菅義偉政権について

菅義偉政権は基盤の弱い政権だった。イデオロギー的には中道右派的プラグマティズムとポピュリスト的政策を併せ持った政権であった。安倍政権とは異なり、右翼的な主張をそれほどしなかった。内閣に右翼的とも言える留任者がいたものの、菅氏が任命した閣僚などに関してはそこまで全体としては右翼的とは言えなさそうだ(長官時代、人事を重視していた)。中道層にもウイングを広げた形となった。

外交

岸防衛大臣任命など、台湾を意識しているとも捉えられる方針は悪い方針ではないと思われる。日米関係に関しては、バイデン政権とも比較的安定的に運用できており、評価する。日中関係においては、ややハト的であり、人権問題や尖閣諸島、自由で開かれたインド太平洋という部分に関しては後退しているように感じられる。日韓関係に関しては安定した情勢を維持できており、前任者との違いが感じられる。敵地攻撃能力や靖国神社について慎重な対応をとったことは評価すべきだろう。

新型コロナウイルス対策

可もなく不可もなくといったところか。すくなくとも強権的なロックダウンを行わなかったことは評価できそうだ。ワクチンに関してはまずまずといったところ。五輪開催は評価できない。地方に丸投げと批判されているが、地方分権派としてはなんとも言えない気分である。ふるさと納税の推進など、新自由主義的ではあるものの、安倍政権に比べれば地方分権色が目立つ。

行政改革など

河野大臣はまずまずやっている。予算の無駄を洗い出せたことに関しては功績と言っていいだろう。しかし、成果は宣伝されているほどではない。デジタル庁に関しては完全に失敗と言ってよいだろう。

経済財政政策

脱炭素やデジタル化のビジョン、産業政策の体系を示したことは評価する。一方で予算が偏っているのではないかとの印象も受ける。社会保障費の削減に関しても景気回復に水をさす危険がある。携帯料金引き下げに関してもそうだ。

その他社会問題など

原発エネルギー政策において送電量の上限を引き上げることによって再エネ普及をはかる政策は支持できる。しかし原子力発電所を40年という期限を破って根拠なく再稼働させることは悪政といっていいだろう。汚染水処理の問題についてはやむを得ない側面もあるかもしれないが、固形化を検討するべきだった。

避妊治療など医療政策として否定するつもりはないが、優生学的議論が行われており、危うさを感じる。

緊急避妊薬の市販解禁にかんしては率直に喜ばしく思う。


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