あなたの悲しみは、あなただけのもの。

幸せの定義は人それぞれなように
苦しみや、悲しみの定義だって、
人それぞれでいいはずだ。

＊

いじめられてるわけじゃない。
虐待されてるわけでもない。
友だちはいる。先生とも上手くいってる。
勉強も、部活も、人間関係も
テレビやネットで見かける人に比べたら
わたしはきっと、恵まれている。

だから、余計に苦しくなる。

わたしは恵まれている。
お金にも、愛にも、そんなに困ってない。
わたしより大変なひとは、
この世の中にはたくさんいる。
なのに、どうしてわたしは
こんなにも、苦しいんだろう。
恵まれている環境にいるのに
どうして、いっちょまえに、
「つらい」なんて、思ってしまうんだろう。

わたしより、苦しい思いをして
わたしより、つらい気持ちを抱えて
それでも頑張っている人が、たくさんいるのに
わたしなんかが、「苦しい」だなんて。

なんてわたしは情けないんだろう。
本当に苦しい人に、申し訳ない。恥ずかしい。

こんなわたし、だいきらい。

＊

そんなふうに、思っていた時代が
わたしにはあった。
実は、今でもたまに、
そう考えてしまうことがある。
たとえば今日みたいに
「生きるのしんどいなー」って
思ってしまった日とか。

しんどい、と思うだけでしんどいのに
「わたしなんかがしんどいとか思っちゃダメでしょう」
という気持ちが、
さらにわたしをしんどくさせる。

そろそろ、「しんどい」という言葉が
ゲシュタルト崩壊しそうなので
「つらい」という言葉に、言い換えるけど。

そもそも、「自分なんか」って言うけどさ
じゃあ、一体どんな人なら
「自分なんか」と思わずに
「つらい」と叫ぶことを許されるのかな。

友だちにハブられているあの子？
いやいや、あの子よりも、
教科書をビリビリに破られたあの子の方が
きっとつらいはず。
いやいやいや、あの子はおうちに帰れば
お母さんと仲良くお料理ができる。
家に帰ると両親が喧嘩ばかりしている
あの子の方が、きっとつらい。
いやいやいやいや、あの子には
友だちがいるから大丈夫だよ。
もっとつらいのは、お金がない子。
いくら勉強を頑張っても、
進路を選ぶことができないんだから。
いやいやいやいやいや。
このご時世、いくつになっても
学ぶことはできるんだから。
それより、やっぱり友だちのいないあの子が…

こんなのは、たとえばの話だけど。
「つらさ」をはかるものさしは
きっと人それぞれちがうし、
どんどん、「つらい」のレベルを上げたとして
じゃあ、あなたのものさしの
いちばんてっぺんにいる人しか
「つらい」と思う権利はないの？
と考えたら、
そんなことないって、わかるはず。
それに、あなたが
「この人がいちばんつらいはずだ！」
と思った人がいたとしても、
はたしてその人が、本当に
あなたよりも「つらい」と思ってるかどうか
なんて
あなたにも、わたしにも
そしてその人にも、わからない。
だってその人も同じように
あなたの「つらさ」はわからないから。

誰だって、内側に抱える「つらさ」を
他人と比べることはできない。
他人の心は覗き込むことができないし、
なにを「つらい」と感じるかは
人それぞれ、ちがうものだから。

犬を見て、
「かわいい」と思う人と
「怖い」と思う人がいるように。

野球の試合を見て、
「楽しい」と感じる人と
「つまらない」と感じる人がいるように

見知らぬ人が悲しそうに涙を流す姿を見て
「悲しさ」を感じる人と
何も感じない人がいるように

好きも嫌いも、
楽しいも楽しくないも、
つらいもつらくないも、
みんな、人それぞれ、ちがうもの。
たとえ親子でも、夫婦でも、親友でも
相手の気持ちを100%正確に知ることなんてできない。

だからわたしは、わたしの心で
あなたは、あなたの心で
楽しいと感じていいし、
つらいと感じていい。
その感情は、誰にも指図されないし
誰かに譲る必要もない。

あなたの感情は、あなただけのものなんだから。
他人と比べることなんて、できないんだから。

「つらいなぁ」って思ったら、
誰かと比べたりする必要は全くなくて
「つらい」と感じた自分を、受け入れてあげよう。

あなたの感情に、こころに
本当に寄り添ってあげられるのは、
世界中で、あなただけ。

＊

幸せの形は人それぞれっていう話はよく聞くけど、悲しみとか苦しさといった感情も人それぞれ、って話はあんまり聞かなかった気がするなぁ、と今日ふと思いました。
相手を心から理解できるなんていうのは思い上がりで、理解できないからこそ、話を聞きたいと思うし、知りたい、なにかできないだろうか、と思うんだよね。自分と他者は相容れないからこそ、難解で、おもしろい。

ひとはひと。自分は自分。として
明日からも凛と生きたいものです。
比べないってなかなかむずかしいけどね。
まだまだ修行が必要ですね。

#8月31日の夜に
181011 にしがき