リバーシブル(6)

第6章 環境
「新垣くん、今日の業務終了後時間取れるかしら?」
生野が俺に聞いてきた。
「はい、特に今日は予定が無いので大丈夫です。」 
「それなら良かった。
では、私も今日は19時までに仕事を片付けるから、20時に今からメールする店に来て頂戴。」
「今、メール頂戴しました。
では、20時に伺うようにします」
そう言って、俺は仕事に戻った。

上司である生野との約束の時間となった。
「新垣くん、こっちよ」
生野の声がしたのでそちらに向かう
「あの、この店って会員制なんじゃ…」
生野が指定した場所は会員制の店で、俺はその会員ではないため、入ることが出来ない。
「大丈夫。私が同伴なら入れるから」
そう言って俺は店内に入り、席に着く。
「悪いわね、こんな時間に呼び出すことになって。
普通の店だと落ち着いて話が出来ないからここにしたのよ」
なるほど。
たしかに会員制なだけあり、騒がしくもなく、フランク過ぎない事で商談などにも使えそうな雰囲気がある。
「早速だけど、本題ね。
たしか、新垣くんは今年35でしょ?
このままじゃうちの会社から支給される収入減は免れないわよ。」
そうだった。
橘総理が政策として打ち出した男性の収入カットがいよいよ俺の身にも降り掛かってくる。
「そうなんです。
今は副業でどうにかしてますが不安でしかないです」
俺は素直に今の心情を伝えた。
「そうよね。
で、うちの会社は男性の役員も若干名居ることからある程度男性の収入をキープされるための査定を設けてるの。」
「そうなんですか!?」
「知らなかった?
対象はちょうど収入が下がるタイミングの男性社員。
今回でいくと、新垣くんも対象なの。」
実はちゃんと男性役員が機能していたことに驚いた。
そして、今回査定の対象となっているため呼び出された事を理解した…が生野の言葉であ然となった。
「新垣くんって、まだ前の体制を引きずってる印象なのよね。
頑張ってるのはわかるんだけど、今日も男性社員の中で最後まで事務所で仕事をしてたでしょ?
他の子は早めに済ませて事務所を出ていくのを見てると凄く気になってて。」
続けて生野は
「別に遅くまで仕事をするのが悪いって訳ではないの。
ただ、査定をする上で成果物とそれまでにかける時間…生産性がね低いと評価としては上げ辛いのよ」
俺は何も言い返せなかった。
確かに、以前よりは早く終わるようになってきたが、それでも他の社員より時間がかかっているのは否めない。
そして、その関係で副業も思ったよりも手を出せていない。
そんな俺を見ながら、生野は
「だから、『今のまま』じゃ君の評価は上げられない。
どうすれば良いか、もう少し考えてみてくれるかしら。
君はなんのためにレポートを作るの?
君がしなければいけない事はなに?

私が言えるのはここまで。

1週間時間をあげるから、
1週間後、またこの店で機会を作るからその時に君の考えを聞かせて。」
「…わかりました」

俺は自分の評価を受け、膝から崩れ落ちそうな位凹んだ。

わかってはいた。
他の人より時間がかかっている事も。

どこか認めたくない自分のいた。

だか、目の前で指摘され返す言葉もなく情けない自分がいた。

(そういえば、女性からこんな風に言われたの初めてだな…
今まで彼女とかにもどこか強く当ったりしたこともあったけど、今は女性の方が強いって意識を持たないと駄目だ)

俺は改めて現在の政策で男性の地位が下がっている事を痛感した。

・・・・・

あれから一週間。
生野咲から呼び出され、例の会員制の店へと向かう。

「新垣くん、先週の答え聞かせてちょうだい。」
「はい。
あとあと、課長からご指摘頂き改めて自分と向き合いました。

今の私のレポートは課長が会議やプレゼンに使用される事も勘案し、もっと必要な情報を増やして課長にとって使いやすい資料にすること。
私は他の方より時間がかかるため、その分課長に特化した資料作成を心がけようと思います」

そう伝えると、生野は
「あら、ずいぶんと心変りしたのね。
少しは自分の立場を理解出来たって思っていいのかしら?」
と意地悪に答えると俺は
「はい。
自分の置かれている状況を痛感しました」
「ふふ。
まぁいいわ、とりあえず次回のレポートで評価を考えてあげる。
ちゃんと有言実行出来ていれば推薦シておくわ。」
「ありがとうございます!」
俺は深く頭を下げて礼を伝えた。
「君の評価は私が握っている事を忘れないことね」
咲は意地悪く笑みを浮かべた。

そしてその表情を見て、俺の中で何かが崩れる感覚かあった。

※次回より展開が表と裏で分かれます。
尚、裏版はアダルトコンテンツとなります

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?