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断片詩篇



あんまり月が冷たく青く光るものですから、
夜空はすっかり宇宙が透けた群青いろで、
暖かな家の光も、がやがやとした街の灯もとどかないのです。
そのそらに一等星や二等星の、赤いのや青いのがぱらぱらと撒いてあって、
しきりにまたたいていますから、
明日は風が強く吹くことでしょう。




春の蠢きの中に立つと、人間に戻るのが嫌になる。
境界の季節は、律儀に毎年やってくる。
あの蒲公英にとまる、ちいさな蝶でいられたなら、どんなに良かったことだろうか!




夢のうちに、誰かに嗤われた覚えがある。




心はあの遥かなる山嶽に
(或いは花と月明りに)

魂は美しい虚構に
(或いは大いなる異邦のものに)

信念は真実の複合に

情熱は文字と文字の余白に

身体のすべては土と泥に

何もかも捧げてしまったものですから、もう私の手元には、
ほとんど残っておりません。




外に出て、空を見上げたとき、確かにそこは昼と夜の狭間であった。
もう一度顔を上げたときには、まぎれもない夜になっていた。

私は今日、誰が何と言おうとも、
夜が世界を覆う瞬間をはっきりと見たのである。

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