ep9.プー太郎から詐欺師へ
マコトの親戚に祈祷師がいる。マコトが産まれるとき、この祈祷師に除霊してもらったそうだ。そして祈祷師は物心ついたマコトにこう告げた。
「お前には不思議な力がある」
もともとそういう家系だったから、整体のバイトからスピ方面に進んだのは必然だったのかもしれない。ただし、実の兄には「あいつに不思議な力を感じたことはない」と断言されてはいるが。
整体院でアシスタントのようなことをやっていたが、そこがまさにスピリチュアルな霊感商法の整体院。「パワーを送ります」と手をかざし、患部に音叉のようなものを当て、帰りにパワーが込められているというお守りを渡すだけ。どう考えても治るとは思えないのに、なぜか客は笑顔で帰っていき、また翌週になれば顔を出す。
整体に国家資格はない。だからこそインチキスピリチュアルや霊感商法がはびこる。マコトは「こんな世界があるのか」と衝撃を受けたことだろう。そして「自分にも出来そうだ」とすぐに店を辞め、自分で客を取り始めた。
当時、マコトの施術を受けた人は、「腰が痛かったので施術をしてもらったけど、一向に良くならなかった」と証言している。
施術内容は患部に手をかざすだけ。「痛みが消えない」と患者が訴えると「霊がついている」と言い、親戚の祈祷師のところで除霊をするよう勧めた。歴とした霊感商法。プー太郎は詐欺師にジョブチェンジした。
実家や友達の家を転々としていたマコトに、店を構えることなんかできない。ネットで客を募り、チラシを配り、役者を使ったオーバーリアクションのインチキ動画を顧客に配ったりもしていた。
もちろん国家資格はおろか、民間の資格すら持っていない。確定申告どころか開業届けすら出しておらず、誰からも信用してもらえなった。当然、客はつかずリピーターはゼロ。
とにかく「儲りそう。騙せそう。自分にも出来そう」なことなら、次から次に手を出した。フェイシャルマッサージ、エステ、ヨガセラピー、ヘッドスパ、カウンセリング。。。
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