履歴書
例えば、ちょっと気になってた人が、もしかしたら好きな人に変わったかもしれなくて、恋になったかもしれなくて、そうしたら愛になったかなってやつとか、そういうのはきっと、どこかで誰かの縁になってる。
質量保存の法則。きっと世界にある幸せの量は決まっていて。
僕の動き一つ、または僕を動かす理由はもちろん自分の運命を変えるけど、他の人の運命も変えている。
僕が受け取るはずだった幸せだって、誰かに渡っていくなら無駄じゃない。
他の人と不幸の度合いを比べてマシだったよなって言い聞かせるより、等価交換だったのかなって思った方が良い。そう、気付いた。
しかし、そう気付いた僕のことを、最初に見つけてくれるのは誰だろう。
サラサラと崩れる音に耳を塞ぎたくなる。
所詮僕は聖人君主にはなれない。
犠牲にしたつもりなんてない。犠牲にするような自分もない。誰かに差し出す私なんていない。
ただそうしてくれと言われたから、そう動いた。そんな単純な話なのに、言われたことと行動の間に自分の存在を挟まないと、たったそれだけで、自分を大切にしていないと言われる。
何も考えずに過ごしているだけなの。ないものを大切にしろと言われたってしょうがない。
諦めは、どうにもならない毎日を、どうにか一歩ずつ歩いていくための盾だから。そう教えられたのはいつだろう。
携帯の写真が全部消えてしまった時、しょうがない、撮ってなかったことにすればいいかと言った私に、寂しそうな顔をしたのは誰だろう。
好きな人は目の前から突然いなくなってしまったけど、「あなたは彼の一面しか見ることはできなくて、どうせその間違った気持ちを伝えることもできなかったんだから、いてもいなくても一緒だろう」そう言ったのは誰だっけ。
分かっているけどただずっと、背中を向けた扉の向こうで、さらさらと何かが崩れて落ちていく音がするの。
それはたぶん、昔公園の砂場で毎日積み続けていた砂のお山が崩れる音だね。
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