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アニメ『ガングレイヴ』再視聴した感想

『ガングレイヴ』(Gungrave)は2003年10月~2004年3月テレビ東京系列で放送されたアニメ作品です。当時、高校生の私が初めて視聴した深夜アニメであり、生まれて初めて触れたハードボイルドな作風のコンテンツでした。今回、約20年ぶりに通しできちんと見たので感想を書きたいと思います。


【過去回想を重視したアニメ版】
本作の放映する1年前にPS2用ガンアクションゲームとして同名タイトルが発売されました。主人公がかつて愛した女性の娘「ミカ」を、マフィア組織「ミレニオン」から守るため、幹部を倒していく大筋のストーリーは一緒。

しかしゲーム版と異なりアニメ版では、主人公の「ブランドン・ヒート」と親友でありラスボスの「ハリー・マクドゥエル」の若かりし頃の過去回想が重点的に描かれています。全26話中、16話が過去編という構成です。

第1話は碌な状況説明もなく、怪物に襲われる博士の爺さんと銀髪の少女。その刺客を撃退する二丁拳銃の大男。それを警戒する幹部たちのシーン。
それが終わると2話~17話くらいまで、ブランドンとハリーを主軸とした昔話が続きます。彼らはスラム街で育ったチンピラ時代からの付き合い。
正直ここが本編といっていい程、面白い部分でした。

マフィア組織「ミレニオン」に入り、徐々に頭角を現していく2人。
ブランドンは組織のトップである「ビックダディ」の忠誠と恋人「マリア」への愛情を。ハリーは自ら「ミレニオン」のトップになる野心を持ちます。それぞれの大切なものがズレはじめ、ついには袂を分かつことになります。

ブランドンの精神的な半身であるハリー。そしてそれはハリーも同じ。
ですがハリーにとって自分ではなく「ビックダディ」や「マリア」を選んだのは裏切りにほかならず、彼にとってその事実は受け入れがたいのでした。
互いを無二の存在として必要としているはずなのに、生き方を変えられない人間同士の悲哀が詰まった物語。2人の男の世界が濃密に描写されます。

彼らの間に横たわる複雑な感情の色が、ハリーをただの憎まれ役にさせないだけの味わい深さを作り出しています。
ハリーの野望には自分の隣に立つブランドンの姿も含まれていたでしょう。


【バックボーンが見えるからこその感動】
第18話になると時間軸が1話に戻ります。展開も1話とほぼ一緒です。
初見で理解できなかった演出も、それまでの過去回想のおかげでブランドンにとって大切な意味のある光景だったと気付かされます。

そこからはゲーム版と同様に「ミレニオン」の幹部を倒していきます。元がゲーム作品なので4人のボスが1話ずつ襲ってくる単純な展開です。
ただしアニメ版のほうが過去回想の分、キャラの掘り下げが深いので戦闘中どこか物悲しい雰囲気を漂わせていました。

とくにビックダディ時代から組織の重鎮であった「ベア・ウォーケン」と、敵対組織から引き抜きで仲間になった「九頭文治」の間には、ブランドンと浅からぬ因縁がありましたので、敵対心以上の親愛の情が感じられます。
彼らもまた、己の生き方に殉じただけの1人の男であったということです。

ちなみに文治は制作スタッフからも愛されていそうで、ゲーム内の技を再現したシーンがあったり、こいつだけ20話と24話で2回出番があったりととにかく優遇されていました。敵になってもブランドンの舎弟時代と同じく「兄貴」と呼んでくるところが可愛くて仕方がありません。

ラスボスのハリーとは最後の25、26話でたっぷり描かれます。
25話のエンディングでは、それまでモノクロだった若い頃の2人の映像がカラーになり色を取り戻している演出があります。止まっていたブランドンとハリーの時間がようやく動き出したということでしょうか。



当初はいつものようにノベルゲームの話をしようと思っていたのですが、
5月発売の作品に2本ハードボイルド風のものがあり予定を変更しました。
「自分にとってハードボイルドとはなんぞや」と自問自答した結果、
『ガングレイヴ』が真っ先に思いついたので見直したという流れです。

結局ハードボイルドが自分にとって何なのか答えは見つかりませんでした。ただ、この作品が私に与えた影響は今のノベルゲー観の土台にもなっているはずなので視聴して良かったと思います。今見ても凄く面白かったです。

1つ言えるのは、過去から押し寄せる、安らぎ・痛み・悲しみといった感情を原動力にして突き動かされる主人公はカッコ良いということです。

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