夢の終わりに

事切れた友の亡骸と、瓦礫の山。
夥しい死を前に、彼の思考は不思議と澄み渡っていた。

「終わりだな、これで……」

呟きながら、瓦礫を踏み歩いた。
何の反応も無く、友の亡骸はただ風に吹かれていた。

何が、間違っていたのだろうか。

考える程に思考は絡まり合い、答えは永遠に見えない。だが後悔は無かったし、己が間違っているとも思えなかった。

「……ロー」

亡骸に触れ、涙を流す。零れ落ちた滴は彼の身体に流れ、ちいさく輝いた。
だがジルはそんな些細なことには気付けない程に、正気を失っていた。

「く……、かは……ッ」

血を吐きながら、キティが目を覚ました。
それを見ようともせず、ジルは指先だけ彼女に触れる。

「えっ……?」

光が身体中に纏い、キティは碧色の輝きに掬い上げられた。

「キティ、ロー。キミたちはボクの大切な親友であり、幸せの象徴だ。失くしたくない。ただのボクのワガママなんだけど、キミたちという《希望》を、ボクは消してしまいたくない」

輝きはやがて繭のように彼女を完全に包み込むと、空高く舞い上がっていった。

「夢は終わる。けれど、きっとまた夢を見られる。素晴らしい、幸せな夢……」

そう呟きながら、ジルはゆっくりと都市部へと歩き出した。

ローを覆う碧色の輝きは大地にその光を這わせ、まるで根を張り巡らせる大樹のように彼を大地に縛り付け始めた。

ーーそして、地獄が始まった。

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