事実調査のための自宅待機 2/2

承前

4.考え方

不祥事や事故があっても、懲戒の判断をするまでに時間をいくらか要するのは通常のことで、重大な不祥事であればあるほど時間を要するかもしれません。
このときに、賃金をどうするかという課題については、民法536条2項の適用を受けるかどうか、労務の受領拒絶が使用者の「責に帰すべき事由」に当たるかどうか、ということになっています。

そして、その判断には、懲戒事由に該当する事故や不祥事がどれぐらい具体的か、重要/重大か、という点が影響を与えます。ですが、その境界は定量的には測定できません。

だとしたらどうするか、という点については、極論としては次の2つのアプローチに分かれます。

1.とりあえず、平均賃金の6割を支払うことにしておいて、紛争リスクを回避する。

2.とりあえず、支払わないことにしておいて、争いが生じたらそこから考える。

リーガル的には、1.のほうが紛争リスクを避けられる可能性が高いので推奨されることになろうかと思います。反面、同じ局面が10回生じたときに、何回紛争になるか、ということを想起するなら、2.のほうに経済合理性があるかもしれません(検証可能性に乏しいですが。)。

私の体験として、就業規則を作るときに「とりあえず6割支払いしておくとある程度セーフティだといえますよ。」とお話ししたところ、「そうはいっても解雇とか懲戒解雇になることが確実なやつに給料払われへんわ。」ということで、就業規則に6割支払いを規定しなかったことがありました。

2割、0割でも許容された裁判例もありますので、この辺の判断は会社次第ということになります。ディフェンシブな就業規則にするか、リスクを承知の就業規則にするか、という意味では、この問題に限らない課題ではあります。
(終わり)

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