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ep10.ヴァージン教


姉妹は小さい頃から占いやゲン担ぎが好きだった。手相、占い、霊感、宇宙パワー、パワーストーンにパワースポット。。。スピリチュアルというか何というか、そっち系のモノを姉妹揃って愛求した。

麻莉は大学で心理学を専攻しており、自己啓発系の著書にも馴染みがあった。カーネギーの『道は開ける』『人を動かす』、コヴィー博士の『7つの習慣』など。そして当時、流行っていたアドラーの『嫌われる勇気』。このベストセラーを麻奈に薦めた。

『嫌われる勇気』は対話形式で読みやすく、200万部売れたのも理解できる。とてつもない良書で、この本の通りに人生を歩めば、必ず幸せになれると断言できるほど。僕の言葉で簡潔に著書を要約するとこうなる。

【嫌われる勇気の要約】
幸せは自分で決めよ。悩みの全ては対人関係。劣等感を正しくコントロールせよ。承認欲求を否定せよ。相手を思いやって誰かの役に立て。目的を持って今を生きよ。不自由に生きるくらいなら、他者から嫌われる勇気を持って自由に生きよ。

「日本一嫌われてる女」の称号を得ていた麻奈に、『嫌われる勇気』はドンピシャに刺さった。他者の評価ばかり気にして、ずっと誰かの求める仲林麻奈を演じていた麻奈。その居心地の悪さをスバリ指摘されたような気がした。

姉の行く末を案じていた麻莉がこの著書を薦めたのは、姉へのささやかなサポートだったのかもしれない。麻莉は自分が闘病生活となって死期を悟ったときも、「お姉ちゃん、私がいなくなったら仕事できるかな」と姉の心配をしていた。

そんな他人を思いやれる女性が、「お姉ちゃんは寂しい人だね」とも言っていた。なんとか自分を見つめ直して、他人を思いやれるようになってほしい。麻奈になんとか変わってほしい。妹の切なる願いは結局、姉には届くことはなかった。

現在の体たらくを見るにつけ、麻奈はアドラーの教えを何一つ実行できていない。現在の麻奈の価値観の根底にあるのは、ヴァージン教だ。

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