったときは〝うまくやる〟しかないのだ。得たものが無くなってしまうわけじゃない。そのときはちょっとはにかんで、「でも、楽しめたし、楽しめてるから」と言えたら最高だと思う。

前途多難だ。本当にぴったりはまった言葉だ。それでも僕は僕のままだろうし、僕は僕を全力で楽しませなきゃいけない。好きな勉強が好きにできる、なんて幸せなことか。楽しもう。

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