【前編】不妊予防・治療オンラインシンポジウム|開催レポートその1

不妊予防・治療オンラインシンポジウム
少子化ストップ!「産みたいときに産める社会」の実現を目指して


2021年1月30日にオンラインにて開催した「不妊予防・治療オンラインシンポジウム」。日本は、6組に1組の方が不妊治療をしており、不妊治療で生まれた16組に1組の子どもは、体外受精児であることがわかっています。今回は、オンラインシンポジウムの様子を前編・後編に分けてレポート。本記事では前半として、オープニングと講演の様子をお届けします。

後半記事はこちら→

【動画】不妊予防・治療オンラインシンポジウム


開催日時

2021年1月30日(土)

不妊予防・治療シンポジウム_フライヤー1ページ

シンポジウム記事_参加者zoom

主催、協賛

主催:ポピンズホールディングス
協賛:株式会社大和証券グループ本社

開催主旨

不妊予防について、考えたことがありますか?
いまや6組に1組が不妊治療を受け16人に1人の子どもが体外受精で生まれる日本ですが、その負担は働く女性に集中し日陰の治療とも言われています。2022年から不妊治療に公的医療保険を適用する政府方針が固まり、今年1月からスタートする、助成拡充に注目が集まっていますが「不妊予防」についてはほとんど知られていません。

参加者属性

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オープニング

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プロフィール
中村紀子
株式会社ポピンズホールディングス代表取締役会長
テレビ朝日アナウンサーを経て、1985年、JAFE(日本女性エグゼクティブ協会)設立、代表就任。 1987年、㈱ポピンズの前身であるジャフィサービス㈱設立、代表就任。
(社)全国ベビーシッター協会副会長、内閣府、厚生労働省女性の活躍推進協議会委員などを歴任。
内閣官房構造改革特別区域推進本部評価委員会委員、経済産業省独立行政法人評価委員会委員、環境省中央環境審議会委員、厚生労働省労働政策審議会職業能力開発分科会委員、ソニーマーケティングアドバイザリーボードメンバー、経済同友会幹事、少子化対策検討委員会副委員長、医療制度改革委員会副委員長、㈱パルコ社外取締役などを務める。
ハーバード・ビジネス・スクール・オブ・ジャパン「ビジネス・ステイツ・ウーマン・オブ・ザ・イヤー」、(社)ニュービジネス協議会「ニュービジネス大賞 アントレプレナー優秀賞」などを受賞。GSW(世界女性サミット)東京大会実行委員長。

本日は「少子化をストップして、そして子どもを産みたい時に産める社会の実現を目指して」と題して、不妊の予防治療シンポジウムを開催させていただきます。ポピンズホールディングスは「社会の解決・社会の課題の解決」に取り組んで参りました。

昨年の出生数は86万人しか生まれておらず、またその中の6組に1組の方が不妊治療を経験しています。そして不妊治療をして生まれた16組に1組のお子様は体外受精児により生まれていることがわかっています。

働く女性の数はこれからますます増えていきますが、不妊治療は「日陰の治療」と言われており、なかなか公にならない治療であるということを伺いました。

そこで私たちは、日本の不妊治療で権威のある先生、そしてカリフォルニアの不妊治療で権威のある先生、そして、この問題を大きな意味で解決していくために、政治で後押しをしてくださっている、元少子化担当大臣・前法務大臣の3名にご参加いただきました。今回のパネルディスカッションでは、ざっくばらんに議論していただきたいと考えております。


講演『高齢不妊のメカニズムと不妊予防』

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プロフィール
河村和弘医師

国際医療福祉大学医学部教授、順天堂大学医学部教授、山王病院
日本の生殖内分泌学の第一人者。特に早発卵巣機能不全の治療を専門としており、客員教授を務め
る米国スタンフォード大学と共同で開発した卵胞活性化法の臨床応用を行い、2013年に閉経した早発卵巣機能不全で世界初の妊娠・分娩に成功した。本治療法は2013年の世界10大medical breakthrough(米国Time誌)に選ばれた。
<経歴>
前聖マリアンナ医科大学医学部准教授・生殖医療センター長・産科副部長
米国スタンフォード大学Visiting Professor(産婦人科学)
元秋田大学医学部講師
日本産科婦人科学会認定指導医・産婦人科専門医
日本生殖医学会認定生殖医療専門医


不妊の原因の半分は男性が関わっている
今回は、「高齢不妊のメカニズムと不妊予防」についてお話をさせていただきます。不妊症とは、避妊をせずに1年経っても子どもができない状態を言います。現在日本では6組のカップルに1組が、不妊の検査や治療を受けているのが状況です。その主な原因は、妊娠を考える年齢の高齢化。つまり、高齢の不妊の方々が増えているというところに主な原因があると考えられています。

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昨今の様々な社会環境の変化によって、いわゆる晩婚化が起きています。2015年の第1子出生時の母親の平均年齢は30.7歳であるのに対し、1975年に第3子出生時の母親の平均年齢は30.3歳。1975年の第3子出生平均年齢よりも、2015年に最初の子どもを産む年齢の方が高くなっていることがわかります。このグラフからも、晩婚化によって子どもを産むタイミングが遅くなっていることが分かるかと思います。

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不妊の原因で一般的なイメージとしては、女性側に大きな原因があると思われがちですが、実際には男性単独因子でも24%。そして、男性と女性両方が原因となるものを合わせると約半分くらいが男性が関わっていることがわかります。このことからも、不妊の検査あるいは治療は、男性もしっかり受けて治療していくことが必要です。

卵子は精子と違い新たに作り出すことはできない
皆さんご存じのように、男性と女性は生殖機能にも違いがあります。男性には精巣の中に精子のもとになる細胞(幹細胞)があり、常に新しい精子を作ることができます。女性の場合は、40代後半あるいは50代前半に閉経を迎えますが、男性の場合は、50歳以降でも、幹細胞から引き続き精子を作ることができるため、こうした点は男女の大きな違いです。

卵子は胎児の頃に卵子の元となる原始卵胞が作られると、その後新しく作られることはありません。出生してから年齢とともに卵子の数は減っていきます。

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卵巣の中には、原始卵胞という卵子を包んだ組織があります。この原始卵胞の状態で生まれたときから閉経するまで卵子は保存されており、ある間隔で定期的に発育を開始して発育卵胞となり、成熟した後卵子が排卵されます。これが卵巣の働きです。

発育卵胞からは女性ホルモンが作られて、体全体に様々な作用しています。先ほど話した通り、卵子が新たに作られることはなく、時間の経過とともに減少。残りの数が1000個くらいまで減ると、卵胞が発育しなくなり閉経を迎えます。

卵巣機能不全は生理不順から予知が可能
高齢不妊の問題点は「卵巣機能不全」と「卵子の老化」です。卵巣機能不全とは、卵巣内の卵子の元の数が減少して、卵胞が育たなくなる状態です。卵胞が育たなければ当然、排卵が起きませんし、卵胞から分泌される女性ホルモンが出なくなって、その結果、無月経や閉経となってしまいます。

この卵巣機能不全はある程度予知することが可能で、それが生理不順です。この生理不順は割と一般的な症状で、多くの女性はしばしば経験したことがあるのではないでしょうか。もちろん多くの生理不順は、卵巣そのものが悪いということよりも、ストレスやダイエットなどの様々な理由で、脳から指令をするホルモンの状態がおかしくなっていることの方が多いです。

脳からの指令がおかしくなっているのか、それとも卵巣そのものが悪いのかというのは、これは採血という簡単な方法でわかるのです。そして、この検査は生理周期に関わらずいつでも行えるため、いわゆる婦人科特有の内診も不要な非常に便利な検査です。この検査を抗ミュラー管ホルモン検査(AMH)と呼びます。

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抗ミュラー管ホルモンは、卵巣のある一定の発育段階の卵胞から分必されるホルモンです。このホルモンは血液中に含まれるため、採血により、卵巣の中の卵胞がどれくらい残っているのか、残っている卵胞の数を反映してくれるのです。

不妊の予防のために取り組みたい5つのこと
ここで、不妊の予防についてお話していきたいと思います。不妊の予知ができるのであれば、100%ではありませんが予防も可能です。皆さんがご自分で簡単に取り組めることしてまず挙げられるのが「生活習慣の改善」です。これまでにわかっていることとして、喫煙は男女とも悪影響を及ぼします。また、最近のハーバード大学の研究成果によると、男性の場合ゆったりとしたパンツを履くのが良く、締め付けるようなボクサーパンツのような下着は精子を作る機能にあまりよろしくないということが報告されています。

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2つ目は感染症です。不妊の原因となる有名な感染症に「クラミジア感染症」があります。クラミジア感染症になるとネバッとしたフィルム状の癒着がお腹の中に広がります。こうなると卵管がうまく動けなかったり、卵管の入り口がふさがったりして、妊娠が難しくなってしまうのです。普段の性交渉では、コンドームの着用によって防ぐことができるため、不妊の予防になります。

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3つ目は、不妊の早期発見のためのスクリーニング検査です。女性では、重度の卵巣機能不全になる前に早い段階でAMH検査を行うことや、海外で行われている「FertiSTAT」というセルフチェックで、不妊の原因の可能性を示してくれる便利なものがあります。

また、女性の卵巣機能不全の男性版に相当するのが「造精機能障害」と呼ばれるものです。これは精液検査で簡単にわかります。もちろん、精液検査は痛みを伴わない検査ですが、病院に行くという点でハードルがあるのが現状です。最近では、セルフチェックで自分の精子の状態が調べることができる「Seem」と呼ばれる製品が登場しています。

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スクリーニング検査でもし異常が出たら、ライフプランを見直して、可能であれば、早めの子作りを考えるという選択肢を持ってもいいかもしれません。しかし、誰もが子どもをすぐ作れるというわけではないため、もし早めの子作りが難しいという場合は、卵子・精子・胚(受精卵)を凍結するという方法を選択肢もあります。

例えば、がんで卵巣あるいは卵子にダメージを与えるような抗がん剤や放射線療法を受ける前に、卵子を凍結保存しておいて、将来がんが治ってからその卵子を使うというような医療も行われています。卵子・精子・胚(受精卵)の凍結は、技術的にはほぼ確立されており、解凍後もそこまで大きく機能を損なわないで、使用できることがわかっています。

最後に…
皆様に是非ご理解いただきたいのは、妊娠する力には年齢の限界があります。特に女性は、卵子を新しく作ることができないため、その点は1つポイントになってきます。しかし、不妊は予防できるのです。もちろん100%ではありませんが、今回お話したようにかなりの部分が予防できる可能性があります。

ただし、不妊を予防するためには正しい知識を持つことが非常に大事です。早い段階で不妊に関する正しい知識を学び、それを正しく理解をした上で、不妊の予防あるいは年齢の限界があるということを個々に考えていただき、どういったライフプランを持つかを考えるきっかけにして欲しいと思っています。


まとめ

今回は「不妊予防・治療オンラインシンポジウム」の前半となるオープニング・講演の2つをご紹介しました。次回、後編では不妊治療に詳しい3名によるパネルディスカッションの様子をレポートします。


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