サラットナさん 第九章

再び、時は大祭前にさかのぼる。
巫女の伊藤さんと一緒に、私、貝塚は座布団にカバーをかけている。100枚以上あるそうだ。すべて外してのお洗濯も大変だったと思う。

少し前にサラットナさんがあらわれて、またあることを頼まれた。

今年大学一年生の伊藤さんは、気軽に色んな話をしてくれる。会話が止まり、無言で座布団の山と格闘する。

「貝塚さん、出来上がったの少し運びだして、まだのやつ持ってきましょう。」

それにしても。どの巫女さんも仕事ぶりがカッコよく見える。ご祈祷の受付、拝殿に上がって神主さんのご祈祷をサポート、掃除、洗濯、来客の対応、お昼準備に、電話応対を始めとする多様な事務作業。これがお正月期間に入ると更に仕事内容は増えるらしい。

「貝塚さん、私、足が太いのが悩みなんです。」

き、きた!サラットナさんが言ってた通りだ。
相談されるわよって。

「貝塚さんは色んなケアのこと詳しいって、他の巫女さんたちから聞いたんです。」

サラットナさんから身体のケア方法の伝言を頼まれて、巫女さんたちに伝えてきたけれど、いつの間にかそんなイメージがついたんだ私、へぇー。

伊藤さんがあわれもなく足を見せてくれている。
おい、おい。まぁ、巫女室だからいいか。

「伊藤さんの足、全然太くないわよ。これは、むくみなの。」

サラットナさんに言われた通り、先ずはお身体さまに手を合わせて、今から施術をさせて頂きますとあいさつをする。
そして、太ももの付け根を上から数回真っ直ぐ押して、リンパ液が流れていく場所を確保する。太ももの付け根に、リンパ液の大きな排出所があるそうだ。
次は膝に乗ってしまわないように気をつけながら、膝のすぐ上をもみほぐす。

反対側と足の太さが目に見えて変わった。
内心、自分でも感動した。

「ね、細くなったでしょ。これが本来の姿なの。」

「こんな自分の足、見たことないです!ありがとうございます。」

ピンポーン 呼び鈴が聞こえた。
ご祈祷?それともお守り授与、御朱印かしら。

「貝塚さん、あとお願いします。」と軽やかに受付に走っていく。やっぱり、巫女さんカッコいいわぁ。

さあ、座布団カバー片付けましょ。


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