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選ばれなかった私たち



「誰も特別じゃない」
細々と頼りない字でそう書いてある掛け軸が、私の心にはずっとある。



ちなみにこの掛け軸で言う特別は、恋人や仲間や家族などに抱く感情の事ではなく
「他より優っている」とかの意味での特別。


そりゃ私から見て才能あっていいなと思う人とか、あなた一際輝いてますよ良かったですねと思う人とかは山ほどいる。
羨望の眼差しが過ぎて憎しみに変わってしまう程、劣等感を掻き立て心を抉ってくるような存在だ。



おいおい真っ先に矛盾したこと言ってるんじゃないよ。
と矢が飛んで来そうだが、ちゃんと続きがあるので聞いて欲しい。


さて、彼らは悪気もなく無自覚に私の心を抉ってくるわけだが、同時に「私の世界において、私から、そういう風に見られているだけの人たち」とも言える。

つまり、人間をただの一生物として見てしまえば
私たちが才能などと拝めるモノは全部、"個体差"に過ぎないという事。


個体差とは価値の差だろうか。
そもそも価値ってなんだろう。



結局自分と相対的に見てるだけじゃないか。
劣等感など如何にも自己中心的な感情だ。

自分が喉から手を出しても手に入れられなかったものを持ってる人を羨んでは
まるでこの世の理の如く「あの人は特別だけど私は特別じゃない」と嘆いている。

言わずもがな、私の話なのだけど。


そもそも選ばれし者ってなんだ?誰に選ばれたらいいわけ?

答えは神でもなんでもなく
「自分が選ばれたかった人に」だろう。


とはいえ、目標や課題に必死になればなる程、目の前の壁と向き合えば向き合う程、
心には余裕が無くなりそんな事言ってられなくなる。

みんなどうせ私のことこう思ってるんだろ、とか、みんなどうせあっちの方が良いんだろ、とか、私は価値のない人間なんだ、とか
負の感情とはいくらでも襲ってくるから不思議なものだ。



ただ、個体差などで人間の本質的な優劣を決め付けてはいけないという事を、最後には思い出せる人間でありたい。最近はそう願えるようになった。
これは、自分に対しても、他人に対してもだ。



正直、その場面における一時的な優劣は存在するし、
生まれ持った何かしらのセンスってのも実際存在すると思うし、
外見においてもより多くの人が美しいと思う造形だって悲しきかな存在するわけだが、

そのどれもは、時代や、自分の今いる地域や国、求められる場面によって常に移ろう一時的かつ断片的なものとも言える。


全て、適材適所に過ぎない。
本質的な優劣や美醜、価値というのは何処にも存在しない。


常に移ろう不確かな物差しで自分という存在すら否定してしまう事、
他人の長所に目が眩み自分という存在全てを打ち消してしまう事はあまりに悲しい事ではないか。


私は、私に、みんなに、もっと自分を愛してあげてほしい。心からそう思う。

とはいえ無責任に「だから自信を持って!自分を愛して!」とは言えない。(前回の投稿に通ずる)

だって、オッケー!自分愛そーっと!といってすぐ愛せるような寛容で健全な世界ではないから。
それに、他人の言葉ひとつで生まれ変われるほど、心は軽くないから。

実際私も、こうやって言葉で説明出来ても
さっきから言っているように性根はルサンチマンの塊のような人間だ。

あの人みたいに曲が作れたら、あの人みたいに歌えたら、あの人みたいに顔がもっとこうだったら、とか。
気を抜くとそんなことばかり考えて、消えたくなったりするんだよ。


とにかく、劣等感を伴う心の歪みはじわじわと人間を蝕んでいく。

その歪みを一時的な快楽で死ぬまで誤魔化し続けるには限界があるのも知っている。


だから、取り返しのつかなくなる前に、「誰も特別じゃない論」を自分にとっての最後の味方として腹の底に置いておきたいし、そういう考え方がある事をこうして外に伝えていきたいと思った。


私と似た誰かの役に立てたら。


あと、劣等感を覚えてしまうのは貴方が"弱い"からじゃない。大丈夫。




というわけで。
劣等感というのはとても厄介なので出来る事なら拭い去りたいところだが、もし拭い去れたとしてもその先にあるのは他人を見下し優越感に浸る事ではない。

誰かの上に立って安心したい、というのはLove myselfとは違うと思っている。

あとは、自分の劣等感を拭い去るために誰かを否定し攻撃するなどはもってのほかだ。それはどんなに苦しくても耐えなくてはいけない。


自分を、相手を、認めて笑い合えたらそれで最高だ。


どんなに輝いて見える人でも
どんなに醜く見える自分でも
その人を表すレーダーチャートは誰もが歪で、全て平等に素晴らしいのだ。

そう思いたい。



うむ。お気付きだろうか。
私はこのような考えを根底に置く事で、劣等感が暴走し制御できなくなったダークゆうほに闇堕ちする事を日々全力で阻止している。


阻止できない日は週2くらいであるのだけど。

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