リバーシブル(4)

第四章 変望
「我が社も今回可決された法案に則り、皆さんの時間拘束による固定給を廃止し、成果給を導入する運びとなりました。

男性の社員さんには申し訳ありませんが、以下の通り減給となります。
35歳〜49歳までの方は現給与の8割。
50歳以上の方は現給与の6割。

管理職の方も対象となりますので、管理職をご辞退頂いて構いません。」
続けて女性取締役が話を進める
「とは言え、管理職がいないと企業としても非常に経営が困難になりますので、ここは給料の上る女性に是非就いていただきたいと考えております。

成果給ですが、各職種事に基準を設けます。
その基準をクリアしていただければ例え短時間でも所定の額面は支給いたします。  

短時間で達成される方は副業も可能になりますので是非こういった制度を活用頂き、不足している收入を確保戴きたいと考えております。」
男性の取締役が申し訳無さそうに伝える
「男性の皆さまには本当に申し訳ない思いですが、法人税が上がると折角の利益も皆さまに還元する額が減りますので、どうかご理解いただきたく…」

(いよいようちの会社にも適用サれたか…)
俺は高橋と目を合わせ、落胆した表彰を浮かべた。
「なあ、新垣。
俺さ、副業を掛け持ちして今までより收入アップしたんだよ。
もう1社は例の法案可決後に出来た会社なんだけど、自分で仕事内容選べるんだよ。」
「え、なにそれ。
ちょっと詳しく教えてくれよ」
「OK、じゃ今日昼食いに行くときに話すわ」
そう言って高橋は仕事を片付けるといい去っていった。
(はぁ、なんだかんだ言って、あいつは器用だからな…)

正直、俺はあまり器用に仕事が出来るタイプではないが、それでも周りのサポートやそれこそ最新のテクノロジー何かを使いながら与えられた仕事はこなしてきた。
(災難なのは管理職の50代のおじさん達だよな…)
うちの会社には管理職が男性しか就いていなかった。

ただ、約半分にまで収入を下げられてまで高ストレスな管理職に留まる人はどれだけいるのだろう。
かといって今更現場に戻っても何か出来るか?というとそこも難しい。
(変化に対応出来ない人材は年齢問わず淘汰される時代になったんだな…)
俺は明日は我が身だと感じながら仕事に戻った。

昼休み、高橋が声をかけてきた。
「新垣、メシ行くそ!」
「あ、もうそんな時間か。
近くの定食屋で良いか?」
「OK!」
高橋と近くの定食屋に入り、注文を済ませる。
「なぁ、高橋。
例の副業の話、詳しく教えてくれよ」
「簡単に言えば職業斡旋だわ。」
「はあ!?」
俺は高橋からの回答に少しイラっとした。
「まぁ、聞けって。
今までの職業斡旋はあくまで社員とかアルバイトを斡旋するってイメージだよな。
そうじゃなくて、「依頼内容」と「報酬」、「納期」の3つがセットになってる情報を開示してくれるんだよ。」
「???」
「だから、利用者はその情報からどの依頼を受けるかを決めて、その依頼主と契約する。
当然、依頼内容が達成されないと報酬は無いし、場合によってはペナルティもあるケースもある」
高橋は続けて説明する
「だから、自分の能力で達成可能な依頼内容を受けて、報酬ゲットするっていうのを繰り返す」
「なるほど…」
今回の法案で簡単な事務作業など、今まで事務員として活躍されていた方の仕事が女性の単価が上がり担い手不足になった企業などから「依頼」として出てくる事が多くなった。

当然個人情報や機密情報は出せないため作業内容は限られるがそれでも旧態依然な仕事が急になくなる事はなく、このような市場に出てくる。
「俺は、時間が出来た時にここでこなせそうな依頼を見つけてこつこつ収入を得てるってわけ。」
「最近、こういう斡旋所も増えてるみたいだし、新垣も機会があれば覗いてみればいいんじゃない?」
「そうする、ありがとな!」

(給料減でかなり不安はあるけど、こうした対策まで打たれてたら、もうやるしかないな)

俺はこの急激に変化した社会に適応できなければ生活ができなくなるのを改めて実感した。

〜〜〜〜〜〜〜〜
麻由里は今回の法案可決に伴い、国民に向けて演説を行うため、速水と原稿のチェックを行っていた。
「ねえ、速水さん。
私の秘書とか、女性っていう見方ではなく、客観的に見て、この内容はどう感じる?」
「そうですね。正直価値観が変わり過ぎて戸惑いはありますが、かといってネガティブな感情にはならないです。」
「ありがとう。
ネガティブに捉えられる人も当然居ると思う。
でも、私はこれだけ停滞しきった現状を変えるにはこういう方法しか浮かばなかった」
「詰めも甘い部分はまだまだたくさんあるし、法整備だってまだ全然整ってないけど…
もし、国民がこの変化を受け入れてくれたら、次の政権もきっと今の流れを踏襲してくれると信じてる」
速水は大きく頷き
「そうですね。
私は橘総理の秘書で良かったと思ってます.。
なかなかこれだけ社会を変える方のサポートなんてできませんから。
凄くやりがいを感じています」
「速水さん、ありがとう。」
そう言って麻由里は演説会場へ向かった。

「今回の3つの法案につきまして、皆様にお話いたします。」
演説が始まった。
「まず男性の皆様には混乱を招くような法案となり申し訳ありません。
ですが、私は我が国のGDPが大きく下落している事に不安を抱きました。
このままでは国内ごどんどん貧しくなる。
貧しくなればさらに少子化が進むと。

それを解消するにはどうすれば良いかを考えた結果が今までの法案となります。

まずは、前政権で国債が国民野皆様に大きくのしかかっています。
その最たる例が「税金」です。

私はこの貴重な税収を必要最低限の出費で抑える為に議員報酬のカット、定年制の引き下げを行い、一般企業同様の経費都度精算を実施。

そして、今回は女性の社会貢献度を最大限に引き出すため、女性に対しての対価を男性より高く設定しました。
役員に女性を必ず入れるようにしたのもその一環であり、女性にしかわからない部分のサポートができるようにする狙いもあります。

そして、男性には給与カットを実施した事で、今まで男性に頼って生活された方も社会復帰してほしい。
ご自身の収入で生活基盤ができる環境を整えてほしいと考えたためです。

反面、男性には給与が下がる分生活レベルの低下が危惧されます。

そこで時間拘束の固定給ではなく、成果給+副業で足りなくなった分を補って頂く。
そして、ご自身の生産性を更に高めて戴きたいという願いから今回の法案を実現したということになります」

少し混を空けて

「生活基盤が上がれば少子化に向けての対策を順次整備してまいります。

再度申し上げます

女性の皆様
もう、男性に養ってもらうというのは通用しなくなります。
働ける方は是非ともご自身の力でこの社会を回して下さい。

私は女性の皆様の変化を望みます。
そして、男性の皆様にもさらなる変化を望みます。

以上です。」

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