9月3日のまどさんへ

Eテレでの #8月31日の夜に の放送を見て、出演してくれた３人のかたの中で、まどさん というひとが、わたしの経験とかぶる部分があって、個人的にすごく気になったので、届くかわからないけれど、このスペースを使って、おてがみを書かせていただきます。

まどさんへ

初めまして。西垣ポプラといいます。
つらい気持ちを言葉にしてくれてありがとう。
まずはなによりも、言葉にするということが大切なので、それができるまどさんは、とても立派だと思います。

学校へ行く気力、勉強する気力が湧かないこと。それに、将来への不安。すごくしんどいね。つらいね。
わたしも高３の頃、心のエネルギーが空になって、学校に行けなくなってしまって、勉強も手につかなくて、志望校の受験を諦めました。そのあと、いろんな経験をして、今は前を向けているけど、それでもずーっと、「こんな自分が社会に出て、働いて、生きていけるんだろうか？」って不安を抱えて生きてきました。

わたしの個人的な意見を言うと、今のまどさんは、きちんと休むべきだと思います。学校を休むというよりかは、心を休ませてあげてほしい。学校を休んでも、心のどこかで"勉強しなきゃ"という気持ちがあるから、心がずーっとつらいままなんじゃないかな、とわたしは思いました。それはね、心のエネルギーがなくなっちゃってるからつらいのであって、永遠に続くつらさではないと思うの。きちんと心を休ませて、エネルギーを蓄えれば、たとえば将来のことについて考えるとき、少し心に余裕を持って、遠くまで見渡せるはずだから。
だから今は、自分の心のために、"勉強すること"をあきらめてあげてほしい。まどさんはたぶん今、勉強ができないことに対して罪悪感を抱いているから、好きなアニメに触れたとしても、心から楽しめないし、つらさが消えないんだと思う。でもね、勉強や受験をひとまず置いておいて、好きなこと、自分が今楽しめることをちゃんと楽しんでいると、心のエネルギーは、ちゃんと戻ってくるよ。そうしてエネルギーを溜めてから、また勉強すればいいの。まどさんは、高校受験を頑張って、勉強がとっても大変な進学校に入学できたひとなんだから、心が元気になれば、きっとまた、勉強できるようになるよ。

受験生だし勉強しなきゃーって思う気持ちはすごくわかる。でも、その思いが自分を苦しめるのなら、それは一度、勇気を持って手放してほしい。周りは頑張ってるのに、とか、親に申し訳ない、って気持ちもすごくわかるんだけど…まどさんはね、まどさんのペースでいいの。自分のペースで、生きていいんだよ。

あと、わたしがすごく気にかかっているのは、バスでしょこたんたちと話していたときに、「相談とかできる人はいる？」という問いかけに対して、まどさんの返事が聞けなかったこと。
つらい気持ちを聞いてほしい、って日記にも書いていたけど、心の中を話せるひと、勉強する気力が湧かない今の状況を、打ち明けられるひとはいますか？ おうちのひと、今の学校の先生、心療内科の先生… 穏やかな気持ちで関わることのできるひとは、いるかな。ううん、心の奥の奥まで打ち明けられなくてもいい。もし、"勉強を、今はしない"とまどさんが心に決めたとして、それを受け入れてもらえる環境にまどさんがいるのかどうかが、わたしは気になっています。

わたしは弱虫なので、今も、こんな娘で親に申し訳ないと思いつつ、「生きててくれればいいよ」「つらいときはいつでも逃げておいで」「あなたのペースで頑張れ」と言ってくれる親や、家族に甘えています。心療内科の先生も、もう10年近く、信頼できる１人の先生にお世話になってる。このままじゃダメだ、もっと強くならなきゃって思うけど、一方で、自分はきっといろんな人に支えられなきゃ生きていけない人間で、だからこそ別の方向で誰かを助けられるような人間になればいいんじゃないか、なんてことも考えられるようになってきた。
まだまだ未熟で失敗も多いけど、なんとか心を回復させてこれたから、いろんなことを考えられるようになりました。でもそれは、わたしが人よりも遠回りして、わたしのペースで、進んだり下がったりしながら前に進んでいくことを、許してもらえる環境だったからでもあるの。

だから、そこがけっこう心配です。おうちのひとに言い出しにくくても、まずは心療内科の先生や、学校のスクールカウンセラーさんになら相談できる…とか、そういう感じなら安心なのだけれど…。あとは、取材してくれた番組のスタッフさんとか。リアルに接することのできる人で、頼れる人がいることが、一番の理想です。
もし、頼ることができない、誰を頼っていいかわからないという状況なら、ひとまずわたしが話を聞いて、一緒に解決策を考えます。わたし自身がまどさんの環境を変えてあげることはできないけれど、つらい気持ちを聞いたり、どうやって周りを頼っていけばいいか、一緒に考えることはできるから。

上手くまとまらなくて悔しい。でも、どうかひとりでつらい気持ちを抱えないでください。暗くて長いトンネルをひとりで歩くのは、とてもしんどいし、何より危ないから。

まどさんだけでなく、同じような悩みや不安を抱えているひとも。大丈夫だからね。つらくて苦しい夜は、ちゃんと朝になるから。ひとりで泣かないで。呼んでください。叫んでください。助けになってくれる人も、この世界にはたくさんいます。

そろそろ疲れてきて、うまく言葉が見つからないので…。今夜はこのへんで。取り急ぎ、まどさんへのお手紙でした。それでは、また。