碧色の太陽

あれから数日ほどしか時間は経っていなかったが、実に数十年もの月日を越えたかの如く、大地は碧色に埋め尽くされていた。
燃え落ちた城壁も、折り重なった夥しい数の遺体も、あの神々しく聳え立っていた大聖堂も鋼鉄に固められていた大帝国でさえ。その上辺を不思議な輝きを纏う碧色の草が覆い茂り、大地はエメラルドの布に包み込まれたかのようにも見えた。

風がそよぎ、草たちはサラサラと軽やかな音色で揺れる。

あの殺戮と恐怖に満ちた一夜をまるで悪い夢だとでも言わんばかりに、優しい碧色がキラキラと陽の光を受けて微笑む。

嘘みたいに、優しく穏やかな風。

巨大な碧色の輝きを放つ光の玉がそこにゆらゆらと浮かびながら、一雫の雨粒を零して消え去った。

立ち並ぶ二つの墓標、一雫の雨。

浮かぶ碧色の太陽、過ぎ逝く時代の波。

五百の年月を経て碧色の太陽は世界を廻り、彼もまた姿形を変える。

忘れ去られた大地に花が咲く事は無く、ただ碧色の輝きが風に揺られながら永遠を奏で続ける。

過ぎ去りし時代の名と、かつて栄えし人々の記憶をその輝きに隠してーー。



碧の夢 -序章-
                    終幕

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