約束は必要ない。

　本来なら必要ない。完璧な人が完璧な人生を生きるなら約束は無用だ。
　約束するまでもなく、約束するようなことをすべてしてしまうのが一番良いから。バカバカしく言ってしまうと宿題がなくても予習復習をすればいいというように約束は必要がない。さらにバカバカしく言うと完璧な結婚は婚約を必要としない。

　しかし人間の時間と能力は有限なので約束も有効になる。
　本当は全部するのがいい。
　してあげたいこと全部。
　してあげられること全部。
　なんでもあなたのためにやってあげたいと思う。

　でもそれはかなわない。
　ぼくもわたしもきみもあなたも無能だからだ。

　したいこと全部できるわけがないし、できることの半分もうまくできない。今まさにそうだ。うまくできずに苦しんでいる。

　約束を守っても破ったとしても、完全な形はありえない。どんな約束でももっと守れたしもっと破れたはずだが、今回はこの程度しかできなかったということになる。

　ただ最期には安寧がある。最後にひとつだけ完璧に守られ完璧に破られる約束があって、それが最期だ。

　約束は果たされて灰になる。そういう理想をこの曲は導いてくれるが、はたして理想は理想なのかもしれない。

　ぼくは今日も虚しく吠えている。約束を守ることも破ることもできない普通以下の生で。きみは吠えないのか？