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今月のユウウツ 『ステイホームショッピング』

みなさーん、ニューノーマルしてますかー? 念のために解説しておくと、ニューノーマルとはコロナ禍によって出現した新たな生活様式のこと。例えば、テレワークとかね。どうやらファッションにもその波は訪れているらしく、僕なんかはステイホームしながらネットでショッピングする機会が加速度的に増えている。馴染みのお店で店員さんと顔を合わせられないのはちとさみしいけれど、まだあんまり知られてない海外のレアグルーブ感あるサイトをディグるのは、誰ともかぶらないアイテムが手に入るからイイネ。ただねぇ、甘いもあれば酸いもあるのがこの世の常。その筆頭が、シッピング料が馬鹿にならないってやつ。せっかく「Tシャツが50ドルだ! お手頃だ! えいやっ!」てポチっても、シッピング料も50ドルなんてことはザラ。こんなことだったらメゾンのTシャツが買えたかも……って話なんである。
 まぁ、そこは企業努力じゃどうにもならん部分だし、甘んじて受け入れるしか……と思いきや、である。海外版メルカリ的なサイト「Etsy」で、ヴィンテージの椅子
2脚を買ったときのこと。安いからって何も考えずにポチって、売り手の所在地を見ると、ク、クロアチア!? サッカーのワールドカップでしか気にしたことない国ではないか。これはさぞシッピング料を取られるぞと腹を括ったものの、なんとびっくりおよそ100ユーロ。繰り返すが、買ったのは椅子2脚!(ここはぜひとも千鳥のノブの「イカ2貫!」的なイントネーションで読んでほしいです) それがこんなにも安くクロアチアから送れるというのに、ペラペラのTシャツ1枚をアメリカから送るのに50ドルもかかるってどういう世界観なわけ? クロアチアサイドがピンチョンの小説『競売ナンバー49の叫び』で描かれたような謎の郵便ネットワークに発注してるか、アメリカサイドが送料を多めに取って着服しているかのどっちかだろ、たぶん。もし後者だったら……とすぐ疑心暗鬼にかられてしまうのも含め、シッピング料問題は憂鬱の巣窟だ。
 あと、ネット発のインディーブランドの多くが、アイテムのタマ数を絞りまくっているという問題もある。であるからして、リリース直後の1時間以内に売り切れることも少なくない。困るのは、例えばLAのその手のブランドが一番リリースしがちな16時が、日本時間で朝5時ってこと。普通にオネンネしてる。なかには「今度の金曜の16時にリリースします」と事前予告してくれるところもあり、その場合は早起きして待機することもできよう。しかし、急にインスタで「これからリリースするよー」とかやられちゃった日には、たまたま早起きした日にしかポチれないではないか。しかし、運良くたまたま早起きしていた日とリリース日が奇跡的に重なった場合にも、憂鬱はある。舞い上がりすぎちゃって本当に欲しいかどうかも考えずにポチってしまうからだ。そんなこんなで1か月後とかに届いて、「これは着るだろうか……」みたいな気分になることもしばしば。ニューノーマルを乗りこなすにはまだ時間がかかりそうだ。あー、早いとこお店で店員さんと顔を合わせて買うことこそノーマルって日々が戻ってこないもんかねぇ。

illustration :Yoshikazu Ebisu   text :Keisuke Kagiwada

シティボーイならではの憂鬱に正面から向き合っていくポパイのコラム連載です。本誌では悩みをトリッキーな角度から解決する「今月のナイスアイディア」も掲載しています。イラストは漫画家・蛭子能収さんの描きおろし!

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