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年に1回の特別な日の話。

今日は9月7日。
どうしてもこの日の話をしたくて、はやる気持ちを抑えながらPCに向かっている。
この日は私にとって特別な日なのだから。

この話を進める前に、あるバンドを紹介しないといけない。
長野県伊那市発の5人組バンド「FAITH」。
友人同士で結成され、日本のバンドでありながら全編英語の曲を書いているのが特徴だ。
自らをギャング・オブ・ポップと名乗り、そこから生み出される洋楽にもJ-POPにもとらわれない新鮮味のある楽曲たち。ボーカルの伸びやかでかつ芯のある歌声。そのボーカルを支えるコーラスと楽器の重なり。それらの全部が大好きで、初めて彼らの曲に出会ってから、私は彼らの虜だ。
もどかしい恋愛を題材にした「Memory of You」や、若者特有の悩みを歌った「19」。明るい曲調とは対照的な歌詞の内容と、曲にも秘密が隠された「Headphones」。若い世代の心の内に寄り添ってくれるような、明るく可愛らしい曲たちが、当時高校生だった私の心に深く響いたのだった。

さて、話を本題の「9月7日」に戻そう。
私が彼らの楽曲に初めて触れたのは高校2年生の秋。まだ聴き始めでとにかくかっこいい作品たちに魅了されている中で、ある曲を見つけた。その曲のタイトルは「September 7th」。つまり「9月7日」。
曲の内容を私なりに解釈してみたのだが、「自分のことを本気で愛してくれなかった恋人とは別れを告げ、我慢せず嘘をつかず進んでいこう」という歌だ。日付をタイトルにするなんて、とてもおしゃれだと思った。そして9月7日はこの歌を聴きたいと思った。その年の9月7日はもう終わっていたので、来年から忘れずに聴こうと、そしてこれから彼らに会うことがあれば、このことを話してみたいものだと、そう思っていた。

しかし次の年、そんな私に思わぬニュースが舞い込んできた。
それは、8月に開催されるワンマンライブを最後に、FAITHが解散することになった、という衝撃的なものだった。
その年の春にメンバーの1人が脱退し、4人で活動を続けていたのだが、「“FAITH”は5人でこそ“FAITH”だった」ということを痛感し、「5人で始めたFAITHをこのまま大切に残したい」という思いからの決定だと、SNSのお知らせには記されていた。
もちろん信じられない思いでいっぱいだった。それでも彼らを応援した約1年間は忘れることの出来ない、かけがえのないものになっていた。だからこそ、最後の最後まで応援しようと思えたのだった。

最後のライブを配信で見届け、喪失感を抱えたまま時間が過ぎようとしていた時のこと。受験勉強の合間、私はカレンダーを見て気が付いた。
――9月7日。
私はすぐに音楽アプリを開き、FAITHの中でも好きな曲たちを集めたプレイリストから「あの曲」を探した。
――あった。「September 7th」。
タップして聴き始めると、5人で作り上げる新しいPOPの世界がそこにはあった。私は楽しくなって、FAITHとの時間を夢中で過ごしていた。
初めて彼らの曲を聴いたあの時と同じように。
私とFAITHは直接的ではなくても、高校時代の青春を共に過ごした仲間なのだった。

そして今年。彼らが解散して2年が経った。
私は大学生になり、彼らが「19」という楽曲で歌った年齢も経験している。なんだか勝手に彼らに追いついたような気持ちになってしまうが、私には彼らのような青春は送れなかったし、「19」で歌われているように、キングやクイーンにはまだまだ程遠い。それでも、私は私なりに日々の暮らしを駆け抜けているつもりだ。
今年も変わらず9月7日を迎え、再びあの曲を聴くことができた。FAITHの曲を聴くのは久しぶりになってしまったが、今でもメロディを口ずさむことができるなんて不思議な気持ちだった。
解散してから中身の変わっていないプレイリスト。しかし、これまでと変わらない新鮮さで、彼ら5人のきらきらとした青春が詰め込まれているようだった。

――来年も再来年も、何十年経っても、この曲たちを聴き続けて、彼らの青春を忘れずにいることができますように。

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