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十年一日

『幼馴染と十年、夏』より 作曲:madetake
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※試聴版。オリジナル版(03:06)は購入後に視聴可能。

作品にはオーラが備わる。言い換えて「雰囲気」といってもいいし「感触」といっても「第一印象」といってもいい。何にしろ触れた瞬間に伝わってくるものがある。
 人と同じだ。
 初めて会った人、話した人から否応なく感じる生理的な好き嫌いがある。そして生理を突き抜けてくるような恋の感覚もある。第一印象といってもいいし一目惚れといってもいいしオーラといってもいい。

 この曲はオーラを持った曲だ。
 だから聞き始めて2秒くらいで好きになって、OKを出した。本当に最初の音が鳴った瞬間に良いものかどうかがわかる。
 ゲームを作り始めたばかりの頃は「念のために最後まで聞こう」なんて数分の保留をすることもあったが、最近はやめている。良いものは最初から良い。
 絵だったらファイルを開く前のサムネだけで何か伝わってくることがある。文章だったらページを開いた瞬間にわかることがある。きっとバットのスイングやゲームUIの動作でも同じことがあるのだと思う。

 今までの自分の経験や知識からもう脳に回路ができあがっていて、そこを一瞬で通過できたものは必ずいいものだ。突き詰めればきっと理屈もある程度見えてくるだろうけれど、それだけではない。原初に刻まれた何かが魂に響く。

 ひるがえって、それを感じない作品や真逆の嫌な感覚をもたらすものについて、理解しなくてもよいと思う。
 よくないものはよくない。
 人はほとんど知らないものを第一印象だけで嫌いになれるし、嫌いになっても良い。知らんけどなんか嫌いだな、と思って良いし、きっと言ってもいいはずだ。知らんけど。

 好きになるのも嫌いになるのも仕方のないことで、どうしようもない。
 だからあなたのことが好きな人は、あなたが嫌いなものを嫌いでいることを「まあべつにいいんじゃない」と言ってくれるだろう。

 この曲の綺麗な雰囲気の影には、そんな夏の陽炎のような「まあべつにいいんじゃない」が隠れていると感じる。作者としてはそこが好きだ。「まあべつにいいんじゃない」はひなたと陰の間のゆらぎだ。

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続けられるかわかりませんが過去作の曲の単品販売に使おうかなと思ってます