ミステリーはお好き?(9)盲導犬を連れた実習生
珍しくイタリアのミステリードラマを観た。
『警察実習生ブランカのデコダージュ捜査』はイタリアで2021~2023年に制作された、大ヒット番組。主人公は若い女性。
ブランカは幼い頃に事故で視力を失った。それだけでなく、母親は夫と娘二人を捨てて男と逃げてしまい、仲良しの姉も謎の死を遂げ、父と二人暮らし。姉の事件をきっかけに、正義感が人一倍強い彼女は田舎を出て警察官を目指す。
ジェノヴァの警察署で実習生として働くことになったブランカだが、盲目であるという以前に男尊女卑の古臭い職場で、署長は口が悪く、彼女は面倒なお荷物扱い。
だが、ブランカは優れた聴覚を武器に、録音データから情報を引き出す技術「デコダージュ」を使って捜査に貢献し、捜査官として成長していく。また、視聴者がブランカになりきって、彼女がどのように感じているかを追体験できる特殊な録音技術「ホロフォニー」を使用して作られている。
事件は強盗、誘拐、麻薬取引、犬による殺人など待った無し。第2シーズンでは連続爆破犯と戦うブランカの活躍に手に汗を握った。
盲目で凶悪犯罪者に立ち向かうブランカには彼女を守ってくれる3人の男がいる。コンビを組むリグオーリ警部と同郷の料理人セバスティアーノ、そして、故郷にいるがいつでも駆けつけてくれる父親。
女友達もいる。美容師のステッラはブランカのヘアスタイルとファッションを決定してくれた。事件を離れ、ステッラとの女子トークに心和むブランカ。もう一人は小学生なのに苛酷な運命と戦っている少女ルチア。生意気だけど健気。ブランカの妹分だが、強い絆で結ばれている二人は後に養子縁組をする。
最後に、忘れてはならないのが盲導犬のリンネオ。家から一歩も出ないブランカのために父がプレゼントしてくれた。ジェノヴァに来てからは家でも職場でも事件現場でも常に一緒だ。
このドラマの大成功はブランカを演じるマリア・キアーラ・ジャンネッタの個性に因るところが大きい。
ジャケットの胸を大きく開け、ウエストをギュッと締め、足にはレギンスというのがブランカのスタイルだが、セクシーには感じない。むしろ、少年のように凛々しい。同性から声援を受ける、その潔さ、カッコよさが魅力だ。
ヒップホップにイタリアン演歌をミックスしたような主題歌もカッコいい。
シーズン2の10話でセバスティアーノが死ぬ。嘆き悲しむブランカ。でも、彼女は必死で生きていく。生を感じるために。
最後に、心に残った言葉を。
シーズン1の2話で、盲目となり、自殺しようとしたブランカに父が言った言葉。「嵐の間待つのが人生じゃない。雨の中でも踊れることだ!」
もう一つ、シーズン2の7話で、盲目の目撃者である女性にブランカが言った言葉。「太陽よ!太陽の熱を肌に感じる!太陽は見える人だけのものじゃないわ。私も引きこもっていたけど、リンネオが来たの。」
まっすぐなブランカが大好き!!