リバーシブル(10)表

第10章 本質

国会にて、麻由里は最後の法案について説明をしていた。

「まず最初の法案についてです。
国民の男性に対する収入抑制を解除しましたが、我々議員の報酬も条件付きで報酬を増やしたいというのが1つ目になりす。

そして、条件というのは私達国会議員の成果を国民に評価頂く事。
方法はWeb上に自身の成果と確証をアップ頂き、それを国民の方に評価いただきます。

評価が一定数以上あれば当然報酬は上がりますが、成果を認められない、成果が無い場合は報酬据え置き、また居眠りや国会への無断欠席など明らかな怠惰については報酬の減額となります。 

なお、すでにWebサイトはデジタル省に構築頂いてますので、法案可決後期日を設けますので、そちらに皆様のマニフェストとそれに対する成果をアップしていただく事になります。

その後国民へ周知し評価…
という流れになります。

これは我々の成果が国民ニ゙届いて居ない事で正当な評価を受けられない議員さんも多く、国民の皆様にも私達議員の事を知り政治に関心を持っていただきたいという思いがあります。

こちらの法案に賛成の方、挙手願います。」
そういうと、平等党は挙手し、もちろん可決となる。

「賛成多数で可決となります」

まず1つ目は予定通り可決された。
「次の法案です。
先ほどの法案や私が過去に策定しました法案についても我が党だけで過半数あるためどんな法案であっても可決されるリスクがあると皆様も十分理解いただけたと思っております。

そこで、2つ目の法案です…」

麻由里は自身が進めてきた強引な法案可決の在り方を問うように可決に対する議席数の在り方を問題視し、それに対する対策としての法案を提示するように説明した。

「…以上の理由から本法案を策定しました。」

当然ここで反対すると、自分たちの政権を私物化したいという意思に捉えられ、仮に次の政権を取っても国民からの支持は悪くなる。

そのため、平等党はともかく他の政党も挙手せざるを得ない。
(やりたい放題した挙げ句、釘まで刺してくるか。
橘め…)
不本意ながら挙手したが、やはり私物化できると考えていた議員や次期総理候補は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。

「満場一致で可決となります」

(これで、私の役目は終わり。
散々かき回したけど、これで国民に私達政治家が誠実にならざるを得ない状況にできたわ。
あとは、国民皆さんの審判で次期政権はどこが握るか…)

麻由里は安堵した表情を浮かべるが、不安を払拭しきれないでいた。

数日後、

議員の評価制度が国民に周知され、国民が政治家に対してどういう感情を抱いているのかが可視化された。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(20分前か…ちょっと早く着いたな。)

俺は生野のとの約束した店に到着し、周りを見渡す
(当然、まだ来てないよな。
まぁ、そこまで待ち時間もないしここで待っておこう)

俺は店の前で生野を待つことにした。

時間丁度位で生野は小林と一緒に店にやってきた。

「あら、新垣くん。
こんなところで奇遇ね。」
小林は意地悪くほほえみながら声をかけてきた。
「お疲れ様です。
私は生野課長と打ち合わせで」
「ふふ。君ホントに面白いわね。
一緒に来てるんだから知ってるわよ」
小林が笑いながら答えた。
その横で生野が
「今日、かおりにも一緒にしてもらうから、連れてきたのよ。
あ、小林さんの事ね。」

そういい、小林が同席する旨を伝えてきた。
「とりあえず店に入りましょう」
生野はそういうと、俺と小林を連れて店に入った。

「まずは、新垣くん。
今回は丁寧なサポートに感謝します。
ありがとう。
おかげて、今回のプロジェクトのPMとして担当することができたわ。

そして、かおりにもこのプロジェクトのPMOとして私と一緒に参画してもらいたいの。

そして、新垣くん。
君には私達に重点をおいてサポートをお願いしたい。

もちろん、私が報酬については今より上げてあげられる。
その代わり、二人のサポートだから、報酬増えた分負担は増えるけど問題無いわよね?」
「はい、小林さんとも連携取りながらお二人のサポートに注力します」
「たのんだわよ、新垣くん。

そして、かおりは…」
生野は嬉しそうに話を進めていた。
(課長、嬉しそうだな…
そういえば俺も、数年前…
まだ男性社会だった頃に上司から推薦されてチームリーダーになった時は嬉しかったな…)
ふと、昔の事を懐かしんでいた。
「…なんだけど、ねぇ、新垣くん。
ちゃんと聞いてる?」
「あ、すみません…
ちょっと課長が嬉しそうだなと思って、昔の自分と照らし合わせて物思いにふけってました…」
「しっかりしてもらわないと困るのよ。
もう一回話すのも面倒だから、君にはまた指示出すから」 
「はい、すみません」
いつもなら厳しく叱ってくるであろう生野だか、今日はよほど機嫌がいいらしい。

小林と生野の話が続いていて、俺はなんとなく相槌を打ちながら出てくる料理を食べていた。

「さて、今日はこの辺でお開きにしましょう。
明日から宜しくお願いします」
生野がそういい、店を出た俺は帰路につく。

(そういえば、政治家の評価制度ができたって言ってたな)

そう思い、実際に議員の評価制度を行うべく、新設されたWebサイトへと目をやる。
こうやって見ると、いかにマニュフェストが守られていないのかが一目瞭然で、平等党だけが突出して成果を出している形となっていた。

(確かに、今の総理になってから世の中の価値観がひっくり返ったからなぁ)
と俺は平等党の議員に評価をしていた。

今の総理になって4年。
その4年で男女の社会における格差は無くなった…
というより、逆転した。

これは政策で男性が冷遇された事も一因ではあるが、いままでの男性社会の中で女性がサポートに徹していた事から顕在化しなかった女性の能力や可能性が
社会に適応した結果なのだろう。

そして、今の社会になってつくづく感じる男の立場。

(男らしさって何なんだろう…)

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