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【講義レポートvol.4】 世界平和を目指す経営とビジネス論(LIFULL 井上高志さん)

8月2日にLIFULLオフィスにて行われた、井上高志さんの講義をレポートします。

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井上高志さんプロフィール
1968年、横浜市生まれ。青山学院大学卒業後、株式会社リクルートコスモス入社。株式会社リクルートを経て、26歳で独立し(しみなおさんと同じ!)、1997年に株式会社ネクスト(現LIFULL)設立。また、新経済連盟理事、一般財団法人「NEXT WISDOM FOUNDATION」代表理事、一般社団法人「21世紀学び研究所」理事、一般社団法人「Living Anywhere」理事も務めている。

LIFULLと世界平和

社名のLIFULLは、「人々の人生や暮らしを豊かに(fullに!)」という意味の造語。もともとはNEXTという社名でしたが、2年前にLIFULLへ変更。次世代をつくるという意味のNEXTよりも、幸せになるような世界観の方が良いと考えたからです。また、世界でビジネスを展開する上でNEXTやHOME’Sという一般名詞は商業上使用できないから、という事情もあります。 2025年までに、100社・100経営者・100ヵ国の展開を掲げ、社員の労働時間の1%・利益の1%を社会貢献に投じるなど、日本一働きたい会社を目指しています。

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社是は利他主義。井上さんが考える世界平和とは、利他主義が原点です。利他主義とは仏教用語で自利利他とも言い、世のため人のためとなることをすると自分も幸せになる、という考え方です。自己犠牲や義務感ではありません。POOLOでもよくペイフォワードという言葉を耳にしますが、これも似たような考えですね。経営理念は、「より多くの人々が心からの安心と喜びを得られる社会をつくる」です。これは心理学的な考えに基づいており、幸せというのは安心喜びの2つで満たされます。また、喜びには快楽・充足・貢献の3要素があり、それぞれ持続性が違います。快楽は熱しやすく冷めやすい。充足は長年の努力で満たされるもの。快楽も充足も必要ですが、人に貢献することで、満足が積み重なっていくということです。

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ここで、井上さんオリジナルの「幸福や平和を導く方程式」を紹介してくださいました。

人類の幸福・世界平和(wellbeing and world peace)=①心×②社会システム×③テクノロジー

人類みんなの幸せと世界平和を実現するためには、これら①~③のベクトルからアプローチすることが必要です。
以下は、この方程式に当てはめる井上さん流の実践と、これから目指していくべきことです。詳細は次の項目で後述します。
①LIFULL財団・peace day・NEXT WISDOM FOUNDATIONなどの活動。
②新経済連盟。
③限界費用ゼロの社会の実現。水・食・住・学・働・医・エネルギー・通信など、テクノロジーで生活コストを下げていくこと。


人生のビジョン

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会社とは関係ない、井上さん個人のこれからのビジョンを教えてくださいました。

現在 :wellbeingの研究
~55歳:Living Anywhereの実現
~75歳:世界平和(第1次) *BOPの40億人が自立できる社会の実現
~100歳:世界平和(第2次) 国家間の紛争がない社会の実現

現在の挑戦は新経済連盟で民泊の規制緩和や、Living Anywhereの実現を目指し、「自分らしくもっと自由に」どこででも生活できるよう、社会をアップデートする活動などをしています。また、「21世紀学び研究所」を設立し、教育改革も行なっています。その内容とは、21世紀に求められる人間のOSを育てること。OSの核=自己肯定感であり、スキルやナレッジはその上で働くものです。特に旅人は、知らない街や人の中に飛び込むという旅の経験で、自分を拡張しています。これもまた、自己肯定感を育むプロセスなのです。
さらに、ベナンに小学校を建設したり、「skin PEACE」というシアバター産業で得た収入をベナンの子どもたちのために役立てるなど、途上国支援の活動にも携わっています。

*BOP=低所得階層・貧困層


Q&A

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世界平和を自分のビジョンにかかげた原体験は?
32歳の時、ベンチャーの社長をしていたリクルートの同期と、飲みながらお互いの夢やビジョンを語っていた井上さん。 するとその同期が先に、「世界平和」だと言ったそうです。それをカッコいいと思った井上さんは思わず自分も、世界平和だ!と言ったことがきっかけなのだとか。


20代のときに大事にしていたマイルールはありますか?
いくつもマイルールがあった中、3つほど紹介。

・躊躇したら前へ出る
・ひとつしか選べないときは険しい道を選ぶ
・有言実行

ーー意外なことに、社長になる以前はもともと引っ込み思案な性格だったという井上さん。迷った瞬間前に出る、苦手なことをことごとく潰す、など意識的に人格改造をしていました。あえて厳しい選択を取るのも、その方が鍛えられるから。また、周囲の人に「いつまでに何をする」と話して自分にプレッシャーをかけると、人に話している手前、ちょっとでも進もうとして行動に繋がる。さらに、その話を元に様々な人を紹介してもらえるという、副産物的なメリットもあるそうです。

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やりたいことがたくさんあるが、時間が足りない!そんなとき、どうされますか?

実行はAorBではなく、どうやったらAandBでできるかを常に考えて、やろうと思ったことを全部やったらいい、と。この考えには、「3日坊主でもいいからやってごらん」という井上さんの母の言葉が影響しています。母は一度も「~しなさい」と言ったことがなく、井上さんの背中を叩いて「あなたは大器晩成だから大丈夫よ!」と応援してくれる。このことが井上さんの自己肯定感に繋がっているとのこと。


利益と社会貢献のバランス、両方同時にできるの?
日本実業界の父と呼ばれる、渋沢栄一の著作「論語と算盤」。論語=道徳、算盤=利益に置き換えられ、井上さんはこの経営哲学を心に置いています。利益か利他か、最終どっちか迷ったら利他を選ぶ。 とはいえそんなことはほぼ起こり得ないので、両方同時にするべき。それが経営です。井上さんが論語と算盤を言い換えると、「力なき正義は無力である。正義なき力は暴力である。」正義と力を合わせて、初めて社会を変えられるのです。

しかし時代は変わり、テクノロジーの進化により、水など生活に必要なものがタダになる世界が生まれてきています。昔は自分の生命維持のための稼ぎ(利益)だったのが、ベーシックアセット(資産)が手に入るようになり、利益は減っていくのではないか、と。また、ビジネスセクターが収益を上げようとし、取り残されるNPOなどの団体があります。そういった分野ですらテクノロジーで変えていき、収益化できるプランにしたいと井上さんは言います。例えば、今までは途上国に学校を建てるなどしていたのが、これからはガラケーを配って家で学習できるようになる、というようなことです。テクノロジーで、今までと同じコストでもっと高い価値を生み出せるように。また、保有財産の一部をアセットにして活用するなど、資産ではなく持っている能力を交換するシェアリングエコノミーも増えてきています。


ホームズを始めようと思ったきっかけは? また、世界平和とのつながりは?

きっかけは就活をしていた時、当時付き合っていた彼女に振られたことでした。彼女はニュースキャスターになるという夢のため、ニューヨークに留学。一方で、学生時代に何も成し遂げず、何の明確な目標も持っていなかったという井上さん。そんな過去への反省と未来への教訓から、伸びきったゴムのようにだるんだるんな自分を鍛え直すことにしました。ひとつでいいから人にすごいと言ってもらえることをやろう!一生かかって一大事業をやろう!と、5年以内に起業することを決心。
不動産業界は市場や動くお金、責任が大きく、そこに大きな喜びを得られるのではとの思いで選びました。しかし新入社員として約3ヶ月働くうちに、業界のブラックさを知ります。そんな、ブラックで閉鎖的な不動産業界をクリーンに変えよう!と決意したのが22歳の時です。
不動産と世界平和の直接の繋がりはありませんが、利他を最大級広めようという思いがありました。HOME’Sはユーザーのためという利他的な考えに始まる事業なので、それを拡張していきました。

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おすすめするスキルや知識は?
まず、幸せの4因子という、幸福になるための4つの因子があります。

幸せの4因子
・自分らしく
・やってみよう
・なんとかなるさ
・感謝

これらを自分が備え、周りに伝えていくことは世界共通で大切なことだと。
起業家向けにハードルが高めのことも話されていました。1万点の法則というものです。経営者として成功するための、経営者の100科目があり、100科目×100点が取れればもれなく成功します。しかし残念ながら、現実にはそんなことはあり得ません。企業したい人が1万人いたとして、走り出すのは1000人。1000人のうち100科目で9000点を取れるのが30~100人。努力して9000点に到達した人の中で、覚えてもらえるのは2~3人。そして、それはランダム。つまり成功の秘訣は気合いが9000点、最後は運だということです


まとめ

課題設定の前に、「やりたくてしょうがない」という情熱が1番大事だと、最後に井上さんからのメッセージがありました。借り物ではできない、自分の中からしか生まれない情熱からスタートするのだと。
井上さんは講義を通して「ダイブ」というワードをよく使われていました。情熱に加え、やってみようという気持ちで、まずダイブしてみることが大切なのだと思いました。


文=橋本優生


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