向こうからやってくる。

　多分何でもそうだと思う。
　大事なものはあるとき勝手にやってくる。だから人生は運だ。
　何かが向こうからやってきたときにその時その場所に生きて居ることが大切だ。その大事な何かが白馬の王子様なのか眠った姫なのか骸骨の騎士なのかはわからないが。

　だからそこで泣いてたってどうせだめだよ。
　というようなことを伝えたいけれど、そのまま言ってしまうのが慰めになるかどうかはわからない。

　私がお姫様ならどうだろう？
　きみが王子様ならどうだろう？
　そんな仮定も今は慰めにならないだろうか。なるだろうか。私にはわからない。
　わからないまま声をかけている。

　私にとってはきみが向こうからやってきた何かで、二年前のきみについて考える今のきみについて考える二年後のきみについて考える。

　元気だろうか。私は役に立てているだろうか。

　いやいいんだ。
　どうせだめだから。別に変わらないから。ずっとそこで泣いていてもいいし、泣きやんでもいい。どっちでもいい。どうせだめだから。

　前向きなつもりで、泣きながら同じ場所をぐるぐる回っているだけでも構わないよ。
　そこに居てくれるなら。

　命と運は、きっと愛と暴力というやつに似ている。