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そしてだれもいらなくなった

『相思相愛ロリータ』より 作曲:madetake
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※試聴版。オリジナル版(03:55)は購入後に視聴可能。

眠りに落ちるときの感覚が最期にも訪れればいいと思う。

 実際のところはわからない。
 最期は最期なので、最期を迎えてから帰ってきた人はいない。あの時にどうなるのかはずっと知らないままだ。人類の歴史がこれだけ続いているのにまだ解明されていない神秘のひとつ。

 音が甘く遠くなる。
 それは普通の感覚として皆知っているだろうか。
 初めてその感覚を意識したのは7歳か8歳くらいの頃だろうと思う。

 外で遊んでいる近所の友だちの声がする。
 自分もまざって一緒に遊びたいと思う。
 ああ、だけどなぜか体が動かない。一緒に遊んでいるような気持ちになりつつも、音が遠ざかっていく。夕暮れだ。太陽の匂いというよりは、布団の綿そのものと和室の匂いがする。

 そんな風に居なくなることができれば幸せだろうと思う。
 でも多分そうじゃない。居なくなることよりも居なくなっていく途中がつらいからだ。

 永遠についてはひとまず忘れて一時の安楽に落ち着くのがいいだろう。
 僕たちが生きていることを実感するのは回復においてだけだ。病気になってから回復する過程でだけ生命を感じる。

 ゆっくり起きるときは明らかに回復だ。眠りからの回復。覚醒。

 では、ゆっくり眠りに落ちていくときは?
 きっとそれも回復だろう。眠れない時があるのは、きっとなかなか回復できないからに違いない。 
 眠れない時間が魂を傷つけて強くする。眠れないほどに誰かの痛みがわかるようになると信じたい。機能が回復しないのも悪いことではない。まどろみのなかに苦い不全がある。
 できないぼくとねむれないきみを許すしかない。

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続けられるかわかりませんが過去作の曲の単品販売に使おうかなと思ってます