リバーシブル(11)表

第11章 真理

気がつけばもう選挙の時間だ。4年前は女性票を一気に獲得する事で第一党になった平等党。

はじめはとにかく男性を冷遇する施策でどうなることかと思ったが、蓋をあければ社会が活性化していた。

それに気付いた国民も次第に平等党へ支持を集め、再び第一党となり、新たな女性総理が就任する事になる。

社会も以前のような「男性社会」というものは無くなり、本当に実力の伴った人が管理職に就く事で昔ながらの「年功序列」も撤廃した企業も数多くなった。

テレビを点けると新たに総理に就任した高坂りなが所信演説を行っていた
「国民の皆様から、前政権を支持して頂けた事もあり、平等党は再び第一党となることができました。
前総理の意思は尊重しつつ、私はさらなる発展を進め、国民皆様の生活がより豊かになるようの政策を敷いていきます。

前政権で男性社会からの脱却が実現できました。
これは非常に大きな進歩だと思っております。

私は男性社会から脱却できた今の経済を持続可能なものにし、少子化対策に力を入れた政策をマニュフェストといたします。

社会の変革には前政権の時のような一時的な混乱があるかもしれません。

ですが、それは近い未来必ず良い方向に向かうためのものであり、私も方向性を見失わないよう芯を持って実現していきます。

私達議員の報酬は前政権で決めた国民の皆様からの評価で決まります。
私達も皆様の期待に添えるよう政策を打ち出してまりいますので、引き続き我々への評価をお願いします。

簡単ではありますが、以上で私からの挨拶とかえさせていただきます」

男性社会からの脱却
これこそが麻由里の果たしたかった社会であり、今まではこの「男性社会」を後ろ盾に年功序列で能力が低い人も管理職として長年居座る事が多い企業が多かった。

育児は女性に任せ男性は稼ぐべきだと変な風潮もこの「男性社会」の弊害であり、悪しき習慣でもあった。

とはいえ、やはり麻由里が総理に就任前の男性社会で甘い蜜を吸っていた人達にすれば自分たちの居場所が無くなったかのように反発は大きい。

今回の新しい高坂総理にはその点の不安要素もあったが、蓋を開けてみたら平等党が圧勝。

国民が「男性社会」の限界を感じていた事もまた事実。

この大きな流れに乗るための演説という印象だった。

(今度の総理はどういう政策を打ち出すのか興味があるな)

新垣も男性社会から脱却した今の社会に希望を抱き、新しい総理へ期待をのぞかせた。

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りなは総理に就任して、最初の政策を打ち出すためのアイデアを練っていた。

(橘総理だったら、どういう政策にしたのだろう…)

そんな時、りな宛に電話がかかってくる。

(誰かしら…)

見覚えのない番号だったため、秘書に出て貰い、りなに繋いできた。

「総理、橘前総理からです」
「橘前総理から!?」
りなは秘書から電話を代わり、
「はい、高坂です。」
「高坂総理、橘です。
橘麻由里です。今少しだけお話できますか?」
「橘前総理!私もお話したかったんです」
「もしかしたら、私が行ってきた政策が総理にご迷惑をかけてるのではないかと、心配になりまして。
私の政策を踏襲されるとの事だったので、私の方針に合わせようとされてませんか?」
(橘前総理、鋭すぎる…)
りなは回答に困っていたらその間で麻由里が察してしまう
「やはりですか。
私が色々大胆に変えてしまったから…本当にごめんなさい。
ただ、私は自分のしてきた改革は間違ってないと思ってます。
それはそれだけ私が自分の描いていた未来に向けて自分で変えていったから。

ですので、高坂総理にも是非ご自身の描く未来に向けて最善手を尽くして頂きたいと思い、こうして連絡させていただきました。」
麻由里は続けて
「私はもう、政治家でもありません。
こうしてご連絡差し上げるのも最初で最後です。
ですので、これは政治家の橘としてではなく一個人としてお伺います。

高坂総理は、どのような社会にしたいですか?」
麻由里の言葉にりなはハッとして答える
「私は男性社会から脱却できた今の社会で、今度は少子化問題に取り組み今以上に活気のある国にしたいと考えてます。
そのため、まずは少子化対策に注力した政策を打ち出す事になります」
そう聞いた麻由里は満足そうに答える
「高坂総理なら私も安心してお任せできます。
貴重なお時間ありがとうございました。」
そう言うと終話となった。

(橘前総理、ありがとうございます。
おかげで吹っ切れました)

りなは改めて少子化対策に向けた政策を練りだした。

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