● 家屋の相続税・固定資産税の時価のこと2/4
(承前)
5.固定資産税評価額
前の投稿で書いたとおり、相続税の財産評価に関し、家屋については固定資産税評価額によることとされています(評価通達89)。固定資産税評価額というのは、地方税法381条に記載されている台帳登録価格のことです。いま話題にしているのは家屋で、家屋に関する条文は、地方税法381条3項です。
「基準年度」というのは、固定資産税税評価額は原則として3年ごとに評価替えを行うのですが、その評価替えの年を意味しています。現時点を基準にしていうと、次の基準年度(=評価替え)は、令和6年(2024年)1月1日です。
それで、「基準年度の価格」が、固定資産税(と都市計画税)の課税標準になっています。地方税法349条1項。
で、ここにいう「価格」については定義があって、それによると次のようになっています。地方税法341条5号。
固定資産税の課税標準は、適正な時価なのです。相続税における財産の評価も「時価」でした(相続税法22条)。
6.固定資産評価基準
固定資産税の課税標準が適正な時価であるとして、ではそれをどうやって求めるのか、という問題になりますが、ここは法律があります。地方税法403条、388条。
市町村長は、「固定資産評価基準」によって固定資産の「価格」(=「適正な時価」)を決定しなければならず、「固定資産評価基準」は総務大臣が告示で定める、ということになっています。
7.判例あります
じゃあ、固定資産評価基準によって算定される金額は、本当に時価なんですかね、という問題が出てくるのですが、この点については、最高裁判例があります(最2小判H15.7.18)(今回引用しませんが、土地について、最1小判H15.6.26というのもあります。こちらも重要です。)。
最高裁はこのように、固定資産評価基準によって決定した価格は、「特別の事情」の存しない限り、「適正な時価」であると推認されると判示して、原審が採用していた不動産鑑定士による鑑定結果を排斥しました。
でも、固定資産税評価額が適正な時価だなんて、誰も思っていませんよね。裁判官だって、思っていないでしょう。
固定資産税評価額が適正な時価なのであれば、裁判所の競売も固定資産税評価額だけでやればいいですが、そんな実務はありません。
固定資産評価額が適正な時価なのであれば、遺産分割調停・審判では、固定資産税評価額だけでやればいいですが、そんな実務はありません。
固定資産税評価額が適正な時価なのであれば、世間の不動産取引も固定資産税評価額を目安にすればよいですが、そんな人はいません。
固定資産税評価額が適正な時価なのであれば、不動産鑑定士の正常価格の査定は無用なはずですが、そんなことはありません。
(続く)
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