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高橋幸宏は、もういないんだ。

2023年の初頭のある日のこと。
寒くて外出したくなかったので、午前中に用事を済ませて、昼過ぎから「ミュージック・マガジン増刊 高橋幸宏 多才なロマンティストの軌跡」を読みながら、サブスクで高橋幸宏さんの音楽に浸った。

お線香の代わりにインセンスを焚きながら、高橋幸宏さんの好きだったビールを。今日ばかりは涙で全く酔えなかった。

「そもそも、こんなにお洒落で、しかもドラム・セットの前に座っただけでもロックを感じさせるドラマーはいなかったし、「今日の空は少し悲しいって街を駆ける君は笑いかけた」(今日の空)なんて歌いだしだけで、胸を切なく湿らせるようなロックシンガーはいなかった」(天辰保文)

高橋幸宏は、もういないんだ。

そして2024年。
高橋幸宏さんが、いや、ユキヒロが亡くなった事実を、僕はまだ受け入れられていない。

テレビやラジオから、YMOの曲を刷り込まれて育った子ども時代。
ファッショナブルなユキヒロに憧れた青春時代。
そして、今、遙かに及ばないものの、ユキヒロのようなダンディな熟年になれれば・・・と心から願っている。

トラッドは一見普通だが、実は奥が深い・・・ということを教えてくれたのも、ユキヒロである。

ユキヒロのようにダンディではない僕が、似合う自信のない帽子を被るようになったのは、ユキヒロの死を少しでも受け止めようとする自分なりの切ない祈りである。

ユキヒロといえば、ファッショナブルだけでなく、メンタルの悩みを抱え続けた人でもある。ユキヒロにとっての「釣り」は、趣味の域を遙かに超えたライフワークだが、元は神経症の治療のために始めたものだ。

悩みを抱えながらも、一日一日を精一杯、おしゃれに生きていくこと。
ユキヒロの歩んできた生涯を振り返ることは、悩みと共存しつつも前向きに生きることの尊さを学ぶことである。

Saravah!Yukihiro!

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