営利目的非営利活動?

福祉や介護で儲けることは構造上難しいことは前回述べさせていただいた。規制緩和により介護事業が民間に開かれたとはいえ、社会保険制度に則ってその事業運営をする訳だから、純粋な競争とはなりえないし、ソコソコ真面目にやっていれば潰れることもないが、飛びぬけて利益を上げて独り勝ちすることもない。そんな不思議なシステムの中で働いていることを僕たちは知っておかねばならない。
 
なぜ知っておくべきなのかというと、「がんばれば結果がついてくる」という、至極自然で当然な道理が通じにくいこのシステムの中で、何をもってモティベーションを維持していくのか迷ってしまうからである。一所懸命働いたから今月は給料がいっぱいもらえて、自分へのご褒美が出来た、なんてことがこのギョーカイでは起こりにくい。休みをたくさんもらえてリフレッシュすることができたなんて話も聞いたことがない。
 
資本主義社会の下で働いている僕らにとって、労働対価である給与・賞与がある意味自分への評価である。でもそれが「がんばり」に比例できない社会構造だとしたら、対価が上がる方法を探らねばならない。それこそが「福祉で儲ける方法」である。
 
まずはメイン収入となる介護報酬や支援費などを確実に最大限得ることから始まる。これが柱になるので、下手を打って返金などすることになるのは避けたい。ただ、ここで利益を大きく上げようとは決して思わないこと。これが最大のポイントである。この収入から儲けようとすると、何らかの出費を削らなければいけないことになる。一番単純な方法は、最大の支出である人件費の削減となる。人を減らすか、もしくは一人頭の単価を落とすしかない。介護報酬などの数字は霞が関の偉い官僚さんたちが遅くまで働いて弾き出した数字なので、そうそう利益が出るようにはなっていないことを知っておこう。ただ、基盤を守るこの報酬を確保するために、施設やサービスのファンを増やしてユーザーが減らないように、稼働率や利用率を高い水準で維持しておくことは「前提」となる。
 
さて、ここからが本題。プラスアルファで儲けるのは、保険外収入もしくは本業以外での収入によることとなる。メイン収入で生活できる基盤をキープし、上乗せ分は別から引っ張ってこようという考え。単に個人的な収入増を目指すのであれば、状況が許される範囲で副業に勤しめばよい。もし会社や法人が組織としての増収が出来ない(その意思がない)のであれば、社員職員の副業は奨励すべきであると僕は考える。
 
施設や事業所全体としての収入を上げるためには、①保険外サービスの拡充、②新事業の立ち上げと収益化、の2点が考えられる。福祉事業としてこれらを進めるとするならば、核とすべきは利用者の暮らしの質をどれだけ上げられるか。困っている人たちをどこでどうやってフォローするのか、という視点である。具体的に言えば、①ならば介護保険で担えないサービスを有料サービスとして提供することが挙げられるし、②で言うと、一見利用者支援とは無関係に思える事業を興し、そこでの利益を上げることにより①の負担が困難である利用者に還元していく、という形が考えられる。また、本業から得られたノウハウを商品化することによって間接的な支援を行いつつ利益を作っていくということも②の方法の一つである。ただ、これら副収入については(特に②)メインを食ってしまうくらい大きな収入につながることが大切である。「こんなこともやっています」的なパフォーマンス・レベルではなく、従業員がその利益を実感できるほどの。
 
以前にも述べたように、福祉介護の仕事は薄給と言われており、生活できないレベルではないが他業種と比較すると昇給の伸びしろが少ないことには違いない。業界全体で大同小異なので人材が一点集中することもないのだが、その中でも比較的給料が多いとされるのは「医療法人系」「社会福祉法人系」そして近年参入してきた「大企業(一部上場企業)系」である。これらの職員が幾何か給料が多いのは、少し乱暴な言い方をすれば資本力の違いである。本業で稼いで元々持っていたり、税金に回すお金が少なくて済んだりすることが、純粋に民間の事業体との待遇の違いを生んでいると、僕は考えている。
 
団塊世代が高齢者といわれる時代がきて、未曾有の超高齢社会の到来が叫ばれている。しかし、ここで本気で儲ける福祉事業を作らねば、単に大資本の法人に吸収合併されて、変わらぬシステムの中でずっと給料の安さを家人に愚痴られる状況が続くだけである。
ここは大きな分岐点である。もしかすると少し遅いのかもしれない。だけど本気で考えてみよう。
これは経営サイドだけが考えていれば良いというものでもない。僕を筆頭に、数字を毛嫌いしてきた現場こそが知恵を集めなければいけない課題だと、僕は自戒込めて感じている。
あ、でも、「前提」として述べたように、本業を疎かにして儲けに走ろう、っていうことでは決してないので、くれぐれもご注意を。

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