みちのく いとしい仏たち
パンフレットを見た瞬間から、絶対行きたいと思っていました。
運慶の精緻な彫刻はもちろん素晴らしいけど、プリミティブな造形は仏像に限らず、なんでも好き。
江戸時代、幕府や諸藩の統制により、日本各地の寺院は系列化され、建築から装飾まで宗派ごとに均一化されました。
技巧は優れていても、作者の個性や地域色は乏しくなります。
そんな中、地方の小さな村々では「民間仏」が大切にされていました。
仏師ではなく、大工や木地師が彫った木像は、首が長すぎたり、三等身しかなかったり、腕の角度が不自然だったり。
そんなユニークで愛嬌のある民間仏が130点。
『山神像』 江戸時代 兄川山神社 岩手県八幡平市
山神像というくらいなので神様なのだろうけど、くるくる螺髪は仏像(如来)の特徴。
なんだか困っているような表情が可愛い。
背面は真っ平で、1本の角材のような木から切り出したのでしょうか。
『鬼型像』 江戸時代 正福寺 岩手県葛巻町
ラップを歌っているような軽快な佇まい。
わっ、足もとに何かいると思ったら、子ども?!
じゃなくて、女性だそうです。
『六観音立像』 江戸時代 宝積寺 岩手県葛巻町
民間仏としては異例の県文化財指定を受けています。
六観音とは「聖観音」「十一面観音」「如意輪観音」「馬頭観音」「准胝観音」の総称で、観音さまは6つの姿に変身しながら、六道を輪廻する人を救ってくれる観音様。
が、本来の姿とは異なり、腕が二本しかない千手観音、烏帽子をかぶっただけの馬頭観音…。
本展監修の須藤弘敏氏(弘前大学名誉教授)が、中央のプロ仏師には造れない東北の誇りであり、みちのく民間仏の”頂点”とおっしゃっていたそうです。
『地蔵菩薩立像』 法蓮寺 青森県十和田市
あれ? 中性的であるはずの仏像に乳房が?
おそらくは乳児を弔うお地蔵さんであろうと言われています。
背面に写り込んでいるレンガは東京駅舎設立当時のものが使われていて、そこも見どころ。
『十王像』 江戸時代 三途川集落自治会 秋田県湯沢市
十王は地獄の裁判官。
生前犯した罪の多寡によって、死後に行く場所を決める、こわーい存在なのだ。
なのにこの十王像は、お雛様のよう。
地獄へ行っても手加減してね、という願いを込めて、やさしい顔の十王像を祀っていたのかも知れません。
といったように、可愛くてほっこりさせられますが。
でも作る人、祀る人、祈る人たちが、可愛いと思っていたのかどうかはわかりません。
自然災害、飢饉、貧窮など、死への恐怖に向き合っていた人たちの、苦しみを隠した微笑みなのだ、という説明もありました。
この展覧会では、青森・秋田・岩手の3県に限られていましたが、民間仏は全国どこにでもあります。
等身大から手のひらサイズまで。
お家近くに、ユニークな民間仏があるよーという方は、ぜひ教えて下さい。
<参考資料>
東京ステーションギャラリーwebサイト
https://www.ejrcf.or.jp/gallery/index.asp
Yahooニュース 2023年12/6
https://news.yahoo.co.jp/articles/8fb802401779acda02f4f3b0058588e8d6937506
仏像ワールドwebサイト
※ 館内は撮影禁止のため写真はwebから拝借しています。
カバー写真:リーフレット
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?