1031

私の家はわりと、いや、とてつもなく過保護だ。

門限は大学生になってもあるし、共有のカレンダーまであり、何時に家を出る、何時に帰る、誰と遊びに行く、などなど報告をしないといけない。
門限なんて22時。バイトですら22時。おかしい。
これがほんっっっまにめんどくさい。
心配するのもわかる、でもめんどくさい。

私の親は何かわからず不機嫌になるタイプだ。
だから昔から顔色を伺うように過ごしてきた。多分、彼女は気づいていない。私もわがままばっかしの頑固なめんどくさいタイプではある。
だからこそ話し合いをしたりすると100%と言っていいほど分かり合えない。まあ、まだまだ言い出したらキリがないので今日の本題に戻りたい。

「1031」
これはある人のナンバープレートだ。
彼との出会いもまた、某マッチングアプリ。

前述した通り、私の家は厳しい。もちろんお泊まりは禁止だ。
男の人の家に行くなんて持ってのほか、仲のいい女友達ですらだめだと言われる。じゃあなぜ私は彼の家にお泊まりすることができたのか。

父の家と一番かなのいい友達の家が近所で、父の家に泊まりに行った時にA子の家に泊まりに行っていいかと聞いたところ父はそれを許してくれた。それを利用して私は彼の家に泊まりに行った。
彼に河原町まで車で迎えにきてもらい、八坂神社に行った。そこで彼の雰囲気にのまれ、手を繋ぎ、腕を組んだ。

彼とコンビニに行き、おつめみとお酒を数本買い、彼の家に向かった。
彼の家について、お酒を飲み、喋り、シャワーを浴び、映画を見ながら髪の毛を乾かしてもらった。人生で初めて男の人に髪の毛を乾かしてもらった。私はそれがとても嬉しく、あの優しい手を忘れない、いや、忘れたくないとまで思っている。そこからは言わずもがな察してほしい。

次の日、彼よりも早く起きた私は彼の横顔を見つめながら後ろから抱きしめた。彼は少し眠そうな目を擦り顔を近づけた。

最寄りのコンビニまで送ってもらう間、私たちはずっと手を繋いでいた。
お互い離そうとしなかった。
そう思いたいだけかもしれないがそう思い込ませてほしい。

彼の車の中でなんでナンバープレート「1031」なの?と何の気なしに聞いてみた。彼の誕生日でもなんでもない番号だったから。
なんかの記念日?両親の誕生日?いろいろ聞いてみたけど全部外れた。
ねえ、答えは?気になる、と彼に聞くと「てんさい」と一言返ってきた。
私はどういうことだと思い、一瞬頭がフリーズした。
てんさい、天才、、と理解した瞬間何かわからないが感動した。
そんなナンバープレートにする人がいるのかと出会ったことのない人に出会った感じがした。

それから私は1031が好きになった。一応言っておくとハロウィンを連想しているからではない。てんさい、だからだ。

帰り道、強い風が吹いた。
風邪に靡く私の髪の毛から彼の匂いがした。

バイバイする時、ハグをした。
私よりも背が高い彼に合わせるように少し背を伸ばした。
このまま時間が止まってしまえばいいいのにとさえ思った。

彼と出会ってほんの数ヶ月だけだけど彼のことを知っていきたいと思った。

次はいつ会えるのだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?