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推しという名の偉人について


5月29日。数年前までは、ただの365分の1日だった日付。今日は、昨年急逝した俳優・滝口幸広さんのお誕生日だ。

滝口さんの誕生日になると、私はなぜか毎年、彼をお祝いする気持ちとともに、自分の人生を振り返ってしまう。自分の誕生日はどちらかといえば家族や友人に感謝して過ごす意識があるので、一年の中で一番、自分の生きてきた道や、自分の心の中を見つめる日かもしれない。他人の誕生日になにをやってるんだとも毎年思うが、なぜかやめられない。理由はわからない。でも、きっとそれだけ大きな存在だったのだ。理屈とかじゃなく、直感で。

この春、私はあまり体調が良くなかった。久しぶりにエネルギーがなくなって、死にたい夜を何度も過ごした。新型コロナウィルスによる社会的な閉塞感も相まって、今もまだ、なかなか状態を上げられずにいる。
そんな日々の中で、しょっちゅう滝口さんのことを考えていた。たっきーがいたら、こんな状況の中で、どんな言葉を届けてくれただろう。どんな笑顔を届けてくれただろう。半年前はあまり痛まなかった傷痕が今になって疼き出して、ドロドロと血が流れてきているみたいだった。ただただ、寂しい。滝口さんが今生きていないことが、どうしようもなく寂しくて、滝口さんがいない世界に生きていることが、どうしても虚しかった。

それでも私が、滝口さんの死をキッカケに道を誤ったりせずに今日という日を迎えられたのは、やっぱり、滝口さんがいない世界だからこそ、生き続けたいと思うからだ。滝口さんがいないからなんて理由で絶望しては、たくさんパワーをくれた滝口さんにも、滝口さんにパワーをもらってきたこの6年間の自分にも、申し訳が立たない。滝口さんのファンとして、もっと生きていきたい。いろんな人に滝口さんのことを語りたい。彼が出会わせてくれたエンターテイメントの世界を、もっともっと見続けたい。いつまでも。何度でも。

このところずっとぐずぐずしていたけれど、そんな想いを、5月29日が近付くにつれて思い出していた。ほら、やっぱり滝口さんの誕生日は、私の心を刺激する。どこからかエネルギーが湧いてくる。すごい人だね。推しってすごいね。推しって偉大だよね。出会えてよかったなあって、ずっと思っているよ。

たっきー、ありがとう。
生まれてきてくれて。生きてきてくれて。舞台に立ってくれて。本当に本当に、ありがとう。あなたのファンになれた私はとても幸せ者だと、今だって胸を張れます。あなたは私にとって、(国語の)教科書に載るレベルの偉人です。

お誕生日、おめでとう!


2020.5.29 西垣ポプラ


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おまけのはなし

昨年11月末、滝口さんの訃報を受けて心配して連絡をくれた友人と、ランチをしたあと、映画を見た。作品名は『アナと雪の女王2』。彼女に誘われなければ、たぶん映画館で見ることはなかったと思う。
『アナ雪2』はとても面白くて、面白すぎて、途中から「たっきーはこんな素晴らしい作品を見ずして死んじゃったんだなあ」とか考えたり、アナが力を振り絞って立ち上がるシーンに共感してしまったりして、変な情緒でぐちゃぐちゃに泣いていた。
そんな、映画に入り込めているようで頭の中はたっきーだらけという状態で物語は結末を迎えた。そしてあるキャラクターたちが言った。
「34年5ヶ月23日ぶりだ」
数字のジャストミートっぷりに驚いて、涙や悲しさは全部忘れてしまった。頭の中の滝口さんが「どーだまいったか!!!」と元気よく笑っている気がした。
彼が生きた34年と5ヶ月と16日。まずはその年齢を超えることを、私はひとつの目標としている。

(微妙に数日ズレているところがなんかたっきーっぽくてとても好きです)(ジャストミートでサヨナラ逆転満塁ホームランかと思いきやぎりぎりでファウルでしたってかんじ)(一回ガッツポーズしちゃった恥ずかしさを引きずって空振り三振で試合終了になるかんじ)(エンターテイナーだなあ)


おめでとう。ありがとう。

ほんとうにおわり。


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