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てのひらにサイダーを

『親友が美少女になって帰ってきた。』より 作曲:madetake
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※試聴版。オリジナル版(02:56)は購入後に視聴可能。

悲しいことがあったとする。

 あまりにも悲しく、悲しすぎて簡単には言えないので吐露する機会をうかがう。
 そのうちにこんなことは言うべきではないなという感触が強くなって悲しいことは自分のなかにそのままになってしまう。

 そのことがまた悲しい。
 悲しいことが悲しいのではなく、悲しいことを吐露する相手がいないことが悲しいのだと気づく。すると最初は悲しかったことがそれほど悲しくない気がしてくる。

 そんなはずはないのだが。
 もっと喚き散らすように悲しんでヘラりたかったのだが。哀れんでもらって優しさを恵んでほしかったのだが。話が違うんだが。

 わかってほしい相手もわかってくれそうな相手もいないと明晰に判断して思慮分別を身に着けてきみは黙っている。

 世界には出せなかった手紙と言えなかった言葉があふれているのだろう。

 悲しみを自分で濾過しすぎて、それはいまや透明になってしまった。
 一見するとただの水なのでこれはただの水だよねときみは言う。
 そうだねと誰かが答える。
 きみは落胆する。
 やっぱりわかってもらえなかったと。

 だが、答えた誰かも落胆している。実はただの水ではないことはわかっていたのだがそのときそのタイミングでは言えなかった。
 新しく出せなかった手紙、言えなかった言葉が生まれている。

 きっとわからないだろう。
 幸福に溶けたたくさんの言えなかった言葉たち。
 きっとわかっていないだろう。

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続けられるかわかりませんが過去作の曲の単品販売に使おうかなと思ってます