言葉の意味は伝わらない。

　書いていてよく思う。
　あるいは、あらゆる仕事というのはそういうものなのかもと思う。

　意味は通じていない。

　仕事をする側はプロで、受け取る側は素人だから当然のことかもしれない。
　部屋で暮らしていても内装にどんな意味があるかはわからない。鉄筋の組み方にどんな意味があるかはわからない。買い物にいっても陳列にどんな意味があるかはわからない。

　これくらいのことは誰でもわかるだろう、というのは常に作る側の傲慢なのだろう。

　ただ意味はわからなくても効果はある。

　声は聞こえていなくても、必死に呼びかけているかどうかはわかる。話そうと思ったときに、真剣に耳を傾けてくれているかどうかはわかる。

　言葉は通じなくても。わかりあえなくても。
「あなたと話したい」と思っているかどうかだけは伝わる。

　あらゆる場所は心が飛び立つための滑走路だ。きみに合った飛び上がり方がきっとあるのだろう。

　飛ぶのはきみ自身だし、天気にも左右される。
　私にできることは少ない。今日も文字を埋める。たいらに見える場所を作る。

　きみが上空にいるならこの場所が見えるだろう。