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母のサービス精神がポールウインナーとなって冷蔵庫のチルドルームに溢れかえっている話

 ろくなお話のnoteがないあさこです。今回はあさこの母の話をします。短いしオチもないです。箸休めです。

 母はかなり昔から、幼い時分の私の目から見ても分かるような、いわゆる買い物中毒的なところがあり、モノを買って買って買いまくって、貯め込む習性がある。そして加えて「なにか役に立つかも…」と断捨離ができないタイプなのである。
 彼女が溜め込むものはだいたい同じで、長年見ているところ、

・期間限定のお菓子、柔軟剤
・気に入ったお菓子、柔軟剤
・私や弟が美味しいと言った食べ物
・マスクやマチ袋、チャック付き袋などの消耗品
・エコバッグ
・保冷バッグ
・衣類
・缶詰などの保存食

が多いように思う。

 今まで私が生まれてから、というか両親が結婚してから我が家族は、私の生家である分譲マンションと、現在住んでいる、母の実家である2階建ての一軒家に住んだことがある。
 どちらの家でも、押し入れや天袋、冷蔵庫にパントリーがミッチミチパンッパンになるのはもちろんのこと、ひと部屋ないしふた部屋は倉庫のように買った新品のモノを貯蓄するためだけの、袋まみれの部屋が爆誕する。たしかマンションのときの、家族みんなで寝ていた和室は、洗濯済みの服を畳んだものを積んだ立派な山脈が形成されており、その山脈の確実な寝床領地侵食によって背が超高い母や成長期の弟はまっすぐ足を伸ばして寝られないほどに狭まっていた。父は途中からリビングで寝ていた。「父の部屋」「母の部屋」の設定であったはずの、2つの洋室ももちろん衣類と消耗品などなどのモノに溢れかえっていたのだった。

 マスクやよく使う消耗品、保存食の場合はともかく、食品と柔軟剤は、溜め込んでいくスピードと消費するスピードが合わず、次第に賞味期限や消費期限がきれたものが大量に溜まり、たいへんに厄介なのである。

 先日我が家にネズミが出た際、片付けを手伝ってくれと言われ、久方ぶりに入った倉庫と化した部屋(水屋と書院とがあるただのかんたんな和室)は本当に恐ろしいもので、収穫期を迎えた畑か?と言わんばかりの量のスーパーまたは百均、三百均のビニール袋で溢れかえっていた。

 本人にも自覚や罪悪感があるようで、「多分前世は飢えて死んだと思うねん」「買わんでもいいって分かってはいるねんけど…」「期間限定に弱くて…」「また賞味期限切らしちゃった…勿体ない…」
と言ってはいるものの、そうかんたんには貯蓄グセは治らず、

 パントリーは開けられないほど食べ物が詰まっているし、

 台所の端にはようわからん沈殿物と上澄み液に分離してしまった野菜ジュースが常備されているし、

 冷蔵庫の野菜室にはいつも腐ってドロドロに溶けた葉物の野菜があるし、

 イモ類はいつもウニウニと新しい世代を生み出しているし、

 さっき発見された腐敗済み玉ねぎは袋の中でイエローストーン国立公園のような虹色のコロニーを形成していたし、

 たまに彼女の気分で来る柔軟剤消費期間には日替わりのように洗濯物の匂いが変わるし、ていうか混ぜるなし、

 弟や私が一時期ハマっていた、チョコクロワッサンとポールウインナーとシュークリームとキウイは母が「まえ好きって言ってたやんなこれ!好物やろ?」と、とめどない供給システムが確立され、それぞれ、5個、10本×10袋、6個、8個、が冷蔵庫に格納されている。

 最近ポールウインナー圧に負けて水平折戸式のチルドルームが開かない。

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