クジラ

尾瀬の仕事をしていると、1年のうち5ヶ月ぐらいは必然的にフリーターになる。

もちろん、アルバイトをしたりもしたが、折角自由な時間があるからと色々試した。

その一つがクジラ調査のボランティア。

山友達に誘われて即決。もちろん無給だけど、3ヶ月程のまたもや共同生活。

小笠原は、前から気になっていて1人旅で以前訪れていた所。母島が特によかった。

調査は父島。

普段は、高台からクジラの潮吹きを望遠鏡で見つける。

見つけたらトランシーバーで調査船に連絡するのが仕事。これがまた楽しい。

もっと楽しいのは、調査船に乗る事。

定員があるから、順番で乗る。3か月のうち何度も乗ったが必ずクジラに会えるわけじゃない。

海が荒れていると出られないない事も多い。

幸運にも私は何度か会う事出来た。


ただ今でも本当に見たのか自信が持てない。


それぐらい、幻想的で。

会ってその時はやったぁ〜と思うのだけれど時間とともにどうしても現実に起こった事に思えなくなる。

それは、何年も前の出来事だからではなく。

出逢った次の日からすでにそんな気持ちになる。

この感覚は言葉で表すと何と言えばよいのだろう。誰にでもある感覚なのか知りたい。


彼は、巨大な身体で捻りながら飛び上がり、物凄い水しぶきを立てて、また、海面へと戻っていく。

それを何度も繰り返す。どこの海面から飛び出すかは分からないのだ。

突然、突き出てくる。大きな動く山の様。

尾びれの写真を撮る。

彼らの剥がれ落ちた皮膚を掬って拾う。

潜っている彼らを探して、音声を録音する。


全てが今となると夢の中の出来事のよう。


自分が分からなくなると自然に向き合いたくなる。

自然になんてとても叶わないと何度も確認したくなる。

あーやっぱり、人間も全体の一部なのだと思えると、何もコントロールする必要はないんだ。

そもそもコントロールなんて出来ない。

それが、人の波にいると分からなくなる時がある。確認したい自分に気づく。

今、書いていて気付いた。

あえて行動の意味付けをするとしたら。

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